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煙の濃淡と見えないものの線描

雨上がりの硝子窓から見えた
水たまりみたいな鏡を
玄関の壁に吊り下げた

手に持った重みはなくなって、それは
家全体が支える何かの重みは
こうやって受け継がれてゆき
それはまたべつの総体となって
かたちを変えてゆくのに違いない

それはきっと、
寝転んだ猫に手を置いて撫でた時に
譲り受けたぬくもりは
少し前に猫がお日様からもらったもの
なのだということに少し似ているかもしれない

たまにしか見ない天気予報が気温の変化
を伝えていた
午前にパロサントに火をつけていたけれど
窓を開けて、外とつながってみようと思った

レースのカーテンが揺れた
揺れ続けた
白色は透明ではない
だなんて当たり前のことに気がついた

普段目には見えない風が
白色のレースを通じて見ることができた
家の中から見ると、静止画にしか見えないことも
多いけれど
いつもせかいは動いている
私も動いているうちのひとつだろうか

目には見えないことが見えると
見えないはずの内側(こころ)が動いているのが
見えることがある

ことばを発すること
ことばを遺すということを
遠ざけるおそらく在る(或る)いくつかの理由
目には見えないものは
動いているせかいのなかに漂泊して
最初からなかったかのように霧消する
それが良いのかもしれないし
それは良くないことなのかもしれない
それに答えを出す必要を今は感じていないから
見えないままで、それでいい

ほとんど買わない詩集を何とはなしに買って
やっぱりあまり深く目を通すことなく
陽の当たるカウンターに置いている
中身と不釣り合いに鮮やかな色の表紙は
今の好みにあまり合わない

飾るための少し大きめのアートポスターが欲しい
と思っている
それもまたモノクロームを思い描いていて
風を線で描くくらいのものが欲しい

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