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夜咲く花に愛してると言って

夜の幹線道路沿いのバス停は少し寂しげ

それを横目に黄白色の街灯に照らされて
薄く影が伸びる私も似たようなものか

朝を待つ間、街路樹は風に揺れながら
何を思うのだろう

勝手に擬人化してしまうけれど結局のところ
それは私自身を透過しているのだろう

意識しなくても、右と左の足は交互に土を蹴る
左手は合わせて脱力しながらも振り続ける

意識しなくても、考え続ける
思い出すということのほとんどは
意図してインデックスを引くことではなく
勝手に浮かんでくるものだと思う

意識しなくても、生きている
生きてたくないなんて思うことも
それくらいに辛いことも
誰にだって大なり小なりあると思うけれど
期限や刃を突きつけられたら
ほとんどの人は一生懸命に願うと思う
生きたい、と

それは、声には出していなくても
誰かと約束をしているのだと思う
今、無意識に浮かんだ人との無言の約束
あるいは別のことばにこめられている
ある人は『おはよう』に
またある人は『またね』に
『おやすみなさい』に

月の居場所を探してターンをしたら
きれいな花が咲いていた
ちゃんと夜にだって役割があることを
街路樹は教えてくれた

たんなるにっき(その100)


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