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台北へ是非:Anizine(無料記事)

来月、台北に行くことにしたのですが、なぜ好きなのかと聞かれることがあります。そう聞く人は「行ったことがない人」だとすぐにわかります。一度でも行ったことがあればなぜかはわかるはずで、台北ほど「つまらなかった」という感想を聞くことがない場所も珍しいです。

今まで私が訪れた国はそれほど多くなく、約25ヶ国ほど。フランスやイタリア、台湾といったお気に入りの場所ばかりをリピートしているからで、行ったことがある国や地域がまるで増えていきません。ですから仕事でたまたま行くことになった未体験の場所には新たな感動があります。

若い頃は、撮影で行った場所にストレスを抱えることが多かったのですが、それは決められた場所で仕事をしていると「あっちのほうに行ってみたら面白そうだな」という勝手な行動ができなかったからです。つまり、レストランで出てきた美味しそうな料理を、食べずに帰ってきたようなフラストレーションばかりが溜まります。そうなるとすぐに鼻息荒く、プライベートで行くことになります。下見はできていますから完璧なのです。

東京から台北に行くときは羽田から行きます。日本航空の場合、羽田から出発すると街から近い松山(ソンシャン)空港に着きます。成田発だと街から遠い桃園空港着です。近い近い、遠い遠いの組み合わせなのが面白いですよね。自宅が成田に近い人なら便利なのかもしれませんが、桃園が遠いことに変わりはありません。松山空港から中心部までは地下鉄でだいたい三駅です。気分としては渋谷から青山一丁目くらいではないかと感じる近さ。

中国本土に行ったことがあって台湾に行ったことがない人は、どちらも中国の人だと思っていることが多いのですが、気性がまるで違います。台湾の人はとても穏やかで、大陸の人ほどエネルギッシュではありません。それは好き嫌いの問題なのでどちらがいいとは言えませんが、とにかく違うのです。

私が行きたくなる場所は、美味しいモノがあるところ、人がたくさんいるところ、歴史があるところ、です。この辺になるとそれぞれの嗜好がありますが、一言で言えば「ガチャガチャしていて古くて美味しいところ」です。ただまとめて言っただけですけど。自然に囲まれて誰もいなくて静かな波の音だけ聞こえるリゾート、などに行くと二日目の夕方あたりからイライラしてきます。「都会の喧噪を忘れる、ゆったりした時間」なんていう広告のコピーが似合う場所に行くと、いいから喧噪をよこせ!と苛立つのです。

理想はたとえばニューヨークのように「ガサガサと大勢の人が行き交う都会の街をエアコンのきいた部屋から見下ろす」みたいなのが好きなのです。喧噪の出し入れのコントロールは自分でやりたい。パトカーと救急車のサイレンの音がする街に出たり、静かな部屋に戻ったりできる、それがいいのです。特に写真を撮るときは、綺麗な風景ばかりだと情報量が不足します。ああ、綺麗だね、という写真ばかりになるからです。パリやミラノ、台北などは美しいところもあり、古くてボロい場所もあり、それらの理想をもたらしてくれます。

あとは、その場に友だちがいるかというのも大きな問題です。台北とパリにはたくさんの友人がいるので、ただ彼らと食事やお茶に行くだけです。

台北にまだ行ったことがないという人は是非とも。


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Anizine

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写真家・アートディレクター、ワタナベアニのzine。

多分、俺の方がお金は持っていると思うんだけど、どうしてもと言うならありがたくいただきます。