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なぜ「プロトタイピング」がいま注目を集めているのか?

こんにちは!ANKR DESIGNです。 https://ankr.design/

私たちは、最先端のテクノロジーを活用したプロトタイピングとデザインリサーチを強みとする、東京のサービスデザインスタジオです。

今回は、「プロトタイピング」について掘り下げていきましょう。


昨今、「プロトタイピング」という言葉はさまざまな文脈で用いられるようになりました。それが実際に意味するところは文脈によりさまざまですが、ことデザイン領域においては、「何らかの仮説を検証すること」と捉えるのがいいでしょう。そのプロダクトがユーザーにとって価値があるだろう、技術的に可能だろう、そしてビジネス的に成立するだろうと仮説検証することが、プロトタイピングの目的です。

仮説検証をするうえで、デザイナーに求められる役割とは何か。それはモノを作ることを通して、プロダクトが進むべき方向性を明らかにすることではないでしょうか。これからのものづくりにおいて「デザインしたので、あとはよろしく!」という態度はもはや通用しません。デザイナーの考える理想像を押し付けるのではなく、それぞれのメンバーと一緒に良いものを作っていくという姿勢を、行動を通じて示せるかどうか。それがメンバー間の理解、ひいては最終的なプロダクトの完成度に大きな違いを生みます。時として精緻な市場調査結果や事業戦略、あるいはコンセプトに込めた想いを書き連ねたパワーポイントを何枚も並べるよりも、荒削りなプロトタイプを想定顧客に見せ、彼らからフィードバックを提示してもらうほうが、より多くの人々を巻き込み、プロジェクトを前に進めるうえでは肝要なのです。


誰のためのプロトタイピングなのか?

プロトタイピングを通して関係者たちと「検証すべき仮説」を確認する――それはすなわち、文脈をしっかり共有することを意味します。文脈が共有されていないデザインは、完成までの歩を進めるどころか、プロジェクト全体の障害にすらなりかねません。


そうしたトラブルを避けるためには、どういう目的で、つまり、どのような仮説を検証するためのプロトタイピングであるかを、しっかり意識することが求められます。仮説には様々な種類があります。例えば、「○○な人々が○○のような課題を解決したがっている」のような人々が抱えている課題に関する仮説もあれば、「○○という課題には○○という解決方法が適切である」というような人々が抱えている課題に対する解決策の妥当性に関する仮説もあります。検証したい課題に応じて、どのような手段で検証し、その時どのような人々を巻き込むかによって取りうるアプローチは変わってきます。

一般的にソフトウェア・プロダクトの場合、プロトタイプといえば、Adobe XDやfigmaで作成したモックアップが想起されますが、まずはラフスケッチやペーパープロトタイプのような、比較的時間がかからない方法でイメージを共有することもひとつの手です。場合によっては、アクティングアウト(寸劇)やビデオプロトタイピングも効果的でしょう。近年ではビデオ撮影に関する機材や編集ソフトも一般に手が届くようになってきていることから、Adobe PremiereやAfter Effectsなどによるビデオプロトタイピングもプロトタイピング手法のひとつとして注目を集めています。ビデオプロトタイピングはプロダクトが置かれている文脈と価値、そしてユーザーとプロダクトとのインタラクションを短期間で伝えることができ、きわめて効果的です。

いずれにせよ大事なのは、自分たちの仮説を見出し、それをしっかり検証していくこと。そしてその検証結果に応じてコンセプトをブラッシュアップしながらプロダクトづくりを前にすすめることです。デザインの意図を正しく相手に伝え、チームとしてものづくりに取り組むことは、とても楽しいことである一方で、難しいことでもあるのですから。


「素早く作り、壊す」ためには失敗の許容が必要

プロトタイピングの効果は、事前のリサーチから生まれた仮説を検証することだけにとどまりません。というのもプロトタイピングをしていると、その過程で必ずと言っていいほど新しいニーズが見つかりますからです。事前にどれだけインタビューしていても見つからなかったニーズが、実際にビジュアル化させていく過程で見えてくることはよくあります。

ANKR DESIGNについて、「なぜデザイン会社なのにエンジニアリングチームがあるのか」と聞かれることがありますが、それは実際に動くプロトタイプから得られる知見の質と量に価値を感じているからです。プロトタイピングからは、インタビューとは異なるかたちで、重要なインサイトが得られます。何かを作ることとは、それ自体がデザインリサーチなのです。

このように、プロトタイピングは仮説検証と新たなニーズの発見のために行うものなのですから、その効果を最大化するうえでは、「作り込まない」ことが重要です。作り込むと、壊すのがそれだけ惜しくなってしまいます。イテレーション(繰り返し)のサイクルが遅ければ、それだけ得られる知見は減りますし、最終的なプロダクトの完成度も下がります。「1回のプロトタイピングでいいものがつくれることはほとんどない」ことを踏まえたうえで、いろいろと試行錯誤するべきです。

とはいえ、一人でできる範囲には限界があるのも事実。それぞれのメンバーがリサーチとプロトタイピングどちらもできたほうが望ましいですが、ひとまずチームとしてリサーチとプロトタイピングを行える体制を整えたいところです。

そのためには、チームの中で失敗を許容する文化を耕しておかなければなりません。そもそも「何もかもが想定通り」であれば、プロトタイピングで検証する必要はないのです。プロダクトをシェイプアップしていく過程で、失敗や想定外の出来事はかならず発生します。これは精神的になかなかタフです。称賛されるよりも、否定されることのほうが多いでしょう。だからこそ、個人レベルでは「自分の考えが違っていた」ことをチャンスと捉えて喜べるようなマインドセットが必要ですし、組織レベルでは心理的安全性を担保し、メンバーの行動を促進していくべきです。

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とにかくプロトタイピングは、新しいことの連続です。ANKR DESIGNでは、ソフトウェア/ハードウェアの境界なく、様々なプロダクトに関するプロトタイピングに取り組んでおりますので、「あんなこといいな」「こんなこといいな」ということがございましたら、お気軽にお声掛けください。なんでも作ります!(宣伝)


(文・石渡翔

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