四ツ葉荘 断章 信濃が見ているもの
前回
前回のお話はこちらですわ!
断章 信濃が見ているもの
道路のセンターラインを踏み外さないように歩く。
自宅から市場の谷を抜けて、ご飯屋さんが立ち並ぶ橋を越え、水道局を横目に見てまた橋を渡り、水出し緑茶や水出しコーヒーが美味しい喫茶店を通り過ぎれば、彼女の家だ。
彼女とはよく遊んだものだ。
ある日を境に遊ばなくなってしまったが。
私たちは事故に巻き込まれた。
その拍子で、私たちは記憶の一部を失ってしまった。
あの時に彼女がやってきたときは、懐かしさを感じた。
けど、大切なことが思い出せない。
ただ、これだけは言える。
彼女はもう、帰ってこないかもしれない。
あの時は、「信濃さん」なんて呼ばなかった。
普通に呼び捨てだった。
もう一度だけ、「信濃」って呼んで。
叶うはずのない淡い期待。
いつでも待ってるよ。
秋葉。
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