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“「100パーセント、他者と理解し合うことはできない」ってことを知るのが一番時間がかかったかもなあって思います。コミュニケーションって、ベン図の重なりみたいですよね”

03. 柳下恭平 / 本屋・校閲者

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世界中を飛び回り、さまざまな職を経て、29歳の時に校正・校閲の専門の会社、「鴎来堂」を創業された柳下恭平さん。
これまで数多のジャンルにまたがる本を読んできた彼は「知のドワーフ」と呼ばれるもめブックスの店主でもあり集者でもある。

そんな柳下さんが生きる中で大切にしていることや、彼の仕事観について伺いました。

■柳下恭平(やなした きょうへい) / 校閲者、編集者
株式会社鷗来堂(おうらいどう)、かもめブックス代表。様々な職種を経て、海外から帰国後出版業界に入り、2年後、校正・校閲を専門とする会社、鴎来堂を立ち上げる。2014年末には、東京・神楽坂に書店、かもめブックスを開店。最近では札幌・北18条にあるシーソーブックスの神照哉さんと「ブックブックこんにちは」というポッドキャストを配信している。

https://kamomebooks.jp

Instagram : @kyohei_yanashita

_今の仕事を始めたきっかけは?

これちょっと本当に恥ずかしいっていうか、がっかりさせると思うけど、本当にたまたまで…(笑)
長期の海外生活から帰ってきて、近所の人に「ところで柳下くん、君何やってんの?」って聞かれて、「いや無職です」って言ったら「じゃあここで働きなよ」って。それが出版だったんです。
だからなんていうか、始めたきっかけは、本当にたまたまなんですよ(笑)もしそれがタクシー会社だったら僕、タクシーの運転手になってたと思います。運転、好きだし。
でも、やってみたら楽しかったんですよね、出版。自分の肌にもあってたし、言葉に関係する仕事は楽しかったんですけど、業界を見渡してみると会社にする方が楽しそうだなと思って。

就職して2年後に自分の校閲の会社を起こしました。僕は徒弟制で育ててもらったんですよね、基本的に。で、弟子っていうシステムは面白いなと思って。

1990年代は日本の転職市場が大きくなったり、終身雇用も怪しくなってきたりして、新人をトレーニングする企業カルチャーがだんだんと薄れてきた時代だったんですよ。それにはいいことも悪いこともあると思うんですけど、そのときに出版業界の中で、フリーランサーも含めて若い人いるかなっていうと、40代が中心で20代の校正者ってあまりいないなと。だったら若い校正者を育てる会社を作りたいなみたいのもあって。
あんま立派なことは何も考えてなくて、その瞬間が何か楽しそうとか興味があるから作りました。


_もしも今キャリア始めに戻るならしたいことは?
あんまりないかもしれません。
偉そうなこと言うと、ライフシーズンというか、高校生には高校生の、新卒の子には新卒の悩みがその時折に絶対あるじゃないですか。それってその時にしか感じられないし、解決できないから…後悔がないことはないけれど、割と必死に毎回目の前の課題をクリアしてきたので。


_失敗から成功に結びついたことはありますか?
会社始めて何年めかな。飲み会の席で、ある社員の子に「柳下さんって、何が辛いんですか」って聞かれたんですね。
そんなこと考えたことなかったから、びっくりしちゃって、思わず「本当の意味で、社員のみんなと友達になれないのが辛い」って言っちゃったんですよ(笑)

僕、遊び友達と仕事するのは得意なんです。でも会社って最初から仕事の付き合いだから遊ぶのってちょっと難しくて。けど告白もしてないのにフッちゃったみたいな状況にしちゃって…そんな本音言う必要ないなって思ったんですよ。否定しちゃうじゃないすか。「この人友達になれないんだ」って。言わなきゃよかったなって、今までも思います。


_仕事を始めた際に影響を受けたアドバイスはありますか?
僕、あんまりアドバイスはもらわなかったかなぁ……今でもそうですね。
友達と飲んでる時に近況報告みたいなのはありましたけど、具体的に「これ困ってるんだけどどうしよう?」みたいな相談はしなかったかもしれないですね。


_憧れや尊敬している人、あるいはロールモデルにしている人はいますか?
師匠は4人いて。営業の師匠と、編集の師匠が3人。4人とも本当に尊敬してるけど、多分ロールモデルにはしてないですね。それぞれやり方が全然違うので。
僕の師匠は、みんな本当に頭おかしくて…たとえばそのうちの1人は夜に、FAXの隣で寝てるんですよ。そしたらFAXがピーピー鳴るじゃないですか。起きるじゃないすか。そうすると届いた原稿に赤入れしてすぐ返すんです。怖いでしょ(笑)今のスタイルじゃないかもしれない。でもすごいかっこいい仕事をする人なんです。

で、その人たちのことは心から尊敬しているんですけど、次の世代の子にFAXの隣で寝ろって言うかというと…言いたい奴もいますけどね(笑)だから、そういう先輩たちをロールモデルにはしないけど、かっこいいなと思うし尊敬しています。


_ 働く中で、あるいは生きてる中で大切にしているキーワードを教えてください
なんだろうなぁ〜…あっ、猫! 猫ってこっちが勝手に「ゴメンネ、今日寒かったね」とか、「あぁお腹空いてるよね」とか言いますけど、あいつら基本的に「ニャー」としか言ってないんですよ。何か言いたい時に「ニャー」って言うんすけど、多分そこには「ニャー」以上の意味はないんです。

人間だと、正月だからお節食べようとか、大晦日かだから片付けようとかってなるけど、猫から見るとただの寒い日なだけですよね。猫は正月なんか気にしないよな〜…みたいな。
その猫的視点って結構楽しいなと思っていて、割と意識しているかもしれませんね。すみません、何言ってるかわかんないかもですね。


_発想やクリエイティビティの源泉は?
なるべく言語化するようにはしてるんですね。例えば著者さんからいただいた原稿を読んでて、「ここはなんかちょっと引っかかるぞ」とか思うじゃないですか。で、それを「なんかこのちょっと引っかかりますね」じゃ話になんないんですよ。
「ここはこういうことを書きたかったと思うんですけど、読者にはここまでしか伝わってないですよ。なので、ここを刈り込みましょう。」っていうのを言葉にして伝えなきゃいけないんですね。
だから、例えばビールを飲んで美味しいと思ったら「何で美味しいと思ったんだろう」とか、インプットしたことを1回言語化する癖はついていますね。何で猫はニャーって言うんだろうっていうのも1回言語化してると思います。

その結果として「猫はニャーとしか言ってない」っていう当たり前のことをわざわざ言うことになるんですけど(笑)自分が言語化したことを一応伝えられるように、書き言葉でも話し言葉でも、違うテクストを使っても伝えられるようにしています。

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_今日までに学ぶのに最も時間がかかったことや教訓を教えてください
_自信を無くしたときはどうやって自分を軌道に乗せ直しますか?
_ご自身の好きなところは?
_自分自身をいい状態に保つためにしていることや、習慣はありますか?
_これからの夢あるいは目標は?
_これこそからの日本や世界に必要だと思うことは?逆に不要だと思うことは?
_あなたにとって仕事とは?
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