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9月18日 シュライヒフィギュアの日

      1つにしようか、2つにしようか。

 俺は今、この先20年の決めごとに頭を悩ませている。
 事は重大である。


 娘に買うフィギュアを1つにするか2つにするか。


 まもなく初めてのお誕生日を迎える、我が愛しの娘。もちろん、妻と選んだプレゼントも用意している。けれどそれだけではなく、俺から定番のプレゼントと言うものを作りたいのである。それも娘が20歳になるまでの定番。

 俺の家族がそうだった。自分がそれに気づいたのは4歳の頃だと記憶している。

 おもちゃ箱の中に、大きなクッキー缶があり、その中には小さくてリアルな動物フィギュアが3体あった。象、キリン、パンダ。

 そして4歳の誕生日を迎えたその日、両親から俺のリクエスト通りの戦隊ヒーローのおもちゃをもらった。大喜びで遊んでいると、父親が俺にそれをプレゼントしてくれたのだ。

「おまえが生まれてから1つずつ、プレゼントするって決めていたんだ。もう4歳になったんだな。4つ目のフィギュアをあげよう」

 手渡されたのはライオンだった。細かな技法で制作されただろうそれは本物さながらである。俺は大喜びでそのライオンとそれまでの3体で遊んだ。

 毎年1つずつ増えていくことは自分の成長を目で見るようでなんとも嬉しかったのだ。

 そのプレゼントは俺が20歳になるまで続けてくれた。おかげで俺の部屋には立派なジャングルができあがっている。もちろん、娘がもう少し大きくなったらば一緒に遊ぶつもりである。

 そこで、悩みに戻る。

 1年に1体は20年で20体。20年経てばなかなかのボリュームにはなるが、やっぱり遊ぶ年頃の10年まではまだ少ないのではないか。2体ずつにしようか。

「1体で十分よ」

 売場で頭を悩ませる俺の隣で妻が言う。

「でも、たくさんあった方が色々遊べるんじゃないかな」

 俺がでもでもだってと繰り返すと、妻は笑った。

「あなたの20体がすでにあるのにそこに40体も増えて、合計60体になるでしょう。将来、この子はそれを持って結婚して孫が遊んで、また孫の分も増えていって・・・・・・って考えると、やっぱりあなたのご両親と同じ1年に1体ずつで十分だと思うわ」

 そういわれ考えてみるが確かにそうかもしれない。でも、まあ60体並ぶのも壮観だとは思うけれど、娘の好みもなにもまだ分からないのだから1つずつでいいのだろう。

「お誕生日には1つ年を取るのだから、増えるフィギュアも1つでいいわ」

 そう言って妻も目の前のフィギュアを手にする。

「ユニコーンいいなぁ。私も集めようかしら」

「それじゃあ君の誕生日にも1体ずつ渡そうか」

 俺が言うと、妻は一瞬考えて見せ、すぐにかぶりを振る。

「取った年の数が目に見えるなんて嫌ね。増え続ける一方ってところもちょっと怖いね」

 その表情がまた本当に怖がっているように見えて面白い。

 彼女のフィギュアを制作してくれたなら、俺は毎年買い集めるのになと思いつつ、それもまたリアルで怖いと想像する。


 見るのは子供の成長だけで十分である。

 その数とフィギュアで遊ぶ子の姿を毎年の楽しみにしよう。

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【今日の記念日】

9月18日 シュライヒフィギュアの日

本物そっくりの動物フィギュアのメーカーとして世界的に名高いドイツのシュライヒ社。その日本法人であるシュライヒジャパン株式会社が制定。こどもたちには想像力を育む玩具として、大人にはコレクションしたり飾ったり写真に収めたりと、さまざまなシーンで楽しんでもらえる同社のリアルで高品質の動物フィギュアをより多くの人に知ってもらうのが目的。日付はシュライヒ社が設立された1935年9月18日にちなんで。※写真は左から「子供達の想像力を育むフィギュア」「ドイツ本社の大ティラノサウルス」「フィギュアは丁寧な手塗り仕上げ」。


記念日の出典
一般社団法人 日本記念日協会(にほんきねんびきょうかい)
https://www.kinenbi.gr.jp の許可を得て使用しています。

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