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8月16日 電子コミックの日

    別に全然いいもんね、と思いつつ小南ゆかは試験会場を出た。私には憩いがあるし。そんなことを思いつつ、頬を膨らましている。誰に見せる訳でもないが、自分の頭の中では好きな漫画家が描くだろう自分の顔を想像してその顔で頬を膨らませてみたのだ。

    コンビニに寄りいくつかのスイーツとカフェラテを購入し、やや早足で家路を進む。

    ついさっき受けた2度目の資格試験が不合格だったけれども、終わったことは仕方ない。先週には2年付き合った彼氏に振られたけれどももういいの。その彼と旅行に行くつもりで買った服や水着、挙げ句そのために取得した夏季休暇が明日からは始まるけれど、万事OK!問題ない!

「ただいまっ!」

    誰もいない一人暮らしの部屋に帰宅し、小南ゆかは手洗いうがい、消毒を念入りに行い、着ていた服を脱いでは洗濯機に入れて即座に部屋着に着替える。買ってきたカフェラテとスイーツをテーブルに置くとそのままソファー代わりのハンモックチェアにゆらり腰掛けた。

「あーーーーーーーーー」

    色んなことが積み重なるわなと思いつつ、声にならないわけではない声を上げ、一息吐くとスマホを手に取った。

    新しい出会いを探すのである。

    横目に本棚を見る。そうそうたる歴代彼氏がごとく名前を挙げた先の面々は静かにその本棚にずらりと並んでいる。もちろんあなた達が私の憩いであることに変わりはない。けれど、私はいつだって前を向いて新しい世界を見ていたいのだ。

    そんなセリフをもしかしから口に出したかもしれないが、うっすら思いつつアプリを開く。

「あっ!新作出てるじゃん」

    それを見つけると小南ゆかはすぐにポチッとした。たったこの一動作で新たな憩いが手に入るのだから、なんと幸せな世の中になったことだろう。初めてポチッたわけでもないのに、その都度感激してしまう。そして感激もそこそこに、物語に没入するのであった。

    昔から漫画が好きだった。お小遣いを貰うようになってからは毎月1冊は漫画本を買い、常に新刊発売日をチェックするのが習慣だった。けれどその都度購入していたら収納が困難になり殆どを処分した。

一人暮らしを始める時に持ってきた精鋭たちのみ、今では一緒にいるだけだ。それでも最初のうちは漫画をちょこちょこ買っては増えていたけれど、最近はもっぱら電子コミックである。これまで以上に読んでいるのに、本棚は増えずにいて万々歳なのだ。

    それになんと言っても種類が豊富である。本屋で買うのであればきっと自分の好みの本棚しか見ないだろうがアプリでは彼女の好みだけでなく出会ったことの無いジャンルの漫画も発見されるのだ。

    そうして好きな時間に好きなだけ、読み耽ることが出来る。彼氏と別れ、旅行に行けなくなったことが実は幸いなのではないかと、うっすらどこかで、思っている。

    ああ、心の栄養!

「電子コミック最高だあ!」

    読んで読んで読みまくって、意外と1週間はあっという間に過ぎるのかもしれない。

    夏休みには新しい世界出会いを是非!

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【今日の記念日】

8月16日 電子コミックの日

国内最大級の総合電子コミックサイト「コミックシーモア」。そのサービス開始10周年を記念して、運営する大阪府大阪市に本社を置くNTTグループのNTTソルマーレ株式会社が制定。電子コミックを通じて日本を元気にするのが目的。日付は「コミックシーモア」がサービスを開始した2004年8月16日から。


記念日の出典
一般社団法人 日本記念日協会(にほんきねんびきょうかい)
https://www.kinenbi.gr.jp の許可を得て使用しています。



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