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8月23日 湖池屋ポテトチップスの日

「俺、毎日食ったわー。なんなら今もたまに」

「うわっ、俺もだ。仕事終わりにさー、飲みに行って帰ってから酔い醒まし的に炭酸とこれ食べんの」

「それそれ!一番幸せな時間な。昔から好きなんだよなぁ」

 そう言って真山と平岩はほぼ同時に商品棚に手を伸ばした。真山は右にあるそれを、平岩は左にあるそれをそれぞれ手に取った。

「カラムーチョ!」

「すっぱムーチョ!」

 二人は同じようで違うその二つを手に取り、パッケージを確認した後にお互いが違うものを選んでいることに気づいた。

「え、そっち!?」

 真山が言うと、平岩も驚き、すぐさま首を振る。

「いやいや、そっちこそ。至福の時間に食べるのはすっぱムーチョしかないでしょ」

「なんで至福の時間にすっぱいものを食べなきゃなんないの」

「ええ!それを言うならそっちでしょ。それに比べてすっぱムーチョはその酸っぱさがこう、疲労を癒してくれるからね」

 お互いの主張や選んだ一方の魅力をアピールし始めたが、きりがない上に若干人目が気になり始めたのでそれぞれが2種類を購入し、スーパーを出た。

 今日は久々に同期が集まる研修があった。今日と明日の2日間研修である。定時に終わり、本当であれば近くの居酒屋で集まって懇親会を開く予定であったが、今の時期ではそれもままならない。ならばと部屋飲みを予定したが、研修の始めに本社の担当からそれも禁止である旨が通告された。代わりにと、ビデオ通話アプリのアドレスが配られ、要は各部屋にてオンライン飲み会を推奨されたのだった。

 その、買い出し中である。

「ポテトチップスって好きな銘柄ばっかり買っちゃうよね」

「確かに。そう言えば、俺の親父、還暦になったんだけどさ、昔からのり塩ばっかり食べてるわ」

    似た者親子だな、などと笑いながら歩いていると研修施設に到着した。


「うまく聞こえている?」

「おう!大丈夫」

 アプリにアクセスし、簡単に接続を確かめる。確認が済むと、画面越しでの乾杯を行った。

    まずはビールで1杯・・・・・・とはならず。

    真山が言う。

「どっちからいく?」

 そう言うと平岩が画面にそれを写した。

「じゃあ、カラムーチョで!」

 ばりっと袋を豪快に開けるとふわん、と辛みのあるけれどうま味も感じる独特の香りが浮かぶ。

「じゃ、研修お疲れ!」

 ビールではなく、赤いポテトチップスで乾杯し、それぞれ口に入れる。

「あ、うま辛だわ」

 平岩が驚いた顔でそう言うと、真山がドヤ顔で笑う。

「な!うまいんだって!ああ、これこれ」

「じゃあ、そのすぐ後ですっぱムーチョも食べてみてよ」

 そう言うと平岩はすっぱムーチョもばりっと開けて1枚を取る。こちらは柔らかい酸味ある香りが浮かんでいた。

「おお、適度な酸っぱさ」

「じゃあ、俺も」

 真山も開けて1枚口にする。

「あ、うますっぱだわ」

 聞いたことのない言葉に平岩は思わず笑う。

 酸っぱくて辛くて旨い。

 これは多分この2つにしか出せないおいしさなんだろうなと思いながら、真山も平岩も交互に食べ続けた。


 ビールの1本も開けていない不思議な飲み会でありながら、ポテトチップスは青春かもしれないと思う。

    その手はいつまでも止まらない。

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【今日の記念日】

8月23日 湖池屋ポテトチップスの日

1962年(昭和37年)8月23日、日本人の味覚にマッチしたオリジナルのポテトチップスである「コイケヤポテトチップスのり塩」を発売した株式会社湖池屋が制定。湖池屋のポテトチップスには、のり塩をはじめとして、うま塩、うすしお味、ガーリックなど、人気商品が多数ある。

記念日の出典
一般社団法人 日本記念日協会(にほんきねんびきょうかい)
https://www.kinenbi.gr.jp の許可を得て使用しています。

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