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パラドックス定数「諜報員」の感想

緊張感の詰まった二時間

フォロワーさんが褒めていた劇団で、いつか見たいなあとずっと思っていました。チャンスがないというか、タイミングが合わずに、なんとなく過ぎていたのですが、今回の公演が東京芸術劇場だったので、非常に行きやすい。そしてちょうど「骨と軽蔑」を見る日の夜にチケットが劇団先行で取れそうだったので、これはと思って申し込みました。
無事に確保できて、見ることができましたが、非常に濃密な時間を感じる作品でした。
コロナ禍で配信されている作品は見たことがありましたが、改めて生で見るこの劇団の作品は、緊張感あふれる作品だったので、これから先も見たいと思わせる劇団になりました。

「ゾルゲ事件」

題材はゾルゲ事件です。昭和初期にあったソ連のスパイ活動に関する日本人及びドイツ大使館情報員ゾルゲたちの活動と逮捕に至る出来事を舞台にしています。
多分、この事件のことを多少なりとも知っておかないと、舞台での出来事が掴みきれない部分はあるかもしれませんが、仮に知らなくても逮捕された人々と留置場、取り調べでの一連の出来事という舞台上での流れは、十分に楽しめます。
ゾルゲ事件についてはこちら
当時って、特高の時代ですよね、尋問じゃなくて拷問だろうから、反政府活動って、怖いどころの話じゃないですよ。

緊張感の二時間

とにかく会話を追いかけること、緊張感を切らさないこと、人物のセリフの裏を感じること。セリフに込められた意図って、いろいろな作品で感じることはもちろんありますが、今回は真実というか舞台上にいる役柄の人物の心情だったり思考をどう分析するのか?が自分の中での課題でした。
見ている間になんか肩に力が入って大変でした。
わかりにくいという意味ではなく、その登場人物からでる言葉から伺える背景だったり、人物の思考だったり、そういうものの積み重ねがこの作品の中でのスパイの一面だと思ったからです。
捕まった四人の内、一人は警察のスパイです。捕まった振りをして、実は他の三人の容疑者の内情を伺い、報告する役目を担っています。他の三人はそれぞれの人物背景を抱えながら、ゾルゲについてそしてその協力者について取り調べを受ける。合間にゾルゲのスパイ活動を含めた回想が織り交ぜられていく。ストーリー上では交流された3人は釈放されて、中に混ざっていた警察のスパイは、最後に上席から驚くべき告白を受けて幕が閉じます。
すみません、すごくざっと書いていますが、本当はこの10倍くらいの情報量と舞台上でのやり取りが行われている作品です。
上演台本を購入されると、きっともう少し全体像が見えてきます。

人の信じる正義とは?

スパイ行為は基本、何を信じるか?だと思います。国策が、進むべきが違うと感じる、思想、理想の社会があそこにはある、それが我が国でも実現できないか?
今回は共産主義は素晴らしいという思想のベースがあります。
そしてそんなものは関係なく、自らの利益のためにスパイになる人もいる。ここでこの情報を売ることで自らの立場が守られる、より高みに登ることができる。
そして脅迫されてやむなくスパイになる人もいる。裏切ったら家族が危ない、かつて悪いことをしてそのことを見逃す代わりにスパイ行為を行う。

上記のようなエピソードはさんざん使い古されたものですが、今でも小説や映像作品などなど、いろいろな場で使われています。
理想を追い求めたスパイ行為が、なんというか純粋に見えなくもないですが、実のところどれも「利己的」でしかないとは思います。

この舞台の中では途中、新聞記者が「国際連盟」脱退に関する後悔を話します。このことが日本にとって良かったのか?良い方向にすすむのか?当時のメディアの論調が称賛だったが、それは正しかったのか?という部分に、上記のような話とどう折り合いがつくのか?だったりもします。またラストシーンでの告白も同様で、結局は大義はどこにあるのか?はそのスパイの気持ち一つでどうにでもなるよなあ、、、と見終わったあとにふっと思いました。
正解もないが、間違っていると言い切ることもできない。

次は宇宙飛行士の話らしい

またロシアですみませんと、舞台終了後に主宰が笑っていましたが。
宇宙開発に関わる話らしいが、三部作6時間ということで、めちゃくちゃ楽しみです。
お尻痛いを覚悟して、待ちたいと思います。

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