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食事中に訪れた絶滅危惧種の逆襲

痛い。喉が痛い。
何かを飲み込むたびに,ちくりと刺すような痛み。
唾液すら,ちくりという痛みに変わる。

咳き込んでみても,えずいてみても,痛い。
咳をしても痛い。(それは,一人。)

これは絶滅危惧種の逆襲なのだ,きっと。



あのふわりとした身,甘いタレ,添えられた山椒の実。
うまい,実にうまい。

おいしいねと,話すは束の間,痛い。

お茶を飲んでみる,米を食べてみる。
いや,それでも痛い。状況は変わらない。

気にせず過ごせば,そのうち飲み込まれていくことを期待し,食を進める。
(なんていったって,胃腸炎だったのだ。久しぶりの食事なのだ。)

口に運ぶ,おいしい。そして,痛い。
口に運ぶ,おいしい。そして,痛い。
口に運ぶ,おいしい。飲み込むのが怖い。ああ,やっぱり痛い。

久しぶりの食事なのに,どうして!
私は何か悪いことでもしたのだろうか。
何かバチが当たったのだろうか。
久しぶりの食事を,ただ楽しみたいだけなのに!

君はどうってことないと笑うけれど,
大丈夫だよと慰めてくれるけれど,
飲み込むたびに痛いのだ。否が応でも,突きつけられる現実。

食べなければよかったという後悔,抗えない痛み。
自分を責めてしまう自己肯定感の低さ,それすらも嫌になる。

口を開いて鏡を見る。
白い線が一本見える。

ああ,これだ。
原因が見えるだけで,ちょっと安心する。

しかし,自分では取ることができない。
見えるように喉の筋肉を調整して,それを鏡で見て,手で狙いを定めるだなんて,難しすぎる。ああ,泣けてくる。そこにあるのに,そこにあるのに,私は取ることができない。こうしている間にも,痛い。唾液すら,飲み込みたくない。

大きな口を開ける私,人の口の中はそうそう見たいものではないだろう。
にも関わらず,取ってくれた君に感謝する。
そう今日は,ウナギの骨記念日。

ウナギの逆襲は,こうして幕を閉じた。
もうウナギは食べたくない。ウナギの勝利である。



ーーー

ただ痛かっただけなんだけど。どうしても,この痛みを残しておきたくて。
骨って,刺さるときは尖った方が刺さるイメージだと思う。
だけど,どうやらその反対側が刺さっていたみたい。

私がぐいって押し込んだってこと?

どれだけ食べるのが下手なんだろう。
いや,むしろ偶然に偶然を重ねた奇跡なのか。

大事に至らなくてよかった,ほんとに。
(母方の祖父は,喉に骨が刺さって救急搬送されている。血,か?)

骨のある魚は,しばらく避けよう。
ひとまず,魚の形のもなかでリハビリだ。

みなさまも,どうかお気をつけて。

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