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山×体験型アート『養老天命反転地』

岐阜県養老郡養老町にある『養老天命反転地(ようろうてんめいはんてんち)』へ行ってきた。
名古屋市内から車で約1時間半、『養老天命反転地』は国際的美術家・荒川修作さんと建築家・マドリン・ギンズさんによるアート/建築プロジェクト作品だ。キャッチコピーは「心のテーマパーク」である。

心のテーマパーク『養老天命反転地』

養老山脈に囲まれた広大な養老公園の中に『養老天命反転地』はある。
その広大な敷地はほとんどが斜面で構成されていて、そのなかに様々な建築作品などが点在している。だから作品はほぼ、斜めなのである。

『養老天命反転地記念館』

カラフルな『養老天命反転地記念館』は、上下を反対にしても同じというコンセプトの作品である。この施設の「楽しみ方」の洗礼を受ける、入り口から一番近い建物だ。床は波を打つようになっていて、平ではないのである。

『極限で似るものの家』

『極限で似るものの家』などの作品も中に入れるのだが、斜面に立っているからまっ直ぐに歩くのもままならない。足を踏ん張っていないと滑りそうになるし、頭上に気を付けていないと頭を打ちそうになる場所もある。この現代でそんな場所だったら注意書きでもありそうだが、ここにはない。身体で感じて、身体を使って、作品を体験する。不思議なもので、慣れてくるとどれくらいの感覚でバランスをとればいいのかが何となく分かってくる。いつもだいたい平行で安全な場所で暮らしているから忘れがちだけど、自分で自分の身を守るためか、そもそも身体ってバランスをとれるようにできているのである。

全貌はこんな感じ

どういった目的で作られ、なぜこのような構造なのか。
パンフレットには説明もあるのだが、理解するのはちょっと難しいかもしれない。でも、バランスをとりながら歩いたり、その先に何があるかわからない狭い場所を進んだり、身体で体感しながら、分からないなりに楽しむことはできるように思う。後から気が付いたのだがパンフレットには作品をより効果的に体験できる「使用法」が書かれていた。
ちなみに、広くて高低差もあるから見渡しても全体が把握できないのだが、施設の全貌を上から見るような図をパンフレットで見て「なるほど!」となった。知ってから巡るもよし、とりあえず行ってみるもよし、だ。

知っている地名を探すのも楽しい

そしてアート作品として、目でも楽しめる。日本地図をまるでパズルにしたように各地に配置されていたり、地面に地名や境界線が書かれているのも面白い。そんな発想も建物自体もスタイリッシュで、これが30年近く前にできたなんてちょっとびっくりしてしまった。

『もののあわれ変容器』
『白昼の混乱地帯』

ちなみに岐阜県出身の私は、ここが完成したばかりの25年以上前に一度来ているのだが、足元に気を付けることばかりに気を取られて「危なくて怖かった」みたいな記憶しかない。アートとして感じるには、幼過ぎたのかもしれない。

山×アート

園内はすり鉢状になっているのだが、慎重にヨロヨロ歩いている私の横を、ちびっこが走る。子供には斜めだからゆっくり歩かなきゃという先入観がないのかもしれない。たまたまかもしれないが、転んだり滑ったりしている子供を一人もみなかった。思ったより斜面が急で怖くて降りれなくなる大人(つまり私)はいた。

体感せよと言っている

『地霊』

遠くまで見渡せる広々とした場所に立って、呼吸する。平ではない場所を腰を落としてバランスを取りながら歩く。暗くて狭い場所を進む。斜面を上がる。身体と連動して、これはどういう意味なんだろう?この先には何があるんだろう?と頭を使う。「養老天命反転地」を巡ると、普段眠っている感覚が刺激されるようだった。そしてずっと「思う存分体感せよ」と言われているような気がしていた。
ここは、足元が危なっかしかったり注意が必要な場所である。手すりなどもない。パンフレットには気をつけるようにと注意書きはあるが、実際に巡りながら私が見た限り、注意を促す張り紙や、行動を制限する言葉はなかった。崖のような急な斜面も、立ち入り禁止ではない。でもそれを見て思ったのだ。普段生活しているとさまざまな場面で、注意書きや何かしらのメッセージにあふれている。それがない空間は、不思議と開放的でとても心地がいいものだと。

ここは「心のテーマパーク」である。自然×体験型アート。山に囲まれた自然の中にいるだけで、おおらかな気持ちになる。正直に言えば、あまり自然は好きではなく、都会で美術館へ行くというような過ごし方が好きだ。でも、アート作品があることで山に囲まれた場所に来てみて分かった。いつも考えすぎている私には、こんな場所で呼吸することが必要だ。

『養老ランド』がエモい

『養老天命反転地』の近くにある遊園地『養老ランド』にも寄った。
私は子供のころにも来たことがあるのだが、当時とほぼ変わっていないと思われる、とってもレトロな雰囲気の遊園地である。そのレトロさが「エモくてヤバい」のだそう。

山×レトロ

園内はほぼ小さな子供連ればかりで、中年夫婦+中学生はちょっと浮いていたけれど、園内を歩いているだけで楽しかった。大人が乗ったら恥ずかしいかなーと思いつつ「UFOモノレール」という乗り物に乗る。ゆっくりだけどガタゴトガタゴトぎこちない動き。カーブを曲がる時なんかはもうスリル満点だった。レトロ、最高。

ロボット?の周りをUFOモノレールが行く
なんとも言えない顔のキリン
室内メリーゴーランド。こちらはゴージャス

このレトロ遊園地は、お隣の「天命反転地」とは違った方向から感性を刺激してくれる、とても楽しいスポットだ。
『養老天命反転地』と『養老ランド』。養老の山々を望むエンターテイメントは振り幅が広い(もう少し山を登れば「養老の滝」もあり)。懐広き自然のなかで五感を刺激され、ときめき、身体を動かし、心地良い疲れを感じながら帰路に着いた。

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