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月刊読んだ本【2024.03】


コーヒーの科学

 旦部幸博 (ブルーバックス)

 普段何気なく飲んでいるコーヒーにもこんなに奥深い世界があるんだ。そしてまだわかっていないことも多くあることが逆に魅力だと思う。
 そしてコーヒー飲みたくなる。小学生の頃から毎日飲んでいるというのに。本当においしいコーヒーを僕はまだ知らない。

悪魔の手毬唄

 横溝正史 (角川文庫)

ウィザーズ・ブレイン アンコール

 三枝零一 (電撃文庫)

 これでホントの終わり。
 本編未収録の短編と描き下ろし。
 20年以上シリーズを追いかけてきて良かった。最終回のその後を少しだけ描いてくれてうれしい。あの世界で彼らの人生は続いていくのだ。クレアとヘイズは好きなキャラトップ2なので、彼らが幸せを築ける世界が続きますように。

東方綺譚

 マルグリット・ユルスナール/多田智満子 訳 (白水Uブックス)

 訳者の日本語力が高すぎて見たことない日本語と出くわす。ヨーロッパの人がアジアのことを題材にして書いたことを意識して翻訳しないといけないので大変だと思う。源氏物語を題材にしている話では、源氏物語のことを知っていないといけないし、その相違点を訳者が理解していないと理解不能な訳に陥る。それがインド神話だとかだとなおのこと大変だろう。

ハンギョドンの『老子』

 朝日文庫編集部 (朝日文庫)

(老子の)ファンなので読んだ。老子はやさしいしハンギョドンに癒やされる。フルカラーで660円は安い。穏やかに過ごしたい。

空を飛ぶパラソル

 夢野久作 (角川文庫)

 夢野久作の文章が人類で一番好き♡
 ミステリに見せかけたホラー? のような表題作。永遠に読んでいたいショートショート集『いなか、の、じけん』、超展開でお見事な『キチガイ地獄』等、珠玉の短編集だった。
 オホホホホとかウフフフフとかアッ、みたいな笑い声や感嘆詞が感情をうまく表していて登場人物がいきいきしている。
 書かれた当時に自分が生きていたら、彼の作品を知ることがあったかは不明だが、現代にこうして読み継がれて手に取れていることがナニヨリモ嬉しい。同時代を生きてみたかったものでもあるが……。今後も読み継がれて夢野久作の虜になるひとは後を絶たないであろう未来が見える。ウフフフフ。

珈琲のすべて

(枻出版社)

 すべてはわからんやろ。
 入門書として読むにはちょうどよかった。後半、エスプレッソの話とスターバックスの話でそこにページをさきすぎな気がした。エスプレッソ業界やスターバックスからお金もらっているのかもしれないけど、もっと基本的な話を載せてほしかった。コーヒーノキの話とか。歴史とか収穫から流通の話を。僕のニーズと合っていないだけだけれど。このサイズの本にそんなことまで期待してないけど。写真が多くて見ていて楽しい本ではある。

ロミオとジュリエット

 シェイクスピア/中野好夫 訳 (新潮文庫)

 翻訳と解説がすごすぎる。
 もはや翻訳なのかわからない箇所もあるけれど、それは、この本の内容で上演しても差し支えないように日本語を考えて(意)訳しているのである。英語の言葉遊びをそのまま訳しても何も伝わらないからな。
 この翻訳が70年前だけれど、現代でも充分通用すると思うし、その当時からここまで研究されていたのだと驚いた。シェイクスピアが生きていた時代の劇場はこういう形式だったからと解説に丁寧に説明があって、理解が深まる。観客が脳内で情景を補完するのが暗黙の了解になっていて、映画育ちの僕なんかとは生きている世界が違うのだと思った。そういう点では当時の演劇は小説に近いのだろうし、解説にも、当時の人は劇場に聴きに行くみたいな表現がされていたと紹介されていて、納得がいった。当時のイギリスの識字率がどの程度かはわからないけれど、そういう人々も物語に触れることができるのが演劇の存在意義みたいなところもあったのかもしれない。
 ストーリーは映画(1954年のとレオナルド・ディカプリオのやつ)で知っているけれど、改めて読んで面白かった。ほんの数日の出来事なのが驚きである。そして展開が早い。すぐ死ぬし。でもそれも勝手に脳内で時間経過を補完すればいいのかもしれない。数カ月後だと勝手に思って観ても差し支えはないのかもしれない。正しい観かたかはわからないけれど。
 あと、元ネタがあるということは知らなかった。それについての解説が詳しすぎて研究がすごい。現在の研究者が追加で解説を書いたらさらにすごいことになりそうだと思った。ちょっと読んでみたいな。ていうかたぶん解説だけで1冊の本になるだろうな。それだけ魅力的で奥が深いシェイクスピアの世界。来月も戯曲を読みたい。

だから殺し屋は小説を書けない。

 岡崎隼人 (講談社)

図解雑学 F1マシンの秘密

 青山元男 (ナツメ社)

 15年ぐらい前に買った本を発掘したので読んだ。
 F1に限らず、メカニックの部分とかあまり興味ないというかよくわからんて感じだったけど勉強になった。もっとラフな読み物かと思っていたけど結構詳しく解説されていた。写真が満載でわかりやすい。もっと根本的な車のテクノロジーを理解すればもっと理解が深まるだろうなと思った。今のレギュレーションのマシンの解説も詳しく知りたい。わかっているつもりでわかっていないから。

ニュートン式超図解 最強に面白い!! 無

 和田純夫 監修 (ニュートンプレス)

 ニュートン式超図解 最強に面白い!! シリーズ。
 無が網羅されていて大枠を理解できる。入門書として良い。深く知りたければ参照されている本を読めば良い。このシリーズを全部読みたい。

ニューロマンサー

 ウィリアム・ギブスン/黒丸尚 訳 (ハヤカワ文庫)

 次から次へと新しい登場人物が出てくるし、説明のない用語が出てくるしで、読みにくすぎる。ディクシー・フラットラインがどういう存在なのか、擬験(シムスティム)がどういうことなのか、なんとなくしかわからない。世界観の構築がすごすぎて圧倒されるけど難解すぎる。刊行された当時はもっと難解だったんじゃないかな。今でこそある程度一般読者にも理解できる気がするし、マトリックスとかの映画のイメージをもっているから少しは理解の助けにはなる気がする。それでもよくわからんけど。そして、さっき「アレクサ、電気つけて」と部屋の電気をつけた僕の生活も、刊行当時の人間には遠い地平だったろう。その地平線フラットラインの向こうの千葉市チバシテイのような街に暮らしいてるわけではないけれど、電脳空間サイバースペース没入ジヤツク・インするのをなんとなくイメージできてしまう。そうやって訳のルビのクセが強いせいで読みにくいけど、世界観の構築に一役買っているとも思う。
 叶和圓イエヘユアンがタバコの銘柄なことは文脈からわかる。でもディクシー・フラットラインがなんなのか最初はさっぱりわからなかった。死んで脳波計が水平線フラツトラインになったからそう呼ばれていることはわかる。肉体は死んでいるけど、電脳空間サイバースペースに意識(現代人の感覚で言うとアカウント?)が残っている感じなのもわかる。それであっているのかは不明だが。そして「構造物」と呼ばれているのが理解ができない。その構造物の中に彼の意識(データ?)が残っているということなの? というか現実の話なのか電脳空間サイバースペースの話なのか丁寧にシーンを読まないとわからない。そして、ディクシー・フラットラインはマコイ・ポーリーで主人公ケイスの師匠、みたいなことがネットに書いてあったけど、そういうことだったの? BAMAと《スプロール》がイコールなことも僕はわからなかった。

故郷はBAMA、《スプロール》、Bストン=Aトランタ・MトロポリタンA帯。

p.85

 ↑この文章で、BAMAの通称? が《スプロール》だと見抜けなくない? BAMAの中にある《スプロール》という地区かもしれない。逆かもしれない。「UK、《ヨーロッパ》、UK国」みたいに。
 もちろん原文がそうやって書いてあるのかもしれないけれど、読み取りにくかったです。注釈を入れるなんて野暮だよ、というものかもしれないが、わかりにくすぎる。《》がついているのは何を意味しているのかの説明もない。一発で理解できる人はいるのだろうか。丁寧な新訳版がでたら読み返すかもしれないけれど、この文章もこの作品の魅力なんだろうなと思った。

カレンの台所

 滝沢カレン (サンクチュアリ出版)

 料理楽しいよね。文章に人柄があらわれていてよい。
 この本は滝沢カレンさんの世界観を楽しむもので、料理の参考にはあまりならないような気がする。料理しようという衝動を起こさせる効果はある。料理楽しいよねと改めて気づかせてくれる。料理の写真がおいしそうで、こんなにきれいには作れないよと思ってしまう。

国歌を作った男

 宮内悠介 (講談社)

 短編集。
 表題作は、『ラウリ・クースクを探して』のバージョン0みたいだと思ったら、あとがきに原型と書いていた。そして国歌というのはネットスラング的な意味で、ゲームのBGMのことだった。それを作った男の足跡を追うドキュメンタリー風のフィクション。『ラウリ~』もそうだったけど、本当にこの人が実在したかのように書くのがうまい。『パニック――一九六五年のSNS』も同様に、開高健という実在の人物をめぐる物語だった。世界初の(架空の)炎上事件の真相を追う。でもリアリティがすごい。SFにおけるこういうのはビリーバビリティとかいうのだろうけれど。
 表題作『国歌を作った男』と『夢・を・殺す』はいにしえのコンピューターゲームの話題を取り扱っていて、そういうノスタルジーに僕は興奮する。宮内悠介の小説を読んだときにしか活性化しない脳の部分があると思っているけれど、詠坂雄二を読んだときに活性化する部分と重なった。『夢・を・殺す』の主人公が生きている現実は、かつて思い描いたものとは違って悲しみが募る。主人公が自分のことを幽霊と言っているのが哀愁を誘う。
『三つの月』もエモくて好き(?)。癒し系名作だった。
 いつも作品が丁寧で、やっぱり宮内悠介、さすが宮内悠介ってなる。かなわねぇな。

ニュートン式超図解 最強に面白い!! 光

 江馬一弘 監修 (ニュートンプレス)

 ニュートン式超図解 最強に面白い!! シリーズ。
 高校の時、物理を履修しなかったから、なんとなくしかわかっていなかったことがなんとなくわかった。写真関連で調べていてると出てくる色収差の正体がわかった。

ひとこと

 大嫌いな3月が終わる。そして大嫌いな4月が始まる。早く冬になってほしい。

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