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ひとりでも、みんなとでも:奈良美智展

青森に帰省した帰りに、こちらに立ち寄りました。
青森県立美術館「奈良美智展」(~2/25)

そこで感じたことを書いてみたいと思います。


奈良美智は青森県出身


奈良美智といえば、「女の子」の絵。
一度見たら忘れませんよね。

奈良美智は青森県弘前市の出身です。
今回は企画展でしたが、青森県立美術館には常設されている作品もあります。

雪をかぶった「あおもりけん」


今回は「The Beginning Place ここから」というタイトルの通り、
奈良美智という「ひとりの人間像」に焦点を充てた展覧会でした。


幼少期の記憶


奈良美智の「美術」の道へのきっかけは、このようです。

18歳
東京・代々木の予備校普通大学文系コースにいた奈良は、夏期講習で興味本位で美術・芸術系大学のコースに参加。
講師の一人にヌード・クロッキーを絶賛されたことがきっかけとなり、美術系大学への進学を目指すことに。

こんな偶然からだったんですね。
「講師」がクロッキーを絶賛していなければ、
今の奈良美智はいなかったのかもしれませんね。

自身の「原点」について、このように語っています。

自分の核になっているのは自然の中で育った少年時代なんです。
特に思い出すのは夜、家の周りには街灯もなく、真っ暗な中で星だけが本当に綺麗だったこと。夏には家の屋根の上に上がって、ずっと流れ星を眺めていました。
そのうち自分が真っ黒な宇宙に浮かんでいるような錯覚を覚え、宇宙人や、人間ではない何者かと交信できるんじゃないかと想像したり。星や、死んじゃったおじいさん、おばあさんに語りかけたりするのがすごく好きだったんです。

日本の大学院を卒業した後、結局ドイツで12年間暮らしました。
最初は誰も知り合いがいないし言葉も通じず、孤独な日々を過ごすなかで思い出したのは、子どもの頃に過ごした青森の気候でした。
日が暮れるのが早く、ほとんど毎日のように厚い雲に覆われた、暗くて寒くて長い青森の冬。それは他の人にはない特有な経験であり、あの青森での記憶が自分の創作の核になっているんだと、ドイツにいる間にあらためて気づかされました。

https://hillslife.jp/art/2023/08/18/yoshitomonara/

「毎日のように厚い雲に覆われた、暗くて寒くて長い青森の冬」
こんな風景ですね。


10代の経験


奈良美智は、幼少期から洋楽に触れ、
「美術はレコードジャケットから学んだ」そうです。

展覧会の「最終展示室」は、奈良が高校時代に関わった「ロック喫茶」の「再現」でした。

ロック喫茶「33 1/3」(通称33)とは

高校生の時には既に地元のライブハウスに出入りしていた奈良は、高校三年生の時、シンガーソングライターの佐藤正勘(通称 BOSS)と出会い、佐藤が構想をあたためていた「33 1/3」の店舗作りに加わるよう誘われます。
アパートのガレージ部分を改造するその作業は、D.I.Y.精神に基づき、外装、内装からテーブルや椅子まで、すべて手づくりで行われ、ものづくりの得意な奈良はその中心的な役割を担うことになりました。

https://www.tokyoartbeat.com/articles/-/shigemi-takahashi-aomori-interview-202312
https://www.tokyoartbeat.com/articles/-/shigemi-takahashi-aomori-interview-202312
https://www.tokyoartbeat.com/articles/-/shigemi-takahashi-aomori-interview-202312

奈良は、開店後も放課後毎日のように通い、店のスタッフや常連の大学生などと関係性を深めます。
親しい交流は、お花見や遠足などを通じて店の外までも続き、いつしか「33 1/3」を核とする一つの共同体が形成されていました。


見える人と、小さくつながる


大きなシステムに頼らず、顔の見える仲間たちとの親密な世界を充実させる喜びの原体験、「はじまりの場所」は、この高校時代のロック喫茶にありました。 

近年奈良は、地方の小さな共同体の中に加わり、展覧会やイベントに積極的に関わっています。

2021年
札幌市と小樽市の雑貨店、飲食店、美容室など13店を会場にした写真展「Though no one may notice, the world knows all thatyou have seen.」を開催。また小樽市の裏通りで開催されたイベント「ウラオタル Baza-Art」の中での「Love From the Sea」展、そして展示アドバイザーとして参画した「虎杖浜アヨロ:歩いて巡る写真展」など、小さな共同体との関係性を軸としたプロジェクトが続く。

2022年
8月 北海道虻田郡洞爺湖町の子どもたちとの絵の共同制作プロジェクト「ふらっと奈良さんと」を実施、同地に滞在。
9月 弘前れんが倉庫美術館で「もしもし、奈良さんの展質会はできませんか?」開催。


ひとりでも


一方で、こんなことも書かれています。

<Hazy Humid Day)(2021)
「ぽんやりとした蒸し暑い日」を意味する絵画作品

東日本大震災後の台湾からの多大な支援に対する感謝の念をこめて制作された作品。
観る者を優しく包み込むような、あたたか<やわらかな色使いに、台湾の高温多湿な風土の印象や同地の親しい友人たちへの思いがこめられている。

2021年秋、コロナ禍の中、展覧会の準備で訪れた台南市で、検疫のために隔離されていたホテルの一室で制作された。
ひとりの時間を愛する奈良は、ホテルに閉じ込められている検疫期間もそれなりに楽しんだようで、当時のツイッターに「(前略)個室の中の自由に、まるで人のいない大自然の中にいるような開放感を感じている」という言葉を残している。
そんなすがすがしい気持ちを反映してか、ドローイングにも自由でのびやかな線が見られる。

ホテルの一室にいても、「大自然の中にいるような解放感」

ひとりでも楽しいし、人ともつながれる。
あるインタビューで、このように語っています。

無垢な感情とちょっと意地悪な感情が入り混じっている子どもの絵。
僕の中では、それは孤独感や疎外感の表れだと思っているんです。
疎外感を覚えるのと同時に孤独が好きでも人恋しいという自分自身のアンバランスな精神が投影されていると思います。そういう矛盾は僕だけじゃなく、誰もが感じることだと思いますが。

https://hillslife.jp/art/2023/08/18/yoshitomonara/

人間て、多面的で奥深い。
そして、こんなにも想像力豊かになれるんですね。
おもしろいですね。

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