フェンウェイパークに恋をした〜連載企画⑤
現地到着4日目にしてついに憧れの場所に行く。
語学学校があるキャンパス近くのバス停からバスに乗ること30分。ビル街の中の限られたスペースの中にあるその野球場は、何十年も前からこの街のシンボルだ。
フェンウェイパーク。メジャーリーグ、ボストンレッドソックスの本拠地。メジャーリーグの中で最も古い球場。巨大なコーラが出迎えてくれた。
語学学校で仲良くなったグループ6人分のチケットを買った。だがさすがはメジャー人気球団のボストンレッドソックス。席はほとんど空いていなかった。みんなで立ち見席を買って中に入った。
とても新しいとは言えない作りだった。目に見えるもの全てが古い。雑な作りは古き良きアメリカとも言える。
この薄暗いコンコースを抜けると、テレビで何度も見たあの光景に出会うことになる。私は心臓の鼓動を抑えられずにいた。
あまり前を見ないように歩き、グラウンドが見える場所まで来た。横を見て通路の位置を確認し、前を向いて目を開けた。ゆっくり階段を下りていった。
絶景だった。
まるで一枚の写真のようだった。映画の中のワンシーンのようにも思えた。今まで生きてきた中でいちばん美しい場所だった。
私はグラウンドに吸い寄せられるように客席の通路を降りて行った。美しい天然芝と100年近い伝統ある球場の作りのコントラストが幻想的だった。バドワイザーの看板がココはアメリカだと主張していた。
座席の高さがグラウンドと同じくらいだった。しかも近い。
外野のレフト側は「グリーンモンスター」と名付けられた高い壁がある。ホームからレフトまでの距離が短いため、ホームランが出にくいように設計されている。この球場の名物だ。
球場が狭いなら壁を高くしてしまおうといういかにもアメリカらしい発想だった。
ほかにもホットドックを売る人が、お客さんに投げて渡していたり、試合の様子が柱で見えにくかったりと、日本では考えられない様子を目の当たりにした。
それを含めてメジャーリーグの伝統なのだ。試合前のアメリカ国歌がそれを教えてくれた。
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