「今度なんか本かしてよ」 - 人のセックスを笑うな/山崎ナオコーラ
この間、ナカジマ(近くに住むサークルの同期)に言われた。
私たちの臓器、スマートフォンで何でも読めてしまう(youtubeでは本の内容解説/要約も出始めている今、もはや「読む」と言う行為すら怪しい)中で、
「本を貸す」と言う行為は、何だか落ち着かない、高揚感のある儀式のように思えた。
落ち着かないのはそれだけじゃない。
ま、想像に容易いけど、ナカジマのこと、ちょっと、いいなって、ずっと思ってたから。
好きな人に本を貸す、何んて楽しくて素敵なイベント。
『何の本を貸そうか、あの人はどんな本が好きなのか、そもそもどのくらい本読むのかな、ジャンルは?、てかどのくらい本すきなの?』
考え始めたらキリがない、が、せっかくなので何冊か押し付けようと思っていた。
その中で「絶対にこれ」と決めていたものが一冊ある。
インパクトのありすぎるタイトル。
好きな人に初回で貸す本ではないって?
いいの、私、この本が1番好きなの。
そもそも「本を貸す」とか、そういう好きなものを分け合う行為って、エゴでしかないのだから、考えたってキリがないのよって、7行上の私に言ってあげる。
以下、ちょっと本文のネタバレ含みます。
タイトルと内容がマッチしてない、とか言う人がいるけど、私はタイトルについてはあまり何の感想もなくて。
ただただ「人が人を好きな時ってこんな感じだよね」って言うのを、ていねいに、やさしく、湿った言葉で綴っていて、そう言うところが好き。
私だって、目は切れ長で、鼻が高くて、あと手が綺麗な人が好き。黒髪ストレートで服もおしゃれな人がいい。勿論イケメン。
でも、そう言うことではない。
好きな人の横にいる時、その人の形に自分が自然と歪んでいく、収まっていく、その居心地の良さを感じると、自分はこの人のことが好きなのだと感じる。
映画にもなっていて、私は映画も見たけど、やっぱり小説がいいと思う。
文章も平坦で、むつかしくないし、何より薄いのに行間が広すぎる。
多分1時間半くらいで読めてしまう。
この本を読んでいるときの、やさしいことばが体に巡っていく感覚が好きで、何度もここに戻ってきてしまう。
ナカジマは、身長は174cmくらいで普通なんだけど、体が大きい。でも威圧感は全くなくて、ゆったり、どっしりした安心感がある。
ずっとバスケをやっていたのと、引退した後もジムに通っているとか何とかで、体格で身長7cmくらい増してる気がする。
いつものっそのっそ、ゆっくり歩いていて、適当なことばかり言っている。
だけど、なぜか地に足がついている、大木のような安心感がある人で、本当に同い年なのか、と疑ってしまう。
毎日不安定でその一瞬一瞬でふらふら変わってしまう私のような人間は、
あの人の隣にいて、あの人の側にある空気に触れていると、ちょっとは自分の波が落ち着く気がしている。
ナカジマは感情の波がなさそうだけど、どんなふうに人を好きになるんだろう。
ナカジマが向ける好き、と言う気持ちはどんな形で、どんな色で、どんな匂いで、どんなふうに歪んでいるのか、知りたい。
そんな気持ちも一緒に、この本を貸してみた。
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