大リーグ:エンゼルス1塁ラム選手の取材で感じたこと。

「メジャーの選手は、MLBという大きな組織で働く契約社員のようなもの」

 大リーグを長く取材する先輩記者さんがこう話していた。
 
 選手のチーム移籍事情を見ていると本当にその通りだなと思う。長期契約をしている選手もいれば、一戦一戦、GMに評価(査定)されていて、突然、契約を打ち切られる選手もいて、シビアな世界だなと思う。

 レッドソックス戦に行った時、捕手のマグワイアを見て「あ!!!今、レッドソックスなんだ。元気そうで何より」と思った。彼は去年の春季キャンプの最終日にブルージェイズからホワイトソックスにトレードされた選手。ブルペンで菊池雄星投手のボールを受けて、その後、5分くらい取材して、雄星の今季の展望みたいな記事を書こうと思っていたら、その30分後くらいにトレードになっていた。
 
 翌日、雄星投手と「リース(マグワイア)トレードになりましたね」「びっくりしました」「びっくりですよね。メジャーってすごいですよね」みたいな会話を呆然としたのを覚えている。今季も頑張るぞ!と思っていた矢先のトレードというのはかなりメンタルに来るだろうなと思った。
 
 チームによっては、それぞれの契約や待遇の差がクラブハウスの空気感に表れていて、取材の際に時々それを感じるし、ちょっと辛い。居心地が悪そうな選手は、何度もチームを変わっていたり、短い契約だったり、一戦一戦が勝負の選手で、その切羽詰まった感じがなんとなく伝わってくる。
 
 エンゼルスの1塁手ラムもその一人だ。

岩手日報の記事↓

 チームが何度も変わった話、全盛期から今に至るまでの気持ちの移り変わり、メンタルの整え方などについて言葉を選びながら話してくれた。

「心身ともに昔には戻れない」
「今の自分を受け入れる」

 明るく振る舞いながら話してくれたけれど、昔のようにプレーすることを諦め、今を受け入れるのはとても辛いことだったと思う。どれくらいの涙と汗を流したのだろう。想像を絶する苦悩だったと思う。

 その取材以降、エンゼルスの試合結果をチェックする際、ラム選手の打席も確認するようになった。本塁打打ったんだ、そっか、よかった。大谷の負けを消す安打を打ったんだ。自分らしい打撃ができたのかな。満足いったかな。そんな気持ちで見ている。
 
 エンゼルスの試合を見る機会があったら、ああ、あの記事の選手だ、そう思って、応援してもらえたら良いなと思う。

 





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