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ある男に起きた奇跡と物語の神話性と書き手の俗物性についての考察。妄想日記。


785文字・30min



これはある男の妄想日記である。

小説のラストのどんでん返し、男の死(自殺)を思いついた。が、肝心の男が自殺する動機が見当たらなかった。小説を読んだすべての読者が納得する「男が自殺せねばならなかった事件」をずっと頭の中で追っていた。

筆者に、小さな奇跡が起きた。
出会ったその日の夜に男と田中未知子はまぐわった。後日、
「私、肌がキレイになってるのよ。これってすごいね」
と男は田中未知子に言われた。男は無神論者だ。奇跡は信じない。だからそんな女性のセックスアンチエイジングはあるものだろう。と田中未知子の話は都市伝説のごとくに聞き流した。
男が頭にバリカンを当てた日だった。男はごま塩頭だ。だが、チリトリで取った髪には白髪が一本もなかった。髪の毛は真っ黒だった。これには男はおどろいた。
自分に降りかかった小さな奇跡を目撃した男の頭に、物語の男が自殺せねばならなかった事件は浮かんだ。
これに作家である「男」の個性はからむ。
いま男は田中未知子の18歳の予備校生の息子に、嫉妬をしている。
正確には、息子への嫉妬というよりも、男が息子に紹介されない自尊心あるいは自己顕示欲からでた憤懣だ。
これは男の本能だ。男には防ぎようがない。

小説家とは、人生が自分に押し付けてくるテーマを受け入れて、みずからのおよぶ範囲内で自分の内に棲む悪魔に仕えること。

そこで「筆者である男」が「物語に落としこむべき寓話」はできあがる。
筆者は自らの心の闇と向きあい、その悪魔に仕える。となると。
物語の男は、女と息子との母子相姦を目撃(通話で聞く)する。
これが「男が自殺する事件」だ。と筆者は思った。

物語の男が絶望して死を決意するほどの事件とは、
⑴ 田中未知子は十八歳の息子と母子相姦をしていた。
⑵ ⑴の事実を、男は通話(彼女の電話の放置)で聞いてしまった。
⑶ 田中未知子は男を愛していなかった。


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