マガジンのカバー画像

鴨のキリトリセン

3
運営しているクリエイター

記事一覧

駄文作文: 『鴨のキリトリセン』①

遠くで雷の声が聞こえる。カーテンは開いているのに、とても暗くて夜みたいだ。律は携帯を片手にのそのそと起き上がった。時計を見上げる。午前7時。あたりの空は暗く鈍色に光り、遠くに雷鳴が見えた。ところどころ雲の隙間から陽の光がさしていて、おもちゃみたいな街並みを照らす。隣のビルの屋上にある青々と茂った草が光って見えた。寝てしまった間に一雨あったのだろう。この雲の様子だと、にわか雨だろうか。

椅子に何と

もっとみる

駄文作文: 『鴨のキリトリセン』②

すごく遠い風景を一つ、覚えている。
田舎道、川沿いに歩く時、黒く白く光る川波を縫うように走る白っぽい線。鴨の家族が隊列を組んで泳いでいく。点々と続くその姿は優美で、鴨たちは地上を歩く律には永遠に追いつけない、高尚な儀式をしているように思えた。隣には会えなくなった妹がいて、律は彼女が転ばないよう手を繋ぐ。反対側の手には木の枝。幼い日の律は、意気揚々と歩いているうちに鴨のことなんか忘れて、妹と歌を歌い

もっとみる