クリスマスの気まぐれ.10

「浮かれちゃって、周り見えてないせいじゃないですか?」

プイっと横を向いて、ぶっきらぼうに言う。

「カンナ、なに怒ってるの?
もう、飴ならあげるからさ!」

カンナの手首を掴んで、無理矢理開いた手のひらに飴を乗せる。
そして作業に戻る。

早く終わらせて、早く帰って…。
村田さんに連絡しよう。

前にみんなが噂してた。

“村田さんに番号渡したけど、連絡が来なかった。”
“番号教えてもらえなかった。”

ってことは、もしかして…。
幸せな妄想が次々に浮かぶ。

いやいや、今は仕事中だからしっかりしなきゃ。
気を取り直して作業を進める。
無事に作業が終わり、村田さんは自分の会社へ戻っていった。

更衣室で着替えて店を出ると、当たり前に外は真っ暗でかなり寒い。
ぐるぐるに巻いているマフラーに、顔をうずめる。
だけど、ちょっと平気な気がするのは、心が温かいからだろうか…なんて。

少し前を歩く、見慣れた後姿を見つけて駆け寄る。

「カンナも帰るの?」

「お疲れさまです。
帰ります。」

さっきより、少しは機嫌が直ったのかな?
駅までは方向が同じで、2人で並んで歩く。

「イルミネーションの準備してるんだね。」

広場は昼間は人通りが多いから、夜間に作業を進めているのだろうか。
ふと足を止めて、作業を眺める。

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