クリスマスの気まぐれ.18

そして暖かそうな手で相変わらず、スマホを操作している。
ふと、何かに気づいたように、こっちを見た。

「ナズナちゃん、もしかして待つの苦手なの?」

少し険しい表情で、そう問われる。

「え?
そ、そんなことは…。」

「そう?
映画のときも機嫌悪そうだったし、おれが店探してるのに、知らない人がちょっとおいしいとか言ってるお店に入ろうとするし…。」

「え?」

ちょっと待って、それは違う!
そう思ったけれど、村田さんは止まらない。

「待つのも楽しめなきゃ、人生つまんないよ?」

一方的にそう言いながら、視線はスマホと私を行ったり来たり。
何をどう言えばいいのか、考えを巡らせていると。

「仕事中は明るくてニコニコしていて、いいなぁって思ったけど。
ギャップってあるんだね。」

村田さんの声が少しづつ大きくなる。
まわりの人たちが遠慮がちに、だけどしっかり好奇の目を向けてくる。
もし今どうしても、お互いの言い分を伝え合うことが必要ならば、なりふり構わず話し合おうと思う。

だけど今はそういう状況でもなくて、なにより誤解だらけで、相手は聞く気が全くなくて…。

「申し訳ないけど、そういう子って無理。」

頭から湯気がのぼりそうなくらい、顔を真っ赤にして、申し訳なさなんて微塵もなさそうにそう言うと、スマホを片手に背を向けて歩き去っていった。

まるでさっきの映画の続きを見ているみたい。
ぼんやりとそう思った。
と、同時に集まる視線に気づき、恥ずかしくなって慌ててその場を離れた。

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