見出し画像

痛みがなぜ続くのか?【慢性痛に行動活性化②】

今回の記事では科学研究費での研究の一環として「慢性痛への行動活性化」という心理療法を開発しているのですが、その内容についてお話ししていきます。痛みでお困りの方に少しでも役に立てれば嬉しいです。

今回は、痛みがなぜ?どのように?続くのか、そしてそのメカニズムについてお話ししていきます。前回のおさらいはこちらから。

誤作動をさらに増やしてしまう仕組み:ゲートコントロール理論

痛みは該当する体の部位に刺激があり、それに伴い脳の特定の部位が反応します。棘がささる🟰刺激で、痛いというのは脳の反応です。

この刺激部位から脳への痛み情報が送られる際、痛みの強さは脊髄にある「ゲート」によって調整されます。

このゲートは常に同じ強さで刺激を通してるわけではありません。

否定的な考えや感情、痛みに焦点を当てることで開き、痛みを強く感じやすくなります。逆に、気晴らしや楽しい活動をしている時は閉じ、痛みを感じにくくなります。

身体感覚の増幅理論:Somatosensory Amplification


「身体感覚の増幅理論」は、痛みや他の身体的な感覚に対する私たちの認識と反応の仕組みを説明します。

痛みを知覚すると、私たちは身体感覚の変化に注目し始めます。

例えば、「いつもの感じが出てきた」「違和感がある」といった認識が生じます。

これにより、「この感じは痛くなる」「まずい状況だ」といった認識につながり、身体感覚の変化への注目がさらに強まります。

この過程は、脳の誤作動や疾患が原因である場合、症状をさらに増幅させることがあります。

つまり、本来は軽い症状でも、過剰な注意や反応によって、より強い痛みや不快感として感じるようになるのです。

このような悪循環は、痛みや不快感を恒常化させ、慢性的な問題に発展する可能性があります。

痛みによる悪循環

痛みがあると、さらに痛みが増し、これが悪循環に陥ります。

例えば、「この痛みはなくならない」「働けない自分は価値がない」といった考えが生まれ、それが痛みを悪化させることがあります。

その結果、生活が困難になり、外出を避けるようになることもあります。そうするとゲートコントロール理論や身体感覚の増幅理論と関連し、余計痛みの悪循環が続きます。

ドパミンと痛みの関係

ドパミンは快楽を生み出す脳内伝達物質であり、私たちの感情や行動に大きな影響を及ぼします。

興味深いことに、ドパミンは痛みの感じ方にも深く関与しています。痛みの経験は、ドパミンの放出によって影響を受けることがあり、ドパミンのレベルが低下すると、痛みに対する感受性が高まることが知られています。

これは、ドパミンが感覚情報の処理や感情の調節に関与しているためです。

また、ドパミンは楽しいことや達成感のあることを行った際に放出されます。この報酬系の活性化は、痛みの感覚を減少させることができるため、慢性痛の管理において非常に重要です。

そして、行動活性化はこのドパミン系を刺激し、痛みの感覚を和らげる効果を持つ可能性があります。

こういった痛みが続く仕組みへの理解を深めることで、痛みの管理や治療に新たなアプローチを提供することができます。

特に慢性痛の患者さんにとっては、日常生活の質の向上につながる重要な知見です。

今日のポイント

  1. 痛みの強さは脊髄の「ゲート」によって調整される。

  2. 痛みによる悪循環は、身体感覚への過度の注目や否定的な思考や行動によって増悪する。

  3. ドパミンは痛みの感じ方に影響し、行動活性化で改善する可能性がある。

今回は、痛みがどのようにして維持されるのかについてお話ししました。次回は行動活性化について詳しく説明していきたいと思います。

それでは最後までお付き合いいただき、ありがとうございました!

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?