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天使の歌声

ふと私が初めて付き合った彼氏の事で
思い出したことがあったので、
今日はそれを書こうと思う。


初めての彼氏との初夜についてはこちらをどうぞ。

初めての彼氏と書くのももう嫌なので、
奴と書いていくことにする。


奴のデートのレパートリーは
奈良の某所にあるイオンしかなかったため、
私は毎週同じイオンに連れて行かれた。
(イオンは大好きです。ごめんね。)

毎週のように奴は
好きな特撮のカードゲームやメダルゲーム、
UFOキャッチャーでラブライブの
美少女フィギュアをハンティングしている間、
(特撮はキバ、ラブライブは海ちゃんが好きです。)

お前はショッピングモールをうろちょろしていろ。
と言われていた。
あまりにもエスコート能力も色気もない内容であった。

ちなみにこれ成人してます、
中高生じゃないです。


数時間後ゲームが終わった頃に合流し、
フードコートで飯を食べる。という流れ。
果たしてこれはデートと呼べるのであろうか。

当時の私は思っていた。
ドライブ(イオンに向かうだけ)してもらえるし、
イオン好きだしいっか、という感じで。

だが流石に段々とデートが
イオンだけはどうなんだろうと、
半年ほど経過した時点で疑問を持ち始めていた。
遅い。

もっと別のことがしたいと提案したところ、
奴はやれやれといった表情で
カラオケを提案してきた。キョンすな。


やった!いつもと違うところに行ける!
一緒にいられるの嬉しいな。

当時の健気な私はそう思い、
家から徒歩五分ほどのカラオケに向かった。

当時多少歌声に自信があった私は
誰でもわかりそうな懐メロを入れようと思い、
ジュディマリのそばかすを入れた。

初めて歌う曲を入れるもんじゃない。
思ってた以上に高音で難しい。
ボカロで鍛えた声帯が悲鳴をあげ続ける。

尚且つうろ覚えで不完全な歌い方を披露した私は、
奴の中のカラオケカースト
最底辺にランク付けをされた。


「ヘタクソだな。しょうがない。俺が手本を見せてやる。」


そうドヤ顔で言い放った奴は
私の次に同じそばかすを送信する。


ええ、こんな難しい曲歌えるの凄いな…
キーとかいじらなくて大丈夫なのかな、
リモコン一切触らないな…?


これから起こる悲劇を誰も想像できるはずがない。
想像できるはず、なかったんや…


歌い出し一発目、
奴はソプラノボイスでそばかすを歌い始めた。

え?

あまりに急なことすぎて、
私の目は点どころか無くなった。

そばかすの明るく軽快な音楽が
地獄の音楽に変わり始める。

リアクションも上手くできないまま、
とりあえず大きめの手拍子をして
地獄を終わらせようとする私。

手拍子に負けない声量の
ソプラノでそばかすを歌い上げる奴。
なかなかの地獄絵図だったと思う。


約四分ほどの短いようで長かった
地獄が終わりを告げる。

次の曲を入れる事もできずに
呆然としていた私を見て、奴はドヤ顔で言う。


「俺昔小学校で、天使の歌声って言われてたんだぜ。」


いやお前いつの話してんねん、
今お前いくつのおっさんだと思ってんだよ。
成人男性で初めての彼氏のソプラノは
色んな意味でクソしんどいんだわ。


言えなかった。
私は当時まだ奴のことが好きであった。
人間色んな面がある。
そう思い、私は言葉を飲み込んだ。


その後もラブライブの曲や、
もののけ姫の曲など、高音系の曲を思う存分
本人の気が済むまで披露された。

約二時間ほどだったと思う。
あれほど長くて憂鬱な二時間は
これまでの人生でなかなか無かったと思う。

正直帰りたかった、わかるよその気持ち。
というかよく耐えた、偉いね、私。偉い。



初めての彼氏がソプラノで歌を歌うなんて
知りたくなかった。信じたくなかった。

私はこの出来事以来、
異性とカラオケに行くのがちょっと怖い。
もしソプラノだったらどうしよう、
と当時のトラウマが地味に蘇ってしまう。

世の中両声類とかいるけどさ、
ホンマのソプラノで歌う奴なかなかおらんやん。

ソプラノっていっても完璧なんじゃなくて、
ちゃんと声変わりした成人男性が
声高くして歌ってます的なソプラノ披露されても
どんな顔したらいいんかわからんのよ。


男性のソプラノが悪いわけじゃない、
これは強く言いたい。わかって欲しい。


ただ私が伝えたかったのは
初めての彼氏との初めてのカラオケデートで、
バリバリのソプラノで歌われて
思っていた感じじゃなかった……
というのが書きたかっただけなんだ…..

とりあえずこれを読んでくれた貴方、
カラオケでは相手がビックリしなそうな
安牌な曲を始めは入れて様子を見ような。


ここまで読んでくれて
ありがとうございました。

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