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あみ子だった。この比喩はそうそう書けないよね。さすが、世界観!【読後感想】尾崎世界観『母影』

2021年
 考える本
 純文学
 70点
 2.0h

率直に言えば、苦手な部類だった。もう、これ系は『こちらあみ子』でお腹いっぱいなんです。なんか、嫌なんだよな~

って、要はね、

僕は期待していた。というのは、彼のデビュー作『祐介』は90点だった。あれは、ほんとによかった。えらい面白くって続けて2回読んだ。その時のコメントはこうだ。

コメント①:ゴリゴリのガチ勢やった。エモい! 痛くて切なくて、たまらん。台詞が巧い。比喩がとてもよし。バンドマンにしか書けないことがある。半自伝らしい。才能あり。第2の又吉だ。これはマジで。

コメント②:芥川賞をとるべき作品だったと思う。そして面白い。『火花』のような文学性と、同じくバンドマン大槻ケンジ『グミチョコ』の冴えない男を彷彿させる。比喩がよく、本作は文学的に優れている。

ね、

ベタ褒めだ。正直、読むまではあまり期待していなかった。彼がバンドマンだってことは知っていたが、彼の曲も知らないくせに、どうせ、ぐらいの気持ちが少しあった。だけどそれは見事に裏切られた。面白かったんだよね。そして、大袈裟でもなくて、『祐介』は芥川賞を獲るレベルの作品だと思った。実際はノミネートもされていなかったことを後から知った。

一方『母影』は、芥川賞候補作にノミネートされた。それはリアルタイムで知っていた。しかし、残念ながら受賞は叶わなかった。

だから、『母影』には期待していた。だけど見事に苦手なやつだった。ただ文学的には優れているんだと思うよ。でもね、今村夏子の『こちらあみ子』なんだよなー。考える本、と分類したけど、なんだろうな、

いっちゃえば、気持ち悪い。いや、これこそが純文学なんだ。それも、そうなのかもしれない。でもなあ、彼は『祐介』を書けるなら、僕は彼に、次の『祐介』を書いてほしかったし、書くべきだと思うんだよな。『祐介』は彼にしか書けない。でも、『母影』は……

これは、融通の利かないファン目線なのか。なぜ、こんな、うーん。これ、楽しい? 文学的ではあるよ。それはわかるけど。うーん。て感じ。

付箋はちょっとだけ貼った。↓

・お店で食べるぜんぜん知らない人のご飯は大丈夫なのに、よその家のちょっとだけ知ってる人のご飯が気持ち悪いのはどうしてだろう。そうやって考えてるあいだも、お皿から出る湯気が顔にあたってかゆかった。

・その捨てたくなるほどボロい口が、勉強しないでこんなところに来てたらダメになっちゃうよって動いた。すごく汚れた声だった。うん。返事をした私の声はまだ新品だった。

・学校のぞうきんだって汚れたら捨てて新しくするんだから、もうこのおばあちゃんも捨てちゃえばいいのにって私はいつも思ってた。

・私はお母さんがわからなかった。お店で何をしているのかも、今ここで何を考えてるのかも、ぜんぶわからない。でも、私の手はちゃんとお母さんをわかってて、その手から勝手にお母さんの変が入ってきた。私はそれをちゃんと言葉にできないから、お母さんの変で苦しくなる。お母さんの何が変で、私のどこが苦しいのか、それだって言葉にできなかった。

・口に夜が入ってきて歯が黒くならないように手でかくした。

尾崎世界観『母影』より抜粋

書いてて分かった。別にね、純文学、子供目線の小説なんでいいんだけど、ところどころに歌詞が混じっているんだよな。発見してしまったww
(発見って、、僕が歌詞みたいだって思ったって意味のことね汗)

彼は、小説のなかにロックバンド「クリープパイプ」の一面を覗かせている。これは、彼のスタイルなんだ。ちょっとポエムで、少し違和感は感じるが、これが彼の小説なんだろう。『祐介』の時も、この片鱗はあったと思う。そんなこと書いても彼の曲にはあまり詳しくない。だが噂ではかなりの作詞家らしい。「歌詞集」も発売するらしいね。その点、彼女のあいみょんも、似たところがある。あいみょんの方はかなり聴いた。いいよね。「君はロックを聴かない」だったかな。最高だよね。


いつものとおり、何が言いたかったのか迷子になりそうになる。『母影』、僕は苦手か、なんなら嫌いな部類。でも、雑な言葉で括れば実に純文学らしい小説だった。それと、彼が文章に散りばめる言葉のチョイスは、ただそれだけを味わうだけでも一読の価値はあると思う。彼は、スタイルを確立している。その点で、あみ子、あみ子と書いたが、内容はそれに近いが、文章は違う。彼は文章で、ほかの作家と差別化することができる。それは強みだ。

が、僕は次の『祐介』が読みたかった。けっきょくこれが言いたかった笑
これで〆る。

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