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vol.20 ラベルを剥がす派?剥がさない派?それとも閉じ込める派?

みなさんは、洗剤や瓶のラベルって剥がしますか?
それとも剥がさないまま使いますか?

私は出来る限り、剥がす派です。
部屋の中の文字情報を減らすと、部屋も頭もすっきりするからです。
他にもシャンプーをシンプルなボトルに詰め替えてみたり。
何となく生活の質が上がるような気がします。
完全に自己満足です。

たまにラベルの裏に重要事項が書かれていることを知らずに剥がしてしまうこともあり「やってしまった...」と後悔することも。

でもこの作品は、そんな後悔を一切することもなく、見た目もシンプルです!

赤瀬川原平《宇宙の罐詰》1964/19944.5×8.6×8.6 cm

よく見ると、ラベルが缶の内側に貼られています。

この《宇宙の罐詰》の作り方は主に3ステップ。
1. 缶詰の中身を食べる
2. ラベルを内側に貼り直す
3. 蓋を閉じ、密封する

蓋を閉じた瞬間、何が起こるのか...。
缶の外側と内側が逆転します!
「外側」が私たちのいる宇宙で、「内側」が蟹缶の中身。
つまり宇宙を缶詰の中に閉じ込めたことになる、と作家の赤瀬川原平(1937- 2014)は考えました。

…あれ?

《宇宙の罐詰》は1964年に発表されているので、私たちがいま生きている世界は、蟹に溢れていることになるのでは?
蟹だらけの世界というのも贅沢で良いのかもしれません。笑

見た目をすっきりさせたいがためにラベルを剥がす、という生活感ありふれた私の動機と全く比べ物になりません。

赤瀬川の人生は、どこを切り取ってもパンチあるエピソードで溢れています。例えば、千円札を印刷して作った作品が裁判沙汰になったり、
執筆した小説「父が消えた」で第84回芥川賞(1981年)を受賞したり、1998年に刊行した「老人力」が流行語大賞の候補に選ばれたり。
日常に潜む矛盾や「可笑しいな」と思うことを作品にし、人々を驚かせてきました。

個人的に「老人力」という言葉が好きです。「老人力」は物忘れなど老化というマイナスなイメージを「老人力がアップした!」とプラスに捉えることを提案しています。そうやって考えたら、自分を育成ゲームのキャラクターに置き換えて楽しく歳を重ねることができそうです。

発想転換マスター、赤瀬川原平。
私もユーモラスにポジティブに物事を捉えるようになりたいなと思いました。

参考:
TOKYO ART BEAT, 「奥村雄樹 「多元宇宙の缶詰」」
https://www.tokyoartbeat.com/events/-/2012%2FF7D8

東洋経済, 2014,「激しかった「前衛芸術」赤瀬川原平を再び」,
https://toyokeizai.net/articles/-/55349

HERS, 2021, 「【東京アートパトロール】2021年宇宙の旅 モノリス_ウイルスとしての記憶、そしてニュー・ダーク・エイジの彼方へ」,
https://hers-web.jp/editor/post_25707/

美術手帖, 「千円札裁判」,
https://bijutsutecho.com/artwiki/126

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