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新・幕末純情伝(北区AKT STAGE)の感想

【忙しい人のための感想の要約】
・井上怜愛&宮崎聡美さんどちらもFantastic!個人的な観点では、井上さんはセリフ回しが得意で、宮崎さんは殺陣で魅せた印象。

・私的MVPは岩倉役の杉山圭一さん。ドSなおネエだけでも強烈だが、両日ともアドリブが濃い。桂役の新原武さんは声が素敵。坂本役の草野剛さんはカッコイイ。勝海舟役の時津さんも迫力あって、背が高くていかにも俳優さん。その他脇役だと、岡田以蔵役の本橋裕亮さんの発声が声優みたいな素晴らしい声!!

・土と日でマイナーチェンジがいくらかある。セリフや立ち位置の違いは如実に出ていた

・お見送りまでしてくれるサービス精神!一緒に撮影も1部の方で行ったよ!やった!

本編(ネタバレ多少あり)

2時間10分。あっという間だった。
客全員が割れんばかりの拍手を送った。終演後、映画館で映画観終わったときのように、すぐに立ち上がろうとする人はあまりいなかった。魂だけでなく脚や腰にもまだあの熱い空気の余韻が残っていたからだろう。

あの熱気のあった公演を帰り道や家でもう一度思い返しながら、観劇に至った経緯を踏まえつつ感想を書き連ねていく。

…遡ること明治時代前の江戸……ほど巻き戻る必要はもちろん無い。たった数日前の水曜日である。旧友から突然LINEが来た。

「ちょっとした関係で、つかこうへいの演劇を観た!感動した!」
何を観たの?と尋ねると、
「新・幕末純情伝」
私は10年前の中学生の頃に渋谷のシアターコクーンで観に行った作品だった。当時の主演は桐谷美玲さん。だがお恥ずかしいことに、彼女の細くて華奢な身体がずっと気になっていて、公演中にもしや折れるんじゃないかと心配していたのと、帰り道見たこともないくらい土砂降りの雨だったことだけしか記憶に残っていない。(公演がつまらなかったわけではない)
ただ、あれから色々な視点を養ってきた今の私なら作品そのものを観て、ココが良かったと言える実力を備えている。リベンジもかけて行きたくなってきた。
しかし私はこの間ゲーミングPC等の出費で貯金がほぼなく、諦めてNGを出そうとしたら、
「土曜日分の君のチケット代、奢るから」というメッセージ。

即OKを出した。

来る18時公演の土曜日。色々あってギリギリ滑り込みの形になった。
ここで、一旦あらすじタイム。

※ここから粗雑なあらすじ&ネタバレあり。正式なストーリーは各自調べてください。原作と内容が違う場合もあります。

桂とその手下が何かを探して叫ぶところから始まる。その際に土方が登場。口論になる。
(中略)
成長した沖田総司が登場。けれどなんと男ではなく女性だった!それに子供の頃から肺病を患っている。
ある日新撰組なのに普通に洋服着てる愉快な新撰組と出会う。沖田は彼らと打ち解け、彼らとともに"デモクラシー"を築く活動をする。
ある時、新時代を開拓しようと計画する坂本龍馬の存在を知ることになる。
彼はすごいチャラい。無類の女好き。けれど日本に西洋技術を取り入れ、幕府を終わらせて、自由な世の中を作る大きな夢がある(もしかしたらストーリー上先の話してるかもw)。
(中略)
坂本、沖田と出会う。女性の沖田に惚れ込む。最初は彼のことを嫌がっていた沖田も、彼の夢を聞いてから、少しづつ彼に惹かれていく。
(中略)
しかし後々新撰組には坂本の首を斬れ、という任務を与えられる。ただ新撰組は坂本と仲良く、彼の"自由"な国作りを支持していたので、殺すなんて無理だと抵抗した。けれど坂本の考える"自由な国作り"のポリシーを許さないのが幕府の意見で、従わねば新撰組のメンバーを皆殺しにすると脅される。新撰組メンバーにはみんな将来の夢があり、死んでしまったら夢を叶えられないと考えた新撰組は、人斬りの得意な沖田に任せられる。沖田は坂本と交流が特に深かったため、納得いかなかったものの、最後は覚悟を決めて坂本暗殺を謀る。
(中略)
(大事な場面結構あるけども説明能力がないのでいきなりクライマックスのほうまでいくが)結果坂本は沖田に殺される。けれど沖田は坂本を本気で愛し、坂本も沖田を愛していた。その後に、新撰組メンバーが坂本の首をよこせ!と手柄を奪おうとする。沖田から観た彼らは醜い姿に見えていた。
(中略)
手柄を立てた沖田はようやく国民が幸せになれる政策が作れる時が来た…と思いきや、想像と違う結果に愕然とする。そして沖田は銃で殺される。

改めて、私の説明下手で微妙なあらすじになってしまって申し訳ない。
私から言えるのは、新・幕末純情伝を歴史背景分からずともシンプルに観るのなら、沖田総司と坂本龍馬の2人だけに注目すればよい。そうすれば観るハードルはグッと下がり、誰でも無理なく楽しめるはずだ。

さて、観劇後の感想に入ろう。

土曜の公演は2回あり、観に行った後者では沖田役が宮崎聡美さん。
彼女は殺陣が綺麗だった。殺陣は体力がいる上に、綺麗に見せるのも難しい(ある程度基本の型があってそこから肉付けすることもあるが、それをこなすのも練習がとても必要)。剣さばきはしなやかだった。
彼女の演じる沖田は終始女性らしさが強かった。終盤にあるシーンで、死体の坂本を無理矢理立たせて彼の腕を掴み、沖田自らの胸を揉まれるようにした「アハン、アハン」の時の沖田は色気のある女だった。確か10年前の桐谷美玲もそういう方向性だった気がする。
あと沖田は剣術を極めてるものの、踊りは不得意という設定があるが、新撰組加入したあとのシンケンジャーの曲使った時の動きが最初からキレのある動きだった。意外とリズム乗りが良い沖田。
おそらく、ダンスレッスン通ってた時期があったけど、多分いい思い出がなくて謙虚に振舞ってたんだと思う。沖田自慢していいよ。新撰組で1番上手かったよ。DA PUMPとか安室奈美恵とかFolder5など輩出した沖縄の有名なダンススクールに小学生の時通ってたんじゃない?
続いて色々気になった点。まあご本人も分かってらっしゃるのであまり掘り下げないように気をつけますが、宮崎さんにとっての千秋楽ではっきり噛んじゃったね😭しかもシリアスめなシーンで。
でもいいんですよ。おじさんは気にしません。初めての主役級ヒロイン?って言ってましたもんね。そういう日もあります。

私の中のMVPはおネエのドS岩倉役を演じた杉山さんです!強烈なキャラをしっかりと演じ、それまでの空気をガラッと一変させた張本人。けれど…曲者すぎるのだw
ふんどし男たちを引き連れ、彼らのうち何人かを選んでお仕置するくだりがあるのだけれど、ある1人に対して凄く長かった。この岩倉登場シーンは、なんとアドリブ入り多め(前に旧友が観た公演にはなかったらしい)!!加えて、物語の内容無視。岩倉は肌の白い筋肉ムキムキの若いふんどし男に突然以下の旨を強い語気で叫んだ。
「あんたこっちきな!練習の時からいっつも『あい、あい(若者特有のドライな返事)』と返事がなってないわね!それにあんたの親御さんが観に来てるっていうじゃないの?ほら、前に出て(客席に向かって)しっかり挨拶なさい!」
もうストーリーなど一切関係ない。芸人でいうところの天竺鼠のような、コントの内容を1度ぶった斬り、急にリアルの話に持っていくのとまるっきり同じである。
この手の方法は諸刃の剣だ。少し間違えれば内輪ネタで興ざめになる。
でも彼の話術は明らかに卓越していた。終始堂々とした振る舞いかつ端的で分かりやすい説明、さらにテンポ感を乱さない言動によって、ストーリーへの違和感は最小限にしつつ生の状況を楽しむエンターテインメントの1部と化した。演者までもが皆クスクス笑うほど岩倉節、いや岩倉の仮面を被った杉山節が会場全体に炸裂した。彼は1人でフィールドを掌握する能力を持っている。
この新・幕末純情伝で真の勝者は彼であろう…。

あとは桂役の声の良さ、坂本旅行のウザいけど実は愚直に生きてる姿、勝海舟のクールな立ち振る舞い……などなど総じてとても見応えある内容だった。

最後にはZAQのDance In the Game(アニメ『ようこそ実力至上主義の教室へ』に使われた曲)に乗せてキレキレに踊って終了。連続公演の日程もあって、おじさんたちがさすがに身体辛そうでした…。多分ダンスあんまり得意じゃない人もいますよね?(笑)
バカにしてるわけじゃなく、むしろ憧れます。あそこまで激しいことやってるのに、さらにダンスなんてまず不可能。かっこいいなー!

そして公演終了後はお見送り付き。
全演者たちがずらーっと踊り場まで立って「ありがとうございました」と頭を下げて見送ってくれた。なんて丁寧な方々なんだ!

うわー夢のような時間を過ごせて満足したー!私にとってはディ〇ニーより演劇の方が満足感は大きかったなー。

というわけで、以上で感想はおし……

ウルトラスーパーデラックスリーチ!

2!!!!
2!!!!!!!!!!!
???????????????????

(画面暗転。からの公演終了後の帰り道のシーンに切り替わる)

~王子駅向かう帰り道~

旧友:いやー聡美ちゃん殺陣上手かったなー。初回公演観た時は、怜愛ちゃん(※沖田は元々Wキャストで、もう片方が井上怜愛さん)だったんだけど、あの時あんなに岩倉登場のところでアドリブ入れてなかったんだよな。あんなお仕置長くないし、個人攻撃してないし
オレ:そうなんだ!?あまりにもスムーズにだからいつもやってるとばかり思ってた。聡美ちゃん今日千秋楽だったから、奮発したのかなー。あ、でも個人攻撃されたの聡美ちゃん関係ないwwあはははww
旧友:あはははwwwww

(王子駅近くのマックにて夜ごはん)
オレ:1000円で買ったパンフレット写真多いなぁー。え、聡美ちゃん95年生まれか。でも怜愛ちゃん98年生まれ!?俺らとほぼ同じじゃん……俺らより遥かに立派じゃん……
旧友:え?(顔をのぞかせる)あーほんとだ
オレ:怜愛ちゃんかわいいー♡♡明日の怜愛版沖田も観たい!!!でもこの間のゲーミングPCとガジェットの出費のせいで貯金あんまり崩せないぜよー!
旧友:オレ明日も行きたくなったんだけどさ、いつものバイトがあって無理だわ
オレ:それは残念だな
旧友:でも明日バイト先人数多いから、言えばワンチャン休めるかも
オレ:休んでまでも行きたいとか、お前そんなに興味持ったのか!
旧友:うん。一応連絡してみる
オレ:凄いなお前。信じらんねぇよ。じゃあ大千穐楽も楽しんでこいよ

そして2人は解散。私は家に着き、寝ようとしたタイミングで旧友からLINEがくる。それがこちら。

演劇好きトロロしかいない、割とリアルにお願い。この二言が俺の心を揺さぶった。

色々と読者は思うことがあるだろうが、なんとかリーチ!のくだりがとても長くなったため、この時の俺の思いは割愛。
では、日曜日(と書いてエクストラステージと読む)のステージに移ろう!

日曜は王子駅近くのPRONTOで昼食を済ました。その時スパゲッティをこぼし、ちょっとシミのついた肩掛けカバンをかけて、今度は井上怜愛版沖田を自費で観劇!

怜愛さんのいいところは沖田への役作り。前半緊張気味だったかもしれないが、中盤に入る前には勢いがつき、男勝り沖田!って雰囲気が抜群に表れていた。声色も男に寄せている。
ヒロイン2人をよく観ていると、演技のニュアンスの違いが多少ある。例えば、シンケンジャーの曲流して踊りも入れつつバッサバッサ斬り殺すシーンで聡美ちゃんは終始ノリノリだった一方、怜愛ちゃんは困惑気味に最初無理に踊るテイだけれど、途中から楽しくなってダンスがキレキレになる過程は上手く表現していたと思う。台本の読み込みと発声の技術を磨きに磨いたんだろうな、と個人的には考える。
他にも宮崎聡美版と井上怜愛版に微妙なニュアンスの違いがあって面白かった。同じ演劇でもちょっとの違いが印象をガラリと変える。両者の演技の善し悪しは抜きに、じゃあ2人の沖田を観た上で、自分なら沖田をどう演じるか、どういう心情を想像するかを考えるのも演劇鑑賞の醍醐味だ。

とカッコイイ文を書いてる裏で、結局やはりあの岩倉が前日よりもインパクトが強すぎて頭から離れない。ほんと岩倉ったら…(笑)

皆様聞いてください。大千穐楽という締めに、彼が長尺で大暴れしました💦ふんどし男役たち、いや"本人"たちに対して1人ずつお仕置きを兼ねた説教を行った。
断食にハマってる中年をいじり、衣装の着衣の乱れが酷いハンサムガイを指摘し、岩倉役演じる杉山さんから豪勢な料理を度々奢ってもらおうとする若者を一蹴、1人で自分探しの旅に出るのが好き(記憶おぼろげw)とまるで"アナザースカイで取り上げられてる自分"を気取った野郎を非難し、そして相変わらず返事が『あい』のまま成長しないあの人を叱る……

はっきり言って、ほぼ公開説教wwww

この日曜日公演で初めて新・幕末純情伝観た人、絶対どこか勘違いしただろうな。
「岩倉ってこんなに自由な役なんだ、坂本の言う"自由"は岩倉の振る舞いによく表れてる!」
⇒違いますからね!!全部あの演者さんの味付けが濃いだけですw

けれどこうやって馬鹿やっても成立できるのが日本における"笑い"への飽くなき追究の結果、とも捉えられるのではないか。醸成されたお笑いの背景があるからこそ、幅が広がったんだと思う。って、何の話??w

話を戻して、今回これだけではない。近藤役がさらにアドリブを仕掛けた。
桂が新撰組に向かい「1万円やるから、坂本の弱点を教えてくれ」といった流れがある。けど大千穐楽の近藤はその手に乗らなかった。「いやいっつもいっつも(毎日の公演で)1万円だけじゃさー」と言い、納得いかない様子。

そう、近藤は"いつもの報酬"に飽きてしまったのだ!!

メンバーも近藤のその発言で「ん?」と顔してたけど、すぐにスイッチして「物足りないよー」というムードを出す。これぞ新撰組らしい態度。
桂は苦笑いしながら「じゃあどうすりゃいいんだよ!」と聞くけど、なぜか誰も答えなかったような…それまでも色々と変わったことしてたから忘れちゃったよw
だから桂は痺れを切らして「じゃあわかったよ!1万円と、お前らのこの後の食事奢ってやるよ!!!」と言うと新撰組は「わーーーいあざーっす!!!」と喜ぶ後輩たち。
この時間だけは、人斬りなんて夢の話で、犬畜生と蔑まれることもなく、身分で人を決めないような平和な世界だった。

もしこのままいけばきっと沖田も呼びつけて「桂が奢るって宣言した!何食べたい??」とか聞くと「オレはステーキだな!」「よし!オレは背脂マシマシのラーメン」「デザートにはマンゴーパフェ!」「おいおい湧いて出るほど金があるわけじゃないんだぞ!!」とみんなで青春を謳歌してたのかもしれないなー。
いや作品めちゃくちゃw

もちろん後半は通常運転で進み、ZAQのDance in the Gameに乗せてダンスを踊って終演を迎えた。

坂本役の草野剛さんが土曜に続き、お礼の挨拶を務め、「時間が押しに押しまして(苦笑)」と誰かさんの責任を言及しなかったチームワークを感じつつ、最後出演陣たちは「本日はご来場、ありがとうございました!!」と客席拍手喝采の中、幕を閉じた。

お見送りは短い間行われていた。おそらくだが、土曜と今回のお見送り時間の長さについて旧友の推測によると、使用しているホールは時間を決めて借りているものであり、次に利用する団体の兼ね合いで、撤収作業を急いで行わざるを得なかった、とのこと。
その理由が合っているか当然分からないが、もしもそうなら確かに仕方ないと思った。
私の場合ヒロインとのツーショットは残念ながら撮れなかったものの、1部キャストと撮影はできた!!


岩倉役の杉山さん(新幕末純情伝でTwitter検索したら、観劇した女性のツイートの写真ではマスク外して写ってたのに、俺の時マスク…w)
桂役の新原さん。「9月にまた舞台やりますので!」という宣伝をYouTubeの6秒広告のように添えてきた。時間と金に余裕出たら絶対観ます!!w


岩倉役の杉山さんと桂役の新原さん、ゲーム配信者のMOTHER3で有名らしい大江さんと撮りました!(旧友が彼のファン)
お忙しい中ありがとうございました!!!

※大江さんの分はこちらの事情でカット

みなさん優しい方々です!!よきよき。

さあて、話がまとまらないので一旦記事公開しちゃいます。皆様お疲れ様でした!そしてありがとうございました!

追記。
劇団員のTwitterアカウント1部掲載

北区AKT STAGEの公式アカウント

新原さんの言う、熱海殺人事件の公演はこちら!


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