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M5. 大桟橋 〜青野りえ『PASTORAL』セルフ・ライナーノーツ

正統派の、こうゆうバラードが1曲あってもいいよねと。
結婚式の定番になるような王道のラブソングにしよう、と関さんが言っていましたが、歌詞を書き始めるとついつい別れの歌になっていました。
間奏のシンセのフレーズ、好きですね。泣けますね。
幸せの絶頂みたいな歌詞を書くのはなかなか難しいけれど、そのうち書けたら良いなと思います。

初めは普通に恋愛の別れの曲のつもりでした。
レコーディングに入る少し前に、以前より肺がんで闘病中だった父が入院して、いよいよ父との別れを実感するようになって、途中からそんな想いも入った歌になりました。

そこそこ何十年も生きているといくつかの別れに直面します。恋人との別れ。友人との別れ。家族との別れ。
あえて限定せずに、聴く人それぞれの思う別れの情景を感じてもらえたらと思います。
大桟橋というタイトルも、横浜じゃなくてどこか別の、聴いてる人がそれぞれ思う桟橋でいいんです。

それと、ただ別れの悲しい歌ではなくて、今までの関係が終わってしまったり、遠く離れてしまうことがあっても、その人に注いだ愛情とか築いてきた想いを忘れないで、慈しみながらこれからも生きていこう、という気持ちも込めました。
だから広く大きな意味では、愛情たっぷりのラブソングと言えるかもしれませんね。

2017年2月の初め、5曲のマスタリングが仕上がったばかりの音源を持って父に会いに行きました。
末期がんで呼吸もゼエゼエ、話すのもしんどい様子でしたが、音源の入ったUSBメモリを渡すとすぐ起き上がって、震える手でノートパソコンに差し込んで、その場で聴いてくれました。

ふたりっきりの病室で流れる新曲。会話はわずかでしたが心は通っていて、とても穏やかな時間。
それが父との最初で最後のデートになりました。

あなたはもう待っていないけれど、
そっと応援してくれていた父に、このアルバムを捧げます。

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