地球は回る

回りつづけること
ただ回りつづけること

はるか遠い昔
この銀河の中に
生まれた日から
まだ人が
回っているのは天の方だと
ばかにしていた頃から
ずっと

回りつづけてきたこと
回りつづけていたと
いうこと
この星が
この星は
たったひとりぼっちで

涙の海と
傷だらけの大地をかかえ
明日は消え去る微笑みを乗せ

今いだきあう
恋人たちのこどうを乗せ
今肩車した父子を乗せて
今おんぶした母子を乗せて
笑いながら泣きながら

回りつづけること
それでも黙って
回りつづけること

回りつづけること
ただ回りつづけること

今はとがったわたしの心も
いつか
にくしみとかなしみを
乗り越え
ひとつまたひとつ
角も抜け落ちて

やがてすっかり
丸くなったなら
もしも
そんな瞬間が訪れるなら
その日からわたしの心も

回りつづけよう
ただ
回りつづけていよう

そしていつか
わたしから
わたしの生命の灯が
去ってゆく時

わたしはゆっくりと
とけてゆこう
この星の回転の中に
吸い込まれてゆこう
そして

この星が回転しつづける
明日この星が回転する
明日誰かが笑い
誰かが泣くための
明日
誰かと誰かがめぐり会い
明日
誰かと誰かが別れてゆく
そのための

わたしは、燃料になろう

そして
あたりまえのように
昨日までと同じように
春と夏と秋と冬が
流れてゆくように

回りつづけること
ただ回りつづけること

そしたらきみも
気付くだろう
別れなんて
どこにも存在しなかった、と

今きみの周りが
暗く寒いのは
それはただ
太陽の反対側に
いるだけのこと、だと

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