小説詩集「失われた時間」
「授業中にね、」
当てられて、起立して、答えを探してた。
なのに気づいたら教室の床に寝かされてて担任が叫んでた。
みんなの机が丸く避難してて、あれ、私やっちゃったんだ、て思ったの。
「つまり?」
「つまり、」
気を失って倒れてた。
「知ってるよ、救急車がやってきてあんたが倒れたんだって、高速噂が広まったから」
「でしょ、」
だからバスがきても、今朝は乗りたくないのよ。
「貧血でしょう、」
て、救急病棟では結論付けたのよ。
「でも、答え分からんから倒れたふりしてたんだ、みたいな噂だよ」
私は項垂れる。そうじゃないかって思って、そこをどうどう巡って恥ずかしくって、苦しくなってた。
「あのときね、」
目の前が暗くなりかけたところから、目覚めるまでの1分あまり、私の時間は吸い込まれるみたいにどこかへ行ったのよ、不思議じゃない。
「行方知れずってわけね、」
「うん」
「でもさ、」
って友人は急にこちらに向き直る。
「でもさ、行方知れずなら諦めもつくでしょ、私なんかお姉ちゃんとママと神様がさ、」
「神様も?」
「うん、」
3人揃って、お前はダメだみたいに決めつけて、ダイニングテーブルを囲んで話していたんだけれど、私はそこにいなかったんだよ、それはどうよ。
「失われてるわな、時間が」
でしょ、みたいになって、友人と今日はこのままバスを見送ってベンチに腰掛けたままじっとしていようか、とか相談しはじめる。
「僕の時間はですね、」
隣に立ってた隣のクラスの男の子が、割って入ってきて、
「僕の時間とは失われはしないけど関連性がないから、気はらくなんです」
とか言って、到着したバスのドアが開くのをまって規則的足取りで乗り込んだ。
「あのこ、隣のクラスのロボ生徒よ」
「なるほど」
「仕方ない、うちらも今日1日ロボ生徒になりきってみるか、」
って、重い足取りでバスに乗り込んだ。
「ところでさ、当てられた時の質問って?」
「うん、人生は短距離走か長距離走かっていう問?」
「難しいじゃん」
「んでしょ、」
「やっぱ、倒れたふり、だったんじゃない?」
とか彼女は覗き込むけど、今日1日ロボ生徒になりきることにしたわけだから、今朝の単語テストのことしか私は考えないのだった。
おわり
❄️恥ずかしさと時間の関係性を突き詰めた、的逃避行なおはなしです。時間は心が受け持つのでしょうか、それとも心臓が?、いやいや脳でしょうか?、単に時計が受け持ってる?みたいにぐるぐるします。だから、解決してくれるのはロボ生徒しかいない、的単略的戦略です。時間をおしんだり、時間が過ぎるのを待つみたいにまた書きます。ろば
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