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舞台『咎人の刻印〜レミニセンス〜』を終えて

舞台『咎人の刻印』第二弾は、1/28の大千穐楽を以って閉幕となった。
完全オリジナルストーリーでオリジナルキャラクター満載で……というのは初だったため、何が飛び出すかわからない感があったのだが、蓋を開けてみれば、とてもいいエンターテインメントになっていた。
『咎人の刻印』のテーマを、脚本・演出家さん(中島庸介さん)なりに上手く落とし込んでくださっていて、メディアミックスとしての広がりを肌で感じられた。

今回のキーキャラクターである蘭(彩凪翔さん)と謎キャラクターである??(山岸理子さん)の最後のシーンは毎回ウルッと来そうになっていた。死者が生者の背中を押す話に弱く、「生きる」話を愛しているためもあるだろうが、とにかく二人の演技と演出がいいのだ。
また、自分が何者かわからなかった蘭が自分を取り戻すシーンが神秘的で素晴らしかった。
ヒールであるマドロミ(大西桃香さん)は、めちゃくちゃなワルなのだが、動機や行動が一貫していて彼女なりの筋を通しているので惹かれてしまう。
とにかく、ヤバい演技が上手すぎて毎回見入ってしまった。
「なんだそれッッ!!」(ブチギレ豹変)と自己弁護しながら切りかかるシーンが個人的に最高だ。
彼女の罪自体は許されざることだが、心には一欠けらの救いが齎されてほしいと願うばかりだ。
高峰の相棒の寵(佐藤永典さん)は、キャラビジュいいなー高峰サンの相棒ができるの嬉しいなーと思っていたら、常時目がギンギンの筋肉キャラで驚いた。異能の元ネタは原作5巻に登場したやられ役のものなのだろうが、まさかあのIQ5くらいのおバカ異能がこんな良いキャラクターに活かしてもらえるとは……。
アドリブで原作者が知らない高峰サンの秘密が明かされていく(?)のが面白かった。全通しなかったことが悔やまれる。
情報屋の重光(荒木健太郎さん)も良かった。
ゲネプロの時は飄々としたニヒルキャラだった気がするのだが、回を重ねるごとに茶目っ気が出てきてウザ可愛いキャラクターになっていてどうにかなりそうだった(??)
ぴょんぴょん跳ねる仕草に、「なんだこの可愛い生き物……」と情緒が揺さぶられていた。
ところで、マドロミの反応を見る限りだと、御影の実年齢も売ったんですね……。

そして、原作勢も前回よりキレッキレで良かった。
前回、物語の中心になって苦しみ続けた神無(松田昇大さん)は、今回は主人公として救済側に回っている。心のよりどころを得て、本来の明るさと優しさを取り戻した状態の彼が見られたのは本当に嬉しかった。
前回に比べて御影との絡みは少ないものの、頬に触れた手を取るシーンは彼らの繋がりの深さを感じられてとても良かった。あと一億回見たい。
中ボス戦で「幻覚神無」との演じ分けシーンがあるのだが、落差と切り替えが凄くて舌を巻きまくっていた。
前述した寵&高峰のアドリブのシーンで、悪ノリをして寵とともに頬を叩かれる回があったのだが、そういうところが彼らしくて嬉しかった。
ところで、手を繋ぐ話題で「手はナチュラルに繋いだ方がいい」とアドバイスをしたのは、あれはもう惚気話ですね……???
相棒の御影(赤羽流河さん)の変化も凄い。
前回から一年足らずで演技と殺陣が素人目で見ても明らかに成長していて、頼もしいオーラが目に見えて増していた。
蘭の依頼を通じて神無の成長を見守ったり、マドロミを諭そうとしたりと、今回は母性的な側面を見せるところが印象的だった。作中では年長者に入る御影永久(33)ならではの演技を、年少者である赤羽さんが演じきったのは感慨深かった。
今後の成長がとても楽しみだ。

さて、今回大変な目に遭う東雲(川隅美慎さん)だが、中ボス戦がとにかく熱かった。というか、一度観劇しただけでは目で追い切れなかった。
殺陣がとにかく美しいので、今回存分に浴びられて本当によかった。
マドロミと絡むことが多かったのだが、こちらもアドリブを入れてくれたり、大千穐楽ではマドロミに一歩寄り添った演技が垣間見えて嬉しくなった。
高峰(伊勢大貴さん)は新たな相棒を得て、すっかりツッコミ&弄られキャラになっていた。前回のパントマイムも良かったが、ツッコミも面白いんだこれが。普段が真面目カッコいいし良い声なので、全力でツッコミをするというのが余計にシュールなんだと思う。
ポニテ女性が好みらしいが、原作の東雲はお好みだろうか。いやでも、高峰サンは神無、御影、東雲を「頼もしいが厄介なトリオ」とほぼ一塊で認識してるから特にそんな目では見ないか。
前作ラスボスだった時任(中村誠治郎さん)は、今回は味方に付いてくれて頼もしい。また、あの超絶長い武器をぶんぶん振り回してくれるし、今回は神無もアレを振り回していて凄かった。
ボケとツッコミが絶妙で、原作にはない味わいが出ていて面白い。
原作ではすっかり丸くなったのだが、舞台の彼はまだまだ野心が衰えていないようで、彼の歩む先が気になるところだ。

アンサンブルの皆さんもビュンビュン飛んですごいし、舞台装置がZ軸方向にも伸びてパワーアップしているし、音響もめちゃくちゃ良くて感動した。
舞台は生の人が演じているので、現地の熱量が凄く、終わってしまう時の寂しさが半端ない。
大千穐楽は現地で観劇したのだが、スタンディング・オベーションが物凄かった。拍手とともにお客さまの力強い歓声が飛び交い、「舞台の盛り上がり方じゃないw」と舞台慣れしている松田さんに言わしめたほど熱く盛り上がった。
本当に、お客さまにも恵まれた舞台だった。
現地の様子は2/4までアーカイブで見られるので、生で観劇された方も観劇できなかった方も是非。
スイッチングはキャストさんの顔がアップで映されるので、繊細な表情まで見られて嬉しい仕様だ。

舞台は現地でキャストさん達と時間を共にするものなので、幕が下りた時の寂しさがひとしおだ。それが自分のコンテンツならば尚更である。
だが、この名残惜しさを二度味わうことができて良かったと思う。
舞台化を通じて様々なことを学ばせてもらったし、コンテンツ制作者として少し成長出来た気がする。

願わくは、次がありますように。


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