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『破果』老いとハードボイルド

『破果』ク・ビョンモ (訳)小山内 園子

稼業ひとすじ45年。かつて名を馳せた腕利きの女殺し屋・爪角も老いからは逃れられず、ある日致命的なミスを犯してしまう。守るべきものはつくらない、を信条にハードな現場を生き抜いてきた彼女が心身の揺らぎを受け入れるとき、人生最後の死闘がはじまる。韓国文学史上最高の「キラー小説」、待望の日本上陸!

出版社情報

「カルチャーラジオ 文学の世界 “弱さ”から読みとく韓国現代文学」は、講師の小山内園子さんの丁寧な解説もあって読書意欲を掻き立ててくれました。「 (12)喪失と再生の老年」で紹介された韓国文学。ラジオはすでに聞けなくなっているが、この講義はいろいろ韓国文学を知るのに勉強になった。何冊か、この講義の韓国文学を読んでます。そんな『破果』を翻訳したのが小山内園子さんだった。

65歳の老女の殺し屋のハードボイルド小説。あっちこっちガタが来て医者通い。まあ通常でも不死身でない限り怪我はするだろうから、そういう部分はリアリティがあるような。ハードボイルドの乾いた感じは会話に。特に「守るものがなにもない」というドライさ。ただ地の文は文学的。

「破果」というのは熟した果物がさらに腐食した状態、それを自身の姿と重ねている。どんなものでも時間の経過と共に腐食する。それはハードボイルドの銃であってもだ。その逆説としての身体性。精神の永遠性と身体問題。

最後は他人の子供を守るための戦いとなった。誰かのレビューでジーナ・ローランズの『グロリア』に言及していたけど、なるほどと思った。映画化したら面白いだろうね。


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