アンチになる前に知っておくべき劇
「オイディプス王」(【BS】プレミアムステージ)ソポクレス作、石丸さち子・演出 出演:三浦涼介 大空ゆうひ 新木宏典
BSプレミアムステージで石丸さち子の演出、三浦涼介主演でやっていたので、河合祥一郎訳『オイディプス王』 (古典新訳文庫)を見ながら観ていた。それはこの翻訳が使われていたと気がついたから。
主役のオイディプス演じる三浦涼介は長尺のセリフを一句も間違えずにセリフをいうのは凄いと思いながら見ていた。例えば間違えたセリフを言う相手でもその後には正しいセリフを言うのである。相手が間違ったら普通は焦ってしまうと思うのだが、落ち着いていた。またセリフを見ながら観ているとやはり役者の上手い下手がわかる。
三浦涼介は感情的になるオイディプスを上手く演じていたと思う。この劇ではなによりも感情に走ってしまう若き王のオイディプスの悲劇なのだ。
実際はコロスは音楽劇なのだが、そこまではやってなかった。踊りはあったが、合唱(市民という役割か)よって呪術的なセリフになるのかと。コロスは理性的な役割でもあり、個人の感情に溺れるオイディプスを諫めるのだが、悲劇は神に対する人間という構図で、運命に対して無力ではあるが贖う人間の悲劇なのだと思った。
またソホクレスのしっかりした構成もよくわかった(解説によるものだが)。ソホクレスは舞台に3人の登場人物を置き主に対してアンチ、そして傍観者というパターンであるが、コロス(市民・傍観者になるのか?)は理性的な判断となる。
つまりテーゼ、アンチテーゼ、ジンテーゼというような弁証法的になっているのだ。演劇は哲学より前に思想を伝えたものだとよく分かる。そして劇全体は神に捧げる儀式なのだと。今はそれが観客になるわけだった。だから歌よりも理解し易いセリフになっているのだと思う。音楽劇では違うだろうけど。
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