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アンチになる前に知っておくべき劇

「オイディプス王」(【BS】プレミアムステージ)ソポクレス作、石丸さち子・演出 出演:三浦涼介 大空ゆうひ 新木宏典

ソポクレス作『オイディプス王』は、紀元前より約2500年にわたり観客を惹きつけてやまない、世界最高峰と称されるギリシャ悲劇の大作。
日本でも歴代の名優たちが挑んだ本作に、この度、魅力的なキャスト、スタッフが集結!

主演のオイディプス王には、俳優、音楽活動と表現の場で常に輝きを放つ三浦涼介、先王ライオスの妻であり、オイディプスの母、後にオイディプスの妻となるイオカステに元宝塚歌劇団宙組トップスターで退団後も舞台その他で活躍を続ける大空ゆうひ、イオカステの弟クレオンに、話題作の舞台出演が続く新木宏典。預言者テイレシアス役に、所属の文学座その他の秀作舞台で常に高い評価を受ける浅野雅博、オイディプスの出生の秘密を知る羊飼い役に表現力と存在感に優れた外山誠二、コリントスの使者役は、演劇集団 円に所属し多くの舞台、ドラマ、映画に出演、実績を重ねる吉見一豊、そして神官と使者のニ役を担うのは高い演技力で定評のある今井朋彦。
また、この盤石の出演陣に加え、元宝塚歌劇団男役スター悠未ひろ、多彩な舞台で活躍する大久保祥太郎、元唐組の丸山厚人はじめ俳優とダンサー合計16名のメンバーがコロス役で出演します。
競演にご注目ください!

❝作品世界と人物を深く描く演出家❞である石丸さち子が演出
本作に渦巻く、人間の不条理、根底で交錯する深い愛情、愛憎。叙情的な台詞と衝撃の展開が連続する『オイディプス王』は、石丸さち子の演出では、どのように描かれるのか―――。
三浦涼介、大空ゆうひ、新木宏典、浅野雅博、外山誠二、吉見一豊、今井朋彦をはじめとする、豊かな演技力、存在感を放つ出演者と立ち現れる劇世界に、どうぞご期待ください。

BSプレミアムステージで石丸さち子の演出、三浦涼介主演でやっていたので、河合祥一郎訳『オイディプス王』 (古典新訳文庫)を見ながら観ていた。それはこの翻訳が使われていたと気がついたから。

主役のオイディプス演じる三浦涼介は長尺のセリフを一句も間違えずにセリフをいうのは凄いと思いながら見ていた。例えば間違えたセリフを言う相手でもその後には正しいセリフを言うのである。相手が間違ったら普通は焦ってしまうと思うのだが、落ち着いていた。またセリフを見ながら観ているとやはり役者の上手い下手がわかる。

三浦涼介は感情的になるオイディプスを上手く演じていたと思う。この劇ではなによりも感情に走ってしまう若き王のオイディプスの悲劇なのだ。

実際はコロスは音楽劇なのだが、そこまではやってなかった。踊りはあったが、合唱(市民という役割か)よって呪術的なセリフになるのかと。コロスは理性的な役割でもあり、個人の感情に溺れるオイディプスを諫めるのだが、悲劇は神に対する人間という構図で、運命に対して無力ではあるが贖う人間の悲劇なのだと思った。

またソホクレスのしっかりした構成もよくわかった(解説によるものだが)。ソホクレスは舞台に3人の登場人物を置き主に対してアンチ、そして傍観者というパターンであるが、コロス(市民・傍観者になるのか?)は理性的な判断となる。

つまりテーゼ、アンチテーゼ、ジンテーゼというような弁証法的になっているのだ。演劇は哲学より前に思想を伝えたものだとよく分かる。そして劇全体は神に捧げる儀式なのだと。今はそれが観客になるわけだった。だから歌よりも理解し易いセリフになっているのだと思う。音楽劇では違うだろうけど。


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