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クリスマス・キャロルを読んでクリスマス気分

『クリスマス・キャロル』ディケンズ, (翻訳) 池 央耿(光文社古典新訳文庫)

並はずれた守銭奴で知られるスクルージは、クリスマス・イヴにかつての盟友で亡きマーリーの亡霊と対面する。マーリーの予言通りに3人の精霊に導かれて、自らの辛い過去と対面し、クリスマスを祝う、貧しく心清らかな人々の姿を見せられる。そして最後に自分の未来を知ることに。

アリ・スミス『冬』がディケンズ『クリスマス・キャロル』の翻案だというので読んでみた。なるほど『クリスマス・キャロル』のスクロージ同様、『冬』のソフィアはクリスマスを信じていない。その日だけ慈善事業家たちが寄付するのも小説の中では否定されるのだが、まさにそのことが『クリスマス・キャロル』と同様なストーリー展開になっていくのである。

アリ・スミス『冬』では亡霊は出てこないが、三日間のクリスマス期間の中でソフィアの心情の変化が過去のエピソードと共に語られる。それが『クリスマス・キャロル』は幽霊譚になっているのだが、案内役をするのが共同経営者であったマーリー(最初女性かと思ったが他ではマーレイとなっているようだ。ボブ・マーリーかと思った)であり、三夜に渡ってファンタジーを見せるのである。

三人の精霊が過去・現在・未来というその中で現在のクラチット家のクリスマス・パーティの様子が料理の描写だったり、ダンスシーンだったり、ゲームをやったりするので、自身の記憶とダブってきた。

ほんと自分も孤独なスクロージだが、なんらかの影響を与えてしまう小説だとは思う。今年のクリスマスは孤独ではないかもしれない。


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