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3月の読書まとめ

ベスト5

『 テンペスト 獄中シェイクスピア劇団』マーガレット・アトウッド


『ボードレール 他五篇: ベンヤミンの仕事 2』ヴァルター ベンヤミン

『『パサージュ論』熟読玩味』鹿島茂

『失われた時を求めて4〈 第3篇〉ゲルマントのほう 1』 マルセル プルースト

『災害ユートピア――なぜそのとき特別な共同体が立ち上がるのか』レベッカ・ソルニット

3月の読書テーマ「ベンヤミン」

2022年3月の読書メーター


読んだ本の数:21冊
読んだページ数:6063ページ
ナイス数:649ナイス

https://bookmeter.com/users/56191/summary/monthly/2022/3
■シラノ・ド・ベルジュラック (光文社古典新訳文庫)
映画『シラノ』が思ってた以上に良かったので原作も読んでみた。解説は映画観る前に読んでいた。韻文の戯曲という古典スタイルをミュージカル映画としたのも成功した要因だろう。
映画と違うのは主人公が違うのもそうなのだが、原作の方はよりコメディ的要素が強い。登場人物が言葉の掛け合いで盛り上げていく感じだ。ただ読書となると目で追っていくので、もう一つ理解するのには時間がかかるような気がする。以下、https://note.com/aoyadokari/n/ne5eb6ea07ba6
読了日:03月01日 著者:ロスタン
https://bookmeter.com/books/12399300

■明るい部屋―写真についての覚書
写真が絵画より演劇に近いというのは、彗眼である。決定的瞬間や組写真のように、静止画というよりは動きに重きを置く写真もある。さらにバルトは風景写真についても、そこに住みたくなるかどうかだと言い放っている。明るい部屋という題は、暗い部屋(カメラ・オブスクラ)とは対照的な明るい部屋(カメラ・ルシダ)を指している。プリズムが外部に照らし出す光の形。舞台のようである。一部は写真についての論理的考察なのだが、二部はバルトの私的な母の物語を語っていく。その展開の仕方がスリリングで面白いエッセイ。
読了日:03月03日 著者:ロラン バルト
https://bookmeter.com/books/537619

■ヴァルター・ベンヤミン: 闇を歩く批評 (岩波新書)
今月はベンヤミンを読んでみようかと思わせるベンヤミン入門に相応しい新書。

ロシアのウクライナ侵攻でベンヤミンの「新しい天使」を想起した。その日の日記は、ベンヤミンの「新しい天使」について書いたものだった。

ナチスのユダヤ人殲滅作戦によって、ベンヤミンはピレネー山脈を超えて外に出ようとして途中で力尽きてしう。ベンヤミンの不完全性。それは、哲学から批評へ、さらにエッセイへと降りてくる。以下、https://note.com/aoyadokari/n/n0986b638723d
読了日:03月05日 著者:柿木 伸之
https://bookmeter.com/books/14370795

■詩学 (光文社古典新訳文庫)
アリストテレス『詩学』を読んでいないがその批評とされるニーチェ『悲劇の誕生』やブレヒト「異化作用」は知られている逆転現象がある。タイトルが「詩学」となっているので、それも哲学者の本だから敬遠してしまうが、光文社古典新訳文庫『オイディプス王』の解説で河合祥一郎が取り上げていたので、読みたくなった。悲劇の創作の本だと知った。
アリストテレスの時代は詩と演劇の境もなく、哲学ですらプラトンの対話編のように、戯曲的に描かれている。戯曲というか韻文。ここでも叙事詩のホメロスは、悲劇的な演劇効果について書かれている。
読了日:03月06日 著者:アリストテレス
https://bookmeter.com/books/13613779

■あらし (岩波文庫)
「100分de名著 エドガー・アラン・ポー スペシャル『アーサー・ゴードン・ピムの冒険』」で難破する船がエアリエル号というのはシェイクスピア『あらし』に出てくる妖精の名前だった。それと語り手が最初に出てきて物語の決定権を握るというメタフィクション形式もシェイクスピアと同じ。ポーは明らかにシェイクスピアの影響を受けていると思った。劇中劇は、シェイクスピアお得意のものだし、ラストの舞台挨拶の終わり方など『終わりよければすべてよし』とも共通している。もっともこの作品がシェイクスピアの最後の作品と言われていた。
読了日:03月08日 著者:シェイクスピア
https://bookmeter.com/books/64668

■暴力批判論 他十篇: ベンヤミンの仕事 1 (岩波文庫―ベンヤミンの仕事)
ベンヤミンの哲学的草稿からエッセイまでの11編の文章。一番好きなのは最後の『1900年前後のベルリン幼年時代』。これはプルースト『失われた時を求めて』のベンヤミン版だった。『翻訳者の課題』でドイツ語を翻訳語に逐語訳するのではなく、ドイツ語が翻訳語化する変革を促している。それはドイツを閉じられた精神とするのではなく開かれた世界に誘う試みだった。以下、https://note.com/aoyadokari/n/n7b7b6c790ffb
読了日:03月08日 著者:ヴァルター ベンヤミン
https://bookmeter.com/books/369083

■老子・荘子 ビギナーズ・クラシックス 中国の古典 (角川ソフィア文庫―ビギナーズ・クラシックス 中国の古典)
頭木弘樹さんの「絶望名言」で『老子』をやっていたので読んでみた。今の状況を無為に過ごす安定剤にはなるかな。欲望はできるだけ小さく。頑張らない。なるようになる。無為自然の心持ち。現実には自然がない都市部で生きるにはある程度蓄えがないと無理な話だった。田舎がある人は自給自足のような生き方は可能か。ただどっちみち呆けるが勝ちみたいな。これが一番無為自然かな。根本思想として、正負や生死は現象であり根本は一つの世界だという。仏教の空が中国の無ということらしい。ロシアがやっていることはすべて虚しいことだと納得する。
読了日:03月09日 著者:野村 茂夫
https://bookmeter.com/books/6212

■ヴァルター・ベンヤミン著作集 8 (8) シュルレアリスム
「シュルレアリスム」は、岩波文庫『暴力批判論』に出てきたので今回はパス。そのほかにも魅力的な考察があったので読むことに。主にシュルレアリスムを中心とするフランスの作家の素描と動向のようだ。ただベンヤミンの言葉はつかみにくいと思ってしまう。この時期は、ファシストの台頭と民主主義危機の時代。政治的立場としてコミュニズムの影響も伺われる。以下、https://note.com/aoyadokari/n/nf80f2dd181ab
読了日:03月11日 著者:ヴァルター・ベンヤミン
https://bookmeter.com/books/272345

■【定本】災害ユートピア (亜紀書房翻訳ノンフィクション・シリーズ)
自然災害で起きるユートピアがあるという。人災で起きるディストピアがある。戦争はまさにそうしたディストピアの現れだ。この二つを比べてみると災害で起きるユートピアは、市民による炊き出し、助け合い。それは自治体というよりは主婦層から始まるように思える。おばさんたちの力。それに対するのは自治会や政府のおじさんたちの力による支配がある。まさに戦争はそうした力なのかもしれない。戦争ディストピアという言葉を思い浮かべた。以下、https://note.com/aoyadokari/n/n9d1798033ce2
読了日:03月12日 著者:レベッカ・ソルニット
https://bookmeter.com/books/16525604

■失われた時を求めて〈4 第3篇〉ゲルマントのほう 1 (ちくま文庫)
語り手のゲルマント夫人萌(もえ)がよくわからない。貴族性というもの、特殊形態好み、兎唇につながった赤い大きな鼻とか、うすい口ひげにつづいた皺の寄った両頬とか、蓼食う虫も好き好きなのかもしれないが、貴族性が際立つことが美の観念という。貴族の特殊性のもたらす美の観念は古典主義のバロック好みというものか?以下、https://note.com/aoyadokari/n/n59c79cad3341
読了日:03月13日 著者:マルセル プルースト
https://bookmeter.com/books/12979

■萌野 (1973年)
『成城だより』のプレ(前章版)作品で、息子夫婦出産に伴う1972年のニューヨーク滞在日記となっています。大岡昇平はロックフェラー財団の文化交流によって敗戦後間もない1953年にニューヨークに滞在していて、その頃(50年代の黄金期のアメリカ)と、高度成長期の日本の日記『成城だより』ではバブル期の日本について書いているので、その比較も面白いと思う。『成城だより』では、息子は建築家として渋谷109の設計に携わっていて、いろいろ呼び出している姿は変わらない。
読了日:03月15日 著者:
https://bookmeter.com/books/166310

■『パサージュ論』熟読玩味
ベンヤミン『パサージュ論』を読むために解説本を先に読む。なかなか手ごわい。どうも弁証法というのは。哲学的思考が苦手だった。ベンヤミンはそうじゃないと思ったのだが、やっぱそうだと思った。そう世の中甘くない。夢から覚めた。まず最初の一歩はそんなところ。しかし、哲学は理解が遠くとも文学が切り開いてくれる。まずはプルーストだ。以下、長文https://note.com/aoyadokari/n/n0bb2c499f57a
読了日:03月16日 著者:鹿島茂
https://bookmeter.com/books/330964

■道教思想10講 (岩波新書)
岩波の10講シリーズは入門書というより専門書に近い。素人にはいらない知識ばかり書かれていた。ただ「道教」が『老子』や『莊子』だけじゃなく、鍛錬法や神仙思想につながっていて、中国の根本思想を形作っていることが良くわかった。日本の神道の根源には「道教」がある。神仙思想は、仙人の世界。それは『ドラゴンボール』の世界だった。「気」が「元気」になってパワーになる。天界も仏教より多く「三十六天説」。階層になっていて各階に王がいる。このへんは桃源郷のようなユートピア思想にもなってきて小野不由美『十二国記』の世界観。
読了日:03月20日 著者:神塚 淑子
https://bookmeter.com/books/16500892

■先祖の話 (角川ソフィア文庫)
太平洋戦争末期、日本の敗戦が濃厚な時に日本の行く先を案じて書いた随筆。柳田国男が危惧するように、日本の民族的な風習はアメリカの民主主義に消し飛ばされたわけだが、柳田のようにならなかったのは孤児の問題があったのだと思う。親を無くした孤児にいくら先祖の話をしたところで馬の耳に念仏だろうし、自分の出自がどこの馬の骨かもわからない。そうした時にすがれるものは、せいぜい悪友ぐらいなもので、それ以外は金の力とか、アメリカの教育した民主主義ぐらいだった。
読了日:03月20日 著者:柳田 国男
https://bookmeter.com/books/6800044

■ボードレール 他五篇: ベンヤミンの仕事 2 (岩波文庫―ベンヤミンの仕事)
昨日、神保町の古本市で買って、読みながら帰ってきた。ベンヤミンの文章はわかりにくいのは、アカデミーの論文をめざしながらこぼれ落ちてしまう散文性に在るのだと思う。亡命トランクいっぱいの。最初が「カフカ論」でブロートによってサルベージされた成功文学ではなく、試みに失敗したアレゴリー(寓話)として読む。マルクス唯物史観やユダヤ教神学の大説ではなくアレゴリー(小さきものの)小説なのだ。それを理解すると開けてくる。以下、https://note.com/aoyadokari/n/nbf97c9083260
読了日:03月22日 著者:ヴァルター ベンヤミン
https://bookmeter.com/books/537933

■ベンヤミン (KAWADE道の手帖)
古本市でたまたま見つけたベンヤミンの道案内(ガイドブック)。この「KAWADE道の手帖」シリーズは、民俗学的興味に光を当てるガイドブックになりそうで面白い。これは、ほんと良く出来てます。ベンヤミンの論考の紹介(わかりやすいとは言えないが)。大体の道案内にはなるのだが、ベンヤミンの面白さに迷路の中で出会うガラクタだけど何か妙に気持ちを引かれるものというものがある。そうしたものを探していきたい。
読了日:03月22日 著者:
https://bookmeter.com/books/1167886

■プルースト的空間
古本市で、ジョルジュ・ブーレ『プルースト的空間』という本を手に入れた。プーレって誰?となるが50,60年代に活躍したフランスの文芸批評家(ジュネーブ派とか)。今では古くなっているのか、よくわからないけど、おもしろかった。それまでのベルグソンの時間論解釈からライプニッツの空間論解釈。『失われた時を求めて』の登場人物が場所を背景として描かれていると。アルベルチーヌだったら、バルベックの海辺。だからパリで出会うと以前のように魅力を感じないで戸惑う。
読了日:03月24日 著者:ジョルジュ・プーレ
https://bookmeter.com/books/786071

■ソヴィエト旅行記 (光文社古典新訳文庫)
ジッドが戦時中に、ナチスがソ連と敵対している時に、ソ連の批判文を書いたので(ナチスより独裁政治が進んでいるとも)、フランスの共産主義者から批判された。中にはロマン・ローランのような大作家やポール・ニザンのような若手批評家からも批判を受けた。しかし、ジッドが書いたことは今では明らかにされていることだし、ソ連邦解体の情報公開で秘密警察や粛清の手口も知られている。以下、https://note.com/aoyadokari/n/na68aa7dfb460
読了日:03月26日 著者:アンドレ ジッド
https://bookmeter.com/books/13613778

■語りなおしシェイクスピア 1 テンペスト 獄中シェイクスピア劇団 (語りなおしシェイクスピア テンペスト)
映画『ウエスト・サイド・ストーリー』を観るまでの時間潰しで読んでいたのだが、「換骨奪胎」というならこのぐらいの改変はしてもらいたかった。これはただの焼き直しではない。リメイク作品ならば原作を読めばいいのだ。映画『ウエスト・サイド・ストーリー』を面白かったと言えないのは従来のミュージカルを超えるものではない。ダンスやセットや衣装が凄いと言っても、それは従来のハリウッド映画ならどんどんスケールアップされ更新されるだろう。そうではないのだ。ミュージカルを批評するミュージカル映画が必要なのだ。
読了日:03月27日 著者:マーガレット・アトウッド,鴻巣 友季子
https://bookmeter.com/books/16355578

■ヌーベルバーグ以後 - 自由をめざす映画
佐藤忠男氏が亡くなって偶然古本屋で見つけた本を読んだ。1971年出版の本だから60年代の映画総括という感じ。アメリカ・ニュー・シネマの時代、そのあたりの映画好きになったのかもしれないと懐かしく思う。ハリウッドの逆を行く「アンチ・ヒーロー」「アンチ・ハッピーエンド」。低予算映画。日本だと羽仁進のドキュメンタリーから紹介しているのがいい。彼はカメラの進歩によってヌーベルバーグ的になったと。その説は面白い。映画とカメラの進歩は切り離せない。
読了日:03月28日 著者:佐藤 忠男
https://bookmeter.com/books/9727895

■プルースト/バタイユ/ブランショ―十字路のエクリチュール
書くこと(エクリチュール)の無為なる行為についての三人。プルースト、バタイユ、ブランショ。彼らの無為なる行為(書くこと)について、神がいない世界での悪魔への祈りのような行為。十字路とは?その思考を解明するより、生きなければならないとするブランショの言葉。ブルースの曲「クロスロード・ブルース」を思い出す。以下、https://note.com/aoyadokari/n/n7f883f32bf5c
読了日:03月30日 著者:ロジェ ラポルト
https://bookmeter.com/books/167688


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