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フーテンや風俗夢見て風狂よ

まだ桜が開花してないのに出店が出ている。来週ぐらいか?今、『西行桜花』を読んでいるから桜の和歌ばかりなんだが、西行は月の歌の方が好きだった。桜と女院(待賢門院)との一夜の逢瀬が桜鑑賞会で、それから女院を慕っているのだが、鳥羽院が藤原得子を后としたため女院は用済みになり出家したのだった。鳥羽院方と息子崇徳院方の権力問題で摂関家の暗躍があり、やがて武士の世になっていくのだった。西行は歌僧として宮廷時代を懐かしんで歌づくりをしているのだが、ついに女院が亡くなって、奥州にみちのく一人旅に出るのであった。

この歌は西行を踏まえていると思った。冷たくなった女は、愛想をつかされたと思うのだが死んだという意味にも取れる。それで最後の女になるわけだった。西行の歌でないにしても、西行追慕の歌だ。

短歌はあと齋藤史を集中的に。齋藤史はモダニズムのお花畑短歌を作っていたのに、2.26事件から180度人生が変わっていく。そこがスリリングで興味深い。梯久美子『この父ありて 娘たちの歳月』は齋藤史が出てくるから読みたいと図書館から借りてきたのだが、2.26事件で殺された陸軍大将の娘渡辺和子が最初に出てきて面白かった。その後に齋藤史なのだが、二人は出会わなかったんだよな。出会っていたら興味深い話がされたかもしれない。

他にも島尾ミホとか田辺聖子とか石牟礼道子も出てくる。梯久美子はこういうノンフィクションを書かせたら上手いな。

俳句は『富澤赤黄男百句』。一句批評がベテラン俳人ではなく、多くの新人にやらせているために拙い批評もあって、それがあまり好評ではないのだが、富澤赤黄男の俳句はそのまま出ているので、他人の批評と自分の読みを比べる練習にはなると思う。権威的な人ばかりではつまらん。

富澤赤黄男は新興俳句系だから、やっぱ面白いな。季語とかあってもなくてもいいよな。短歌・俳句関係の本を少しずつ読んでいるから読書もなかなか進まない。

今は電車の中で『1984』の電子書籍が3に入った。2で終わっても良かったのにと思ってしまう。1がディストピア社会で、2がラブストーリーと反抗3は逮捕されて尋問という感じなのかな?オーウェルは『1984』よりも『カタロニア讃歌』の方がいいと思うのだが、ディストピア世界を現実社会にそって読んでしまうから重要な本ということなんだろう。SFとしてはイマイチくどすぎるんだよな。もっとあっさり語って欲しい。そのぐらい力が入っているのだが。禁書となっているゴールドスタインの書籍がまるまる出てきたり(論文だった)けっこう読みにくい。二重思考もちょっとわかりにくい概念だよな。完璧な同化政策じゃなく、反対思想も織り込んでおく。そのことで個人は疑い深くなるし、なかなか真実には近づけない。自分の思考はどうなんだろうと疑ってしまうから、権力側の思いのままというか、その方が楽なんだ。

実際にその社会であるだろうというのが北朝鮮の社会なんだと思うが、韓国人が書いた詩人が書けなく時代を描いたフィクション、キム・ヨンス『七年の最後』も読んでいた。これは図書館の新刊コーナーにあったもの。

昨日は図書館に行かず、返却本も予約本も無かったので家で待機していたが、やはりあまり読書は出来ないかった。いろいろ読みすぎて完読できないというのもあるけど、例えば梯久美子の本を読んでいて島尾ミホが出てくると島尾ミホの作品をもう一度見直してみたくなったりするのだった。感想が綿密にアップされている本ばかりじゃないから、忘れていることも多い。忘却しているのだ。それでも無意識のなかでは蓄積されているもんだろうか?だいたい感動するところは決まってしまっているような気がする。もはやそれを確かめるために読書しているのだろうか?

読書は依存症だと思っているからな。まだ映画の方が二時間なら二時間で終わるのがいいと思う。三時間近い映画もあるが昨日観たのは一時間ちょいほどだった。若松監督の初期の『新宿マッド』は新宿のゲリラ撮影とか、1970年の新宿は新宿騒乱が終わってフーテンの時代だったんだよな。中上健次の初期の小説で読んだからそのイメージだった。風月堂(ジャズ喫茶)とか出てきて欲しかったな。

今日の一句

フーテンや風俗夢見て風狂よ 宿仮

風俗というのはエッチなことじゃなく文化風俗的な。


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