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BBCドラマ『戦争と平和』

『戦争と平和』(2016/BBC)監督トム・ハーパー 

ピエール・ベズーホフ:ポール・ダノ
ナターシャ・ロストワ:リリー・ジェームズ
アンドレイ・ボルコンスキー:ジェームズ・ノートン
ニコライ・ロストフ:ジャック・ロウデン
マリヤ・ボルコンスカヤ:ジェシー・バックリー
エレーヌ・クラーギナ:タペンス・ミドルトン
アナトール・クラーギン:カラム・ターナー
フェージャ・ドーロホフ:トム・バーク
リーザ・ボルコンスカヤ:ケイト・フィリップス
ソーニャ・ロストワ:アシュリング・ロフタス
アンナ・パヴロヴナ:ジリアン・アンダーソン
ボルコンスキー公爵:ジム・ブロードベント
ロストフ伯爵夫人:グレタ・スカッキ
イリヤ・ロストフ伯爵:エイドリアン・エドモンドソン
ヴァシーリイ・クラーギン公爵:スティーヴン・レイ
ミハイル・クトゥーゾフ:ブライアン・コックス
アンナ・ミハイロヴナ:レベッカ・フロント
ボリス・ドルベツコイ:アナイリン・バーナード
オリヴィア・ロス
バズデーエフ:ケン・ストット
ケネス・クラナム
ナポレオン・ボナパルト:マチュー・カソヴィッツ

第1回

1805年ロシア、サンクトペテルブルク。ナポレオン率いるフランス軍がオーストリアに侵攻し、ロシア社会は不安に覆われていた。物語の主人公は、ピエール、アンドレイ、ナターシャ、3人の若者。ベズーホフ伯爵の私生児ピエールは、社交界では変人扱い。親友アンドレイは栄光を求め、身重の妻を残し戦地に赴く。ナターシャの名前の日を祝うロストフ家を訪れたピエールの元に、父危篤の知らせが入る。父の最期を看取ったピエールは、期せずして莫大な遺産を受け継ぐことに…。

BBCの『戦争と平和』をアマプラで観た。BBCの大河ドラマは作りも丁寧で期待が持てる。原作は読んでないのだけど100分de名著で大体のストーリーは理解している。ソ連版の映画も観たことがあった。まあBBCだから英語なんだが、その点を除けば面白いかな。

第一回は、戦争のさなかにロシア貴族のどんちゃん騒ぎ。ピエールは、眼鏡の奥手タイプの青年貴族。私生児なのだが、父の臨終に間に合うように到着して、父の遺産を受け継ぐことになる。伯爵になったのだ。

アンドレイは騎士道精神に溢れる青年で結婚をしたばかりなのに身ごもる妻を置いてナポレオン戦争に出征する。置き去りにされる妻の悲しみ。その戦争の悲惨さが終盤にやってくる。

第2回

1805年11月20日、アウステルリッツの戦いでロシア軍はフランス軍に大敗を喫する。戦いの最中負傷したアンドレイ。彼の死が誤って報じられ、家族は悲嘆に暮れる。莫大な遺産を相続したピエールはワシーリイ伯爵の計略により、彼の娘エレーヌと結婚をすることに。奔放なエレーヌとの結婚生活がうまくいかず悩むピエール。友人のドーロホフと妻が密通していることを知ったピエールは、ドーロホフに決闘を申し込む…。

第2回にして重要登場人物のアンドレイの戦死の報。劇的と言えば劇的。通常のドラマでここまで過激なのはあまりない。そしてピエールは父の遺産を得て結婚。この妻がしょうもない妻で浮気をする。そのためにかつての親友と決闘。面白い。人の不幸だからか?

トルストイの女性は結婚が一つのゴールでそこからは貞操一途で夫の良きサポート役であれという女は家(貴族社会)のためにあるという存在。同時代の文学でプルーストの女性観とは随分違う。まあ、フランスでは自由恋愛は文学では当然の流れの中にある。貴族的サロンを支配するのは女性だった。

トルストイ『戦争と平和』ではサロンは男の快楽のもので添え花としての女性という感じなのだが、ピエールの妻エレーヌはフランス風の女性だった。その貴族の名誉としての違いによりピエールの決闘があった。それはナポレオン戦争と関連している。

第3回

ピエールはドローホフとの決闘に勝利する。しかし、悪びれる様子のない妻エレーヌに怒りを覚え、彼女と別れ1人サンクトペテルブルクに発つ。アンドレイは戦地から生還するも、妻のリーザは出産で命を落とす。ナターシャの兄ニコライは、ドーロホフにカードで負け大きな借金を作ってしまい、ロストフ家はモスクワからオトラードノエに移る羽目に。1807年6月、休暇を終え再び軍務についたニコライだったが、フランスとの間に平和条約が結ばれたことを知る。

アンドレイ・ストーリーはドラマチックな展開が続きます。戦争で重症を負うも治癒して帰宅。しかし帰宅するとすぐに妻の出産に立ち会う。難産で妻は死んで乳飲み子だけが残される。アンドレイは妻を置き去りにして、祖国戦争(ナポレオン戦争)に出兵したことを後悔する。国家よりも家族だったのだ。

ピエールは決闘に勝利したものの人殺しの罪悪感は拭えずフリーメーソンのキリスト教の洗礼を受ける。ピエールの遍歴はトルストイに近いものだったのか?

そしてロシアとフランスは停戦、平和条約が結ばれる。戦後の貴族社会は、貴族のサロン(パーティー)に浮かれる。そこにエレーヌの浮気もあったのだ。

第4回

1809年春、アンドレイはボグチャーロヴォで世間から離れて暮らしていた。ピエールはアンドレイを訪れ、2人は人生について語り合う。父ボルコンスキイ公爵の用事で、オトラードノエに暮らすロストフ家を訪ねたアンドレイはナターシャと出会う。お互い好意を持った2人は、その年の冬、サンクトペテルブルクの舞踏会で再会する。恋に落ちた2人を見守るピエール。父から1年間の外国行きを条件に出されるも、アンドレイはナターシャに結婚を申し込む。

ナターシャの魅力全開の章だった。舞踏会でドレスを着てダンスするシーンと民家でロシア民謡を踊るシーン。ナターシャ役の人はそれほど美人というほどでもないがこういうシーンで魅力的だった。ロシアを描きながらロシア人っぽくない。特にナターシャ役のリリー・ジェイムスはイギリス美人。ナターシャに比べてソーニャの悲劇性。ソーニャ役のアシュリング・ロフタスもいい。ナターシャの当て馬的存在なんだが。

田舎の平和な生活。その社交界が結婚への前提になる。ただアンドレイの一家は、ナターシャとの結婚は家柄の違いか反対である。父に一年間の外国行きを命じられてそれに従う。父権社会でアンドレイはそれを拒否することは出来ない。ナターシャの貞操観念が問われるのだが、今だと一年も離れていれば愛も冷めるだろうと容易に想像できるのだが。そこはあまりにも保守的なロシア社会であった。この後の展開のナターシャは愚かな女として描かれる。

第5回

1811年1月、ロストフ家はモスクワの屋敷へ移る。ナターシャはアンドレイと会うことを期待していたが、彼が外国での治療からまだ戻らないことを知り落胆する。彼女は、アンドレイの父ボルコンスキイ公爵と妹のマリアのもとを訪ねるも、冷たく対応されさらに落ち込む。ある夜訪れたオペラで、ナターシャはピエールの義兄アナトールと出会い、言い寄られる。その後ナターシャはアンドレイとの婚約を破棄し、アナトールとの駆け落ちを企てる…。

ナターシャ愚かな女になる回です。なんでアナトールのような男に惚れてしまうかな。まあ、BBCもアナトールを嫌な男と描いているのだけれども、それ以上にナターシャの結婚感というか恋愛観が未熟だったような。と言っても一年も放って置かれたらその浮気を責められないと思うのだ。ただアナトールに惚れるかなあ。もっといい男いなかったのかい。なんとなくピエールに恋心あるような感じなんだが。ピエールも自分のことで精一杯だし。完全にドラマに持っていかれてます。

第6回

1812年夏、ナポレオン率いるフランス軍が国境を越えロシアに侵攻する。アンドレイは、年老いた父とわだかまりを残したまま、妹と幼い息子を残し出征する。その後ボルコンスキイ公爵は病に倒れ、マリアが最期を看取る。父の埋葬後マリアは、偶然出会ったニコライに助けられ、フランス軍の迫る領地から避難する。戦線が国内に広がる中、ピエールは戦地に赴くことを決意。決戦前夜ピエールはアンドレイと再会する…。

マリアは地味キャラでナターシャと対極にいるのだが、重要人物の一人です。ロシア的宗教観を持つ人物として、マリアの名を与えられているだけあって献身的な女性の理想像だと思う。そこがトルストイの文学の限界のように思えてしまうがマリアは幸薄い感じで苦労が耐えない(マリアのモデルはトルストイの母親らしい。心は素晴らしいが顔がちょっとという役)。何故か父親にも嫌われているのが、もっと明るい(白い)服を着てくれという言葉に涙が出る。

相変わらずの足手まといのピエールだったが、憎めない陽キャラだと思う。アンドレイの方が陰キャラ。そういう陽と陰の対象も上手いストーリーです(原作がやっぱ凄いのだ)。ただアンドレイは原田泰造に似ている。

第7回

1812年8月26日、ボロジノの戦いが始まる。ピエールは戦場で悲惨な光景を目の当たりにし、衝撃を受ける。砲弾で負傷したアンドレイは、運び込まれた病院で瀕死のアナトールと再会する。フランス軍がモスクワに入り、ロストフ家は負傷兵を援助しつつ都から避難する。ナポレオン殺害の決意とともにモスクワに残ったピエールは、放火犯と間違われフランス軍に捕まってしまう。避難の途中、ナターシャはアンドレイと再会を果たすが…。

BBCは金かけているよ。戦争の負傷兵のリアルさとか火事のシーンとか。ナポレオンによってモスクワが火だるまになるところ。アンドレイは負傷兵としてナターシャの家に運び込まれて最期をとげる。アンドレイは金も名誉もモテ男なのに不幸だよな。最期はハエに心を寄せて。

アンドレイのお別れのシーン。山場です。結局はナターシャのことを許せたのか許せなかったのかよくわからないな。まあ理解は出来たのか?自分がナターシャを側に置いて上げられなかった。それは最初の妻と同じ過ちだった。愛より名誉を取ったのだ。それも父に逆らえず。その辺りがアンドレイの悲劇なのだろう。

ピエールは占領されたモスクワの自宅で敵将と酒を飲んだり捕虜になったり、忙しい。ドラマとしては、ピエールの遍歴物語なのだが。

第8回

フランス軍の捕虜となったピエールは、同じく捕虜となった農民出身の兵士プラトン・カラターエフと親しくなり、素朴な彼から人生について多くを学ぶ。冬が近づきモスクワからの撤退を始めるフランス軍。ピエール達も厳しい行軍を強いられ、プラトンはその最中命を落とす。デニーソフ、ドーロホフ率いるロシア軍部隊に救われ九死に一生を得るピエール。戦争が終わり、苦しみを経験し生まれ変わった彼は、遂にナターシャに愛を告白する…。

ピエールの農民エピソード。ここは重要なんだが最終回だからあっさり通り過ぎてしまう。原作はどうなんだろう?

ナターシャに今頃告白するなよと思ってしまう。奥手なんで。ほとんど一目惚れだった。それでも憎めないキャラになっている。日本だと誰かな?


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