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年末までバッハ「マタイ受難曲」を聴いていた

『マタイ受難曲 』礒山雅(ちくま学芸文庫)

荘厳な響きと、雄大な構想により、西洋音楽の歴史において圧倒的な存在感を誇ってきた“マタイ受難曲”。イエスの捕縛から十字架刑、そして復活までの物語を描いたこの作品には、罪を、死を、犠牲を、救済をめぐる人間のドラマがあり、音楽としての価値を超えて、存在そのものの深みに迫ってゆく力がある。いまなお演奏ごとに、そして鑑賞のごとに新たなメッセージが発見され続ける、すぐれて現代的なテーマを秘めている。バッハ研究の第一人者が、バッハの手書き譜や所蔵していた神学書など膨大な資料を渉猟し、ひとつひとつの曲を緻密に分析して本国での演奏にまで影響を与えた古典的名著。

何年か前に、クリスマスにETVでバッハ『マタイ受難曲』の(鈴木雅明指揮)演奏を見て以来、ここ数年バッハ『マタイ受難曲』(フィリップ・へヴァレへ指揮)の演奏アルバムを聴いていたが、輸入盤ということもあって内容はよくわかっていなかった。それで解説本が出ていると知って読んでみた。

最初の始まりがイエスの十字架徒刑の行進のシーンだと知って驚いた。そう思うとあの重だるい印象は理解できるのだが、あの出だしが強烈な印象を残しているということはある。それでも全体的には優しく包まれる感じなのは、女性声楽や子供合唱が多いからだろうか?だからクリスマスに聴きたくなる?

二部の冒頭アリアでは、イエスと対話するのが花嫁とされていて、雅歌からの引用だという。イエスが極刑になるところなのに、美しい女性の花嫁との婚姻の歌(天国に召される意味だが)のアリア。最初はバス(男性)だったのが、アルト(女性)になったとか。

ルター派というのも関連しているようだ。12使徒が率先して先導していくパターンよりもより民衆的。12使徒の存在が「シオンの娘たち」の存在で薄められているように思える。聖書的なユダの裏切りとかペテロの知らんぷりとか事件はあるのだが。

パゾリーニ『奇跡の丘』をGYAOで無料公開しているので観たのだが、パゾリーニの過激さもあるのだが、12使徒が男ばかりで、彼らが率先してイエスの教えを追従する。カルト宗教の原理主義らしさがよく出た映画だとは思うが女子供はあとから追従する男優位世界なのだ。最初に悪魔との対話(決別)で神の子イエスの絶対性があるのだが。

パゾリーニ『奇跡の丘』 https://gyao.yahoo.co.jp/episode/5f72fe1e-2a79-4d9e-a75b-392fe10a3c35?source=external.twitter.share.wide #GYAO #GYAOで無料配信中

礒山雅の解説は、バッハが参考にしたルター派の書籍やら歌詞を書いた風刺詩人ビカンダーとの共同作業についても述べているのが興味深い。

あと楽譜や音楽的には専門的なので初心者向けではない。ただ対訳が出ているので、それを読むだけでも『マタイ受難曲』の内容を理解できる。それと楽器の意味的なこととかの各パートの聴き所も丁寧に説明されていて、より『マタイ受難曲』を聴きたくなる。この本を読みながら聴いていたのは、小澤征爾指揮サイトウ・キネン・オーケストラの演奏。日本語表記なので、対称しやすかった。



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