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ポーは文体七変化だから読みにくい。

『ポー名作集』エドガー・アラン・ポー【訳】丸谷 才一(中公文庫)

理性と夢幻、不安と狂気が綾なす美の世界――短篇の名手ポーの代表的傑作「モルグ街の殺人」「黄金虫」「黒猫」「アシャー館の崩壊」全八篇を格調高い丸谷訳でおさめる。

Netflixでドラマ『アッシャー家の崩壊』を観て原作はどんな話だっけ、と思って再読。最初は創元推理文庫で読んだのだが、いまいち分からなくて丸谷才一訳で。『アッシャー家の崩壊』はだれが訳してもわからないように書かれていた。ポーの特徴として理性の分析展開かと思うと感性の霊的な結末が待っている。そんな中で『モルグ街~』から始まるデュパン・シリーズは推理小説の手本とされるもの(ただラストはそんなのありという展開)。比較的この名作集には有名作が揃っている。一番面白いかったのは『黄金虫』か『黒猫』か?

『モルグ街の殺人』

密室殺人の推理小説。アニメでもよくあるパターンだが、理性的解決方法を手玉に取るような野生の思考。ポーが読みにくいとおもってしまうのは、理性的分析描写だった。アリストテレスの論理学というような、そして解決はプラトン(イデア)的なんだと思う。洞窟の中の影絵の世界。それは人間に対する自然ということなのか。

『盗まれた手紙』

この勘違いはだれでも経験することだと思う。眼の前のものが見えなく、他を探してしまう。探しものはなかなか見つからないのにあるときふっと現れたりする。あれはなんなんだろう?ポーは誰もが日常では経験することを短編小説として特異な世界として描いていく。

『マリー・ロジェの謎』

事件を混乱させるのはスキャンダラス報道のマスコミだったりする。ポーは当時からそういうスキャンダラス報道の闇を描いていたのだ。これはけっこう読むのに苦労したのだが、あるある世界だった。

『お前が犯人だ』

びっくり箱小説で面白かった。突然、怖いものが出現するホラーの原型か?

『黄金虫』

「黄金探索」に暗号文を絡ませたミステリー。大岡昇平は『野火』でジャングルの描写とか参考にしたとか。不思議世界なんだけど暗号解読とかあって面白い(これが一番、推理小説らしい)。ただ小説は浪漫小説というような。

『スフィンクス』

怪奇もの。

『黒猫』

これはポーが一番らしい感じがする。アル中のDVという現代にもある展開だ。

『アッシャー家の崩壊』

妹と近親相姦的なプラトニックな感じなんだが、展開はどうしようもない兄だった。妄想か幻想かわからないように描かれている。ネットフリックのドラマもホラーになっているけど面白い。


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