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「戦略」とは何か ~ ミスミ 三枝氏の教え

日頃、この言葉が出てきたら「要注意」と思っている言葉がいくつかあります。最近の流行で言えばDXやSDGs。従来からあるもので言えばPDCA、報連相などでしょうか。いずれもそれぞれの言葉が示すコンセプトを否定するものではありませんが、その有用なコンセプトがために言葉自体が多用されており、中身のない議論や実質的な内容のない主張がその後続くことが、ままあると感じているためです。そういう言葉の一つに「戦略」があります。この言葉も他の言葉と同様に、何となくカッコよく、それっぽい感じの雰囲気を作り出すことができる魔法の言葉です 笑

ビジネスでこの言葉を使える場面は幅広く、経営戦略から始まり、組織戦略、人事戦略、マーケティング戦略、営業戦略などなど、なんでも戦略とつければそれっぽくなる効用が得られます。しかし、それぞれの「戦略」が本当に戦略の名に値するかどうかは玉石混交(どちらかというと石の方が多い)と言わざるを得ません。よくあるのが、富裕層を開拓することが当社のマーケティング戦略だ、とか、30億円の売上を達成することが事業戦略だ、とかいった、目標のみを呈示して戦略と言っているケース。富裕層開拓のために、富裕層向けメディアに広告をこれだけ出していく、というところまで行けばまだましな方ですが、それでも、それを「戦略」と言いますかね、と首をかしげたくなるところです。

企業がビジネスの場面で戦略というのであれば、Where / What / Howは押さえたいところ。先ほどの例で言えば、富裕層を開拓するというWhereということや、富裕層向けメディアへの広告露出だけでなく、競合状況を踏まえてこういった商品を出して競合と勝負し (What)、こういう訴求をこういうチャネルを通じて行なっていくことでどういう富裕層へメッセージを届けるか (How) 、そこまで考えて、初めて戦略です。先ほどの例で言えば、富裕層を攻める、というだけで終わっていては、「戦略がある」というよりは、これからそこを攻めるための戦略を立てなければならない、という段階だということです。そして、このレベルで戦略と呼んでいる人たちは多くの場合、そこを検討するには至らないという残念なことになります。

ミスミの三枝氏は、「戦略経営」を標榜しているだけあって、非常に明確に戦略とは何かを語っていました。非常に素晴らしい定義をしてくれているのですが、彼の定義をそのままを書くと、著作権の侵害に当たるかもしれませんので(→ だって社内研修で配布していた資料には三枝氏のコピーライトと記載ありましたので 笑)、エッセンスを書きますと、以下のようになります。

  • 戦略とは勝つための仮説を長期シナリオとして組織内に示すもので、組織のベクトル合わせをするためのもの

  • 仮説構築にあたっては
    - 市場・競合・自社の状況からKSFを見極め
    - KSFをクリアするための選択肢の策定
    - 与えられている時間軸、リソースとリスクバランスから選択
    というプロセスを踏む

仮説構築のところはコンサルタントが戦略構築のプロジェクトでやっている作業そのものです。前段のところで、こういうことをやっていくんだぞ、という現時点で考えている勝利の方程式を共有する、ということが戦略の目的、ということですね。そして、この勝利の方程式を明示できないのは後段の分析〜考察が弱いからではあります。しっかりした分析と仮説でどれくらい踏み込めるかが勝利の方程式の説得力を決め、その勝利の方程式の説得力が戦略としての輝き、ひいては組織のベクトル合わせの強さを決めていくのです。


(余談) ちなみに冒頭の絵は、Chat GPTで「現代のオフィスの会議室で諸葛孔明がパワーポイントとホワイトボードを使いながら戦略を説明しているのを将軍たちが聞いている」というのを書いてもらったものです。それ、諸葛孔明か? というのはさておき。

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