「声優夫婦の甘くない生活」
2019年作品
小津監督ならどんなリメイクをする
2020/12/28 17:08 by さくらんぼ（修正あり）

（　引用している他の作品も含め、私のレビューはすべて「ネタバレ」のつもりでお読みください。）

色温度が低いというのでしょうか、スクリーンが暖色系の色合いでほっとします。

決して幸福とは言えない老夫婦を描いているのですが、どこか世界観にも「ぬくもり」があって居心地が良いのです。そして、失礼ながらお芝居がお上手です。

（　 ちなみに、「居心地が悪い映画は？」と聞かれれば、寒々とした映画「ロボコップ」を挙げたいと思います。褒めてます。）

しみじみと「なんか良い映画だった」と思える８８分でした。

★★★★

追記 （ 観客の数ほど映画の感想はある ） 
2020/12/30 16:34 by さくらんぼ

映画の冒頭、移民が乗る飛行機がイスラエルに到着するシーンがあります。

乗客は立ち上がり、ドアが開く瞬間を凝視していました。

その目、目、目。

しかし、彼らが観ている景色は同一でも、脳裏によぎっている景色は一人一人違うはずです。

映画館でたくさんの観客が同じ映画を観ていても、感想がまちまちなのと同じで。

この映画「声優夫婦の甘くない生活」はそれを描いていたのではないでしょうか。

主人公は、母国・ソ連ではスター声優夫婦でした。

日本でも同じだと思いますが、俳優さんと違い、声優さんはスターであっても、お顔までは、中々世の中に知られていません。

観客はそれぞれにイメージを膨らませて映画を観ています。そのことも連想しますね。

しかし、黒子のような存在の声優さんにも、人間臭い人生があるわけです。

この映画は、それを見せてくれました。

追記Ⅱ （ 声優はマスクをした俳優のよう ） 
2020/12/30 16:40 by さくらんぼ

映画館にいる声優の主人公夫婦。

少し後ろには、フセインからのBC兵器攻撃を恐れた住民がガスマスクをしています。この「マスクで誰だか分からなくなった状態」が、声優の存在なのでしょう。

追記Ⅲ （ 「ほんとうの声」 ） 
2020/12/31 9:00 by さくらんぼ

映画のチラシに「ほんとうの声、聴こえてますか？」とのキャッチコピーがあります。

声優さんは映画の登場人物を演じるだけで、自分の言葉で語っているわけではありません。

（　 俳優さんも同様ですが、とりあえず、それには触れません。 もしかしたら黒子という意味で、声優さんにスポットライトを当てたのかもしれませんね。 ）

では、声優さんの「ほんとうの声」はどうなのでしょう。

移民の皆さんも、例えばコンビニの店員さんを演じているだけで、自分の言葉（言語・本音）を語っているわけではありません。

では、移民の皆さんの「ほんとうの声」はどうなのでしょう。

チラシから推測すれば、この作品の集束点はそこなのかもしれません。

追記Ⅳ （ 「ほんとうの声」② ） 
2020/12/31 9:14 by さくらんぼ

後半、イスラエルにフセインからのミサイル攻撃があり、喧嘩別れした妻が心配になった夫は、ガスマスクを手に探し回ります。

そして、やっと見つけた妻の顔に、有無を言わせずガスマスクをつけるのですが、その時、空気穴みたいな栓を外すのを忘れたので、妻は呼吸も会話もできず苦しみました。

それに気づいた夫は、ポンと栓を抜き、やっと妻の声が聞こえたのです。

このエピソードも「ほんとうの声」を補完するものだったのでしょう。

追記Ⅴ　2022.4.26　（　お借りした画像は　）

キーワード「移民」でご縁がありました。笑顔はなごみます。無加工です。ありがとうございました。

（　最後までお読みいただき、ありがとうございました。　

更新されたときは「今週までのパレット」でお知らせします。）