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海外大を考えるということ

はじめに

はじめまして、アプカです。中学受験して入った進学校を高校で中退してアメリカの高校に入学し、現在 University of California, Berkeley (以下UCB)で勉学に励んでいる日本人です。このタイトルを見て記事を開いたということは海外大学ひいてはその受験について興味を持っていることかと思います。まだまだ勉強中の身なので大学卒業後のことはわからないのですが、ここに至るまでの経験から「何をもって海外大を選ぶのか」「どう海外大を受験すればいいのか」という二点については語ることができます。

1.海外大に行く理由

海外大受験をするにあたってまず考えなければならないのはなぜ海外で学ばないといけないのか、です。「なんとなく留学してみたい」ではいけないのです。大学で何をしたいのか。大学を出た後どうしたいのか。この二点をしっかり自覚していない限り受験しても受かることはないでしょう。アメリカの受験にはエッセーがあり、ほぼ必ず「なぜウチを?」と聞かれます。このエッセーは受験において最も重要であり「御社のグローバルな姿勢に惹かれました」みたいな就活にありがちな定型文では確実に落ちます。また、せっかく海外大に行けても何もやることがないのでは意味がありません。本当に海外に出るコストに見合った目的を持っているのかしっかり考える必要があります。

2.海外大に行かない理由

海外に出るコスト、といった話をしましたがROIを計算するとなると考えねばならないことが多く実際に行ってみないとわからない部分も多いのが現実です。はっきり言って海外大受験はギャンブルであり、数年がかりで準備しないといけないのに結果がなかなか出ないもどかしい賭けです。ここで海外に出るデメリットを説明しておきたいのはこのギャンブルのリスクがかなり大きくそれに見合ったリターンがない限りとても勧めることができないからです。なぜ海外大を受けるのか。海外大に何を望むのか。コストパフォーマンスを計算していきましょう。

コストといえばお金です。生々しい話になりますが絶対に避けては通れない話題であり海外大に行くにあたって一番大きなコストとなります。アメリカは全てが高額です。まずは授業料から。日本の大学はかなり良心的なお値段です。東大学部生の年間授業料は53万円強であり(東大公式ホームページより)私学でも80万円くらいのものです(文部科学省より)。学生ごときが「80万円くらいのもの」などというのはかなりおこがましい話ではありますがアメリカの大学の授業料を知っていると80万円という数字がかなりかわいく見えます。UCBの年間授業料はカリフォルニアの州民でない限り$44,000、執筆時点の為替で約460万円にものぼります。ニューヨーク州コロンビア大学ともなると授業料だけで年間$61,850、日本円で650万円かかってしまいます。ここにさらに渡航費、寮費、食費、教科書代、娯楽、部費などといった諸費用が乗っかることになります。イギリスの大学もEUの外からくる生徒には多額の授業料を請求する傾向にあります。EU脱退後さらに高額になる可能性もありますが何とも言えない状態です。大学にもよりますが日本人が海外に行くとしたら年間500万円は覚悟しなければならないでしょう。アメリカは奨学金制度がかなり発達しておりほとんどの人が年間500万円の恐怖を回避できるわけですが外国人にはほとんどお金を出したくないのが正直なところで厳しいでしょう。日本にも海外留学するひとのための奨学金制度はありますので目を通してみるといいでしょう。ただ、やはりそこまで奨学金制度が発達しているわけではないのが現状です。また日本に比べマサチューセッツ、ニューヨーク、カリフォルニアといった大都会は物価が非常に高いのも注意が必要です。学生に優しいはずのラーメンが2000円近くすることもあり「フレンチかな?」と思いながらすする日々です。

日本の大学を出ないのも相応のコストになりえます。日本人で海外大学に詳しい人は極めて少なく日本で就職するなら不利になる可能性が十分あることをわかっていないといけません。ハーバードしか知らない人事の人間に「プリンストン?知らないなぁ」といって落とされてはたまりません(プリンストンはハーバードとアメリカで一二を争う名門中の名門にもかかわらず!)。ランキングで大学を語るのは愚者のするところではありますが英国タイムズ紙によれば東京大学は世界36位です。つまり東大の上に35校存在するわけですがこのラインアップをすべて知っている人は日本人でごく少数でしょう。タイムズ紙のものに限らず大学世界ランキングの上位50校くらいに目を通してみて果たしていくつ知っていたでしょうか。考えてもみてください。海外大に興味があるあなたが知っている大学の数より一般企業のおそらく日本から出たことのないひとが一体どれほどわかっているかは疑問です。悲しいはなしではありますがせっかく名門大に入ろうとも日本における就職で不利になる可能性があるということは頭に入れておくべきでしょう。

また海外大を受験する場合日本の受験はほぼあきらめてコミットしなければならないところも大きいでしょう。よく「東大とハーバード両方に受かった」みたいな話を聞きますが非現実的でしょう。相当才能がありよほど自信があるなら日米同時受験してみるのもいいでしょうが二兎追って失敗する事例をそこそこ見てきたからには勧められるものでは決してありません。それほどまでに受験の様式がかけ離れており一方に集中しないといけない場合がほとんどなのです。また、日本の大学が四月始まりなのに対し海外大が九月始まりなのも大きな影響を及ぼします。海外大に晴れて受かり一年行ってみて日本に帰りたくなった場合どうしてもこのズレが重くのしかかってくることになります。海外大に行ったばかりに2年浪人したも同然になる、なんてことにならないようにしなければならないのです。もう少し冷酷な言い方をするならば「決意したからには後悔してはならない」のです。アメリカ大は正直勉強がかなりきつく競争も激しいのでストレスがかかります。日本の友人が「落単しそうだわー」などと呑気なことを言うたびに卒倒しそうなくらい焦ってしまうほど成績に関して敏感になっていきます。大学での成績はインターンシップ、大学院受験、就職と人生のすべてを左右しかねないほど影響の大きいものです。死に物狂いで勉強に励む覚悟がなければ詰みます。「英語を勉強する」などという低次元の話ではないのが海外大です。

3.海外大に行った理由

ここまで海外大に行くデメリットを説明したところで「じゃあなぜこいつはアメリカにいるんだ?」となったことかと思います。僕には(親の影響も大きいですが)これらのディスアドバンテージを考慮したうえでなおアメリカに来たかった理由がありました。ひとえに「研究がしたい」その思いだけで高校を中退しアメリカの高校から受験をすることにしました。日本における研究の何が悪いのかはこの記事の主眼ではないので割愛しますが生物学者として研究をしたい僕にとってアメリカという環境は日本における国籍以外のほぼすべてを置いて行ってもいいと思えるほどに魅力的でした。アメリカに来て4年ほど経ちますが後悔するどころか決断してよかったと心から思っています。生物以外何も誇れない僕ですが2020年米国生物オリンピックの準決勝に進むくらいにはがんばってきました(なお準決勝以降はコロナ禍によって中止と相成りました)。僕にとってリターンはコストに見合うものだったということです。次回の記事は実際にどうやって受験するのかについて話していきますが、この記事が海外大受験をするかどうか決意するきっかけになれば幸いです。くれぐれも受験する本人が他人の干渉なく決断するようおねがいします。読んでくださってありがとうございました。次回もよろしくお願いします。


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