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少年H 下巻/妹尾河童


下巻、読み終わりました。

戦争の渦中の日本、
天皇様の神格化、
あの戦争ってなんだったの?
どんな教科書を読むより、
どんな再現ドラマを見るより、
ずっと本当の戦争がまっすぐな目で見て、綴られる。

苦しくて痛くて、
でも知っておく必要のあるお話だったのです。

本当に、河童さんがこの本を書いておいてくれてよかった。

美化もせず、嘘もつかず、本当にただあったこと、思った事を率直に綴るのって本当に難しい。

中でも主人公Hが終戦直後に感じた5つの質問は、
どう思っていたのか?
戦争を知らない私たちにとっては、
本当に理解がしにくい。

①玉音放送で戦争に負けたことがすぐにわかったか。
②あの戦争は勝つと思っていたか、負けると思っていたか。
③もし負けると思ったなら、いつごろから思っていたか。
④戦争の責任は天皇陛下だと思うか、思わないか。
⑤天皇陛下を神様だと信じていたか。

当時はね、
日本国民は天皇陛下をお守りするために生まれてきたとずっと教育されてきていたそうだし、日本全土が焦土となって全国民が玉砕しても最後の一人まで戦い抜くことを、「カミカゼ」として求められていて、
それをね、新聞でも学校でも政府も近所も、みんながそう言っていたんだから、なにも考えなければ当然、
①戦争に負けたことはわかったし、②正直途中から負けると思っていて、③大規模な空襲を受け、身体的に劣る人も徴兵されるようになったころから危機感はあったけれど、それを周囲に悟られるのは「非国民」になって、④悪いのは天皇陛下御自身ではなくて、戦争に指導した政治犯で、⑤天皇陛下は神様ではないけれど、国の拠り所となる別格な存在だとは思っていた、ってことなんでしょう。

戦時下の、戦後の、空気感が、
なんとはなしに伝わってきて、
戦争がずるずると始まったときの空気も、
皆が一つに熱中する恐怖も、
今ないとも限らなくて怖くなる。

例えば、オリンピックの中止は宣言されないこと。
各国の批判を受けてもなお、NOを言えなくなって追い詰められる首相。
まるで判を捺したようにワクチンさえ打てば大丈夫だと思っている国民。
考える事もなく右へ倣えしてしまうこと。

自分は、原爆投下された都市が、
広島と、もう一つが長崎なことをド忘れしてしまって、
昔よく学んで、自国のことなのにこんな意識なこと。

私は、戦争に行ったのが、ひいおじいちゃんで、戦地へ向かう海で亡くなったと聞くから、決して遠い世界の話じゃなくて、つい最近、昔なんて言えない最近の、自分と地続きの世界で起こったことなのに、どうしてこんなに忘れちゃうんだろうなって怖くなった。

宗教観も、キリスト教にも仏教にも神道にも、日本人らしくごちゃまぜな宗教観だけど、それは自由を手に入れたのか、救いを失ったのか、どっちなんだろう。

目の化け物に追われる夢を見て、
制御できない凶暴な自分に恐れることが、
だれにもあることにも安堵したり。

最後まで読んで、
何度も読んで、
自分で考えよう、
なんでだったか考えよう、知ろうって、そう思えるたいせつなお話。

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