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何も起こらない(展開がない)映画について

今回は、映画『パターソン』の鑑賞記録。大まかなあらすじはこんな感じです。

ニュージャージー州パターソンに住むバス運転手のパターソン(アダム・ドライバー)。彼の1日は朝、隣に眠る妻ローラ(ゴルシフテ・ファラハニ)にキスをして始まる。いつものように仕事に向かい、乗務をこなす中で、心に浮かぶ詩を秘密のノートに書きとめていく。帰宅して妻と夕食を取り、愛犬マーヴィンと夜の散歩。バーへ立ち寄り、1杯だけ飲んで帰宅しローラの隣で眠りにつく。そんな一見代わり映えのしない毎日。パターソンの日々を、ユニークな人々との交流と、思いがけない出会いと共に描く、ユーモアと優しさに溢れた7日間の物語。

主演のアダム・ドライバーはNetflixオリジナルの『マリッジストーリー』という映画でも主演を務める、一度顔を見たら絶対に忘れないな、という俳優さんで、僕が大好きな俳優の1人です。


この映画、個人的には大満足の内容で、観終わった後はなんとも言葉に表しにくい、けれど確実に”良い”気分になれる映画だな、と思います。ゆったりと物語が進み、けれど独特なテンポで。皮肉があり、ニヤッと笑ってしまうシーンが数多くあるこの映画。

その”良い”気分を作り出す要素としてまず第一にあげたいのは、パターソンの愛犬であるイングリッシュ・ブルドッグのマーヴィンの存在。犬が出演している映画、というだけで 僕にとっては相当高得点ではあるんですが、マーヴィンは個人的に歴代映画に出演する犬の中でもトップ3には入るくらいのベストオブドックでした。


まるで文句を言っているかのようにブヒブヒ喋り、夜のパターソンとの散歩が大好きで、散歩の途中で毎回barに立ち寄るパターソンを、店先で待つ姿はなんとも言えない愛くるしさがあります。実はこのマーヴィン役を演じた名犬ネリー、カンヌ国際映画祭ですばらしい演技を披露した俳優犬に贈られるパルム・ドッグ賞を受賞しており、まだ観たことのない方は彼女の演技にも注目してみてみてください。


そして、もう一つの要素がタイトルにもした、何も起こらない映画である、ということです。今回の映画を観終わったあと、ふと自分はこの類の映画が好きなことに気付き、ただ、具体的にどんなところが好きなのかはよくわからずにいました。
そこで、少し考えてみましたが、自分はきっと、展開のない、いわゆる”何も起こらない”映画が好きであることがはっきりわかりました。今作もバス運転手の主人公、パターソンの1週間を描いた、特にはっきりとした起承転結がある映画ではないと思います。
しかしながら、その中にふとした幸せを見つけることができたり、何より、大きな事件や出来事がないことによって、ストーリー以外の細部にも目がいくような気がします。
例えば、劇中でパターソンが毎日使っているお弁当箱。彼は毎日家から、職場まで徒歩で通勤しますが、手に持つのは大きめのお弁当箱一つだけ。このお弁当箱がまた、めちゃめちゃにかっこいいんです。


他にも、映画の舞台となったニュージャージー州の美しい風景や、パターソンが通うbarに置いてあるジュークボックスや、barの端で二人でチェスをするシーンなどなど。
きっと激しく物語が展開される映画だったら気付かないであろう細部に宿る美しさやかっこよさがこの映画には沢山あるのだと思います。


ハラハラドキドキするアクションや、展開が読めないミステリーも良いですが、僕は平和な何も起こらない映画も大好きです。

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