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The Can,the smaller the better (短編小説)

佐潟村には商店などひとつしか無く
もう夕間暮れ
牛蛙が鳴き
煮炊きの匂いがする
まだ畔道だった道を
父の使いでよくかよったものです


亡くなった母は
午前のうちに小豆を炊き
よくお汁粉を作りました
独りになった今も
父はそれが忘れられず
あの道を通い
ツルハドラッグで買った
小豆の缶詰で
お汁粉を作っています
一缶を使い切ると多くなるので
八使って、二あまします
次の日も
八使って、二余す
余した二から使えばよいのに
父は
余した二を使えば
今開けたのを六しか使えず
二余すはずが
四余す
と言って
二余します


小さければ小さいほど缶詰はいい、

身を切るような冷たい朝のお勝手で
父の背中は丸くすぼまり
二余したのち、
二捨てるのです

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