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【映画みたいな恋の話】①出会い

春の訪れとともに、私はある人に恋をした。
これから少しずつ、彼との出会いからその後について綴っていこうと思う。


もうすぐ桜が咲きそうな、でも少し肌寒い空の下、わたしは好きな絵画作品を見に、美術館へ出かけた。

普段ほとんど行かない街なので、帰り道はスマホを持たずに街を散策しながら、気になったお店に入って新たなものとの出会いを楽しんだ。

一杯、お酒を飲んで帰ろうか。
そんな気分に連れられて、とあるバーに1人で立ち寄った。
橙色の暖かな光と静かに流れるJazzナンバー。そんな雰囲気を勝手に想像していたのだけれど、扉の向こうからは楽しそうな会話が聞こえてくる。しかも、英語だ。

英語を話すことができるとはいえ、少し躊躇する。でもせっかくここまで来たんだし…
勇気を持ってえいや!と扉を開けた。

そこには合計5人の外国人観光客がいた。

マスターは気を使って、日本人である私を彼らから少し遠ざけた席に座らせてくれた。
少し、マスターと話をする。
わたしがバーで働いていること。
どんなお酒が好きかということ。
会話の中から好みを把握して、飲んだことのないお酒を提案してもらった。

SMOKE HEAD TWISTED STOUT

ピートの香りが大好きなわたしにぴったりの、濃厚な味わいだった。

ウイスキーを飲みながら、外国人たちの会話に耳を傾ける。旅行中の出来事を話しているようで、とても楽しそうだった。

その時、ちょうど曲がり角に座っている男性と目が合った。思わず微笑み "Hi" と声をかける。

彼らに話を聞くと、5人のうち2人はカップルでNYから、3人は姉夫婦と弟の組み合わせでNYとLAから別々に来たのだという。

軽く自己紹介をしたあと、私は目が合った男性ではなく、隣に座っていた男性と話を始めた。

これが、彼と私の出会いだ。


まずはお互いに自己紹介から。
どの地域出身なのか、どんな仕事をしているのか、どんなことに興味があるか…
どんな話題でも、話が尽きなかった。

彼はとても傾聴力が高く、英単語が思い出せないわたしを優しく見守ってくれたので、安心して話をすることができた。

そして彼はとてもあたたかな、聞いていて落ち着く低い声の持ち主だったので、すぐに緊張がほぐれた。

話し始めること数時間。
その間に彼のお姉さん夫婦と、居合わせたNYカップルは帰ってしまい、いつのまにか2人になっていた。

でもまだ話し足りない感じがしたので、場所を移すことにした。

彼は一旦、宿泊しているAirBに戻りシャワーを浴びたいという。
…あとで話を聞いたところ、彼はその日に日本へ到着したばかりで、ものすごく眠かったそうな。
それでもわたしと話をし続けたかったから、気合を入れに帰ったらしい(笑)

もう一度合流して、一緒に新宿へ。
彼は日本が初めてだったので、東京の名物っぽい新宿の街並みと、わたしのお気に入りの場所を紹介して歩いた。

一通り見た後はウイスキーが飲めるバーへ。
わたしの好みに付き合わせてまたピートの強いウイスキーを一緒に飲んだ(笑)

時間はあっという間に過ぎていくもので、ついに終電の時間を迎えた。

新宿駅の改札前で挨拶代わりのハグをしていると、酔った女の子が「写真撮りましょうか〜??」と言いながら近づいてきた。

わたしたち、全然まだそんな関係じゃないんだけど…と少し戸惑いながら、でも意識するきっかけにはなったと思う。
彼はこの時、キスをしていいのかどうなのか、わからず迷っていたらしい。

ここから私たちのjourneyが始まっていくなんて、この時は考えてもいなかった。

(つづく)

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