『何故』488字
私は長年の疑問をはらすべく、アラブの高名なラクダ使いを訪れた。
「なぜラクダには、ヒトコブラクダとフタコブラクダがいるのでしょう」
ラクダ使いは無言だった。
だが、私はあきらめなかった。
なおも問いを繰り返しすと、ラクダ使いは根負けしたようにタメ息をつき、私に待つように言うとどこかへ出て行った。
しばらく待っていると、ラクダ使いはヒトコブラクダとフタコブラクダを一匹ずつ、つれてきた。
そして、背中あわせに寝かせると、ヒトコブラクダの腹側にまわって言った。
「ワシはこっちから押すから……アンタはそっち側から押しなさい」
言われるまま、私はフタコブラクダの腹側を全力で押した。同時にラクダ使いはヒトコブラクダの腹を押す。
両側から押すと、なんとラクダのお互いのコブがガッチリはまり、抜けなくなった。
すると、ヒトコブラクダはフタコブラクダを担いだままアッサリと立ち上がった。
担がれているフタコブラクダは、4本の足をピンと伸ばしたまま、騒ぐ様子はない。
そしてヒトコブラクダは、何事もなかったかのように歩き出した。
二匹のラクダは、私とラクダ使いが見守る中、遠くの砂丘を越えて見えなくなった。
(了)
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