この瞬間を記憶しておくべきなのだろうか
「記憶」というものの倫理的地位について最近よく考えている。一般に記憶は良いこととされる。何かを覚えているということは賞賛されることであるし、何か良いことが起きた時にはこの瞬間をいつまでも覚えておきたいなどと思うのが自然であったりする。
過去の事柄を覚えているということが今の私たちにとって概して良いことであるというのは自明であるだろう。家族の名を覚えているから家族のことを愛情込めて呼ぶことができるのだし、レシピを覚えているからサッと料理を作れるのであるし、言葉を覚えているから