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各社の自社養成パイロット試験の比較と一般的な試験対策 -2023年版-

(**2023/11にエアドゥの情報を追記しました!まだ概要段階ですが、要チェックです!!)

こんにちは、あらいぐま機長です!
今日は自社養成パイロットの試験について、各社の最近の試験の内容と僕が考える対策としてできることを説明します。対策と行っても一朝一夕でできるものではありません。しっかりと計画をたてて、凄まじい努力をしたとしても合格する可能性が少し上がるくらいかな、そんなレベルの試験です。

僕がアニマル航空に入ったのはもう10年以上も前の話ですが、実は僕もこの自社養成でパイロットになっています。ふふふ、実は優秀なんですよ…って言いたいとこですが、完全に運ですね。先のnote、『パイロットになる方法』でも説明しましたが、自社養成はその倍率が凄まじいまでに高くなるので、実力云々の世界じゃなくなっていると思います。
そういうこともあってパイロットのなる上では最難関ですが、チャレンジしがいのある試験だと思います。なんせ本来ならば結構なお金がかかる訓練をお給料をもらいながらさせてもらえるんですからね!

Youtube動画でも自社養成パイロットについて解説していますが、今日は有料noteということでより詳しい情報をお伝えしたいと思います。
しかし公式採用Pageにある以上の試験の内容など、会社の内部情報に関わる部分は公開できませんのでご注意ください。

このnoteを読むことで自社養成パイロットとはどういうものなのか、誰が受験できてどんなことを準備していかないといけないのか、その大枠がわかるようになると思います。逆にもう大体のことはわかっていて、具体的な試験の情報や対策を知りたいという人は購入を控えて欲しいと思います。


自社養成パイロットとは

まずは自社養成パイロットとは何かについて説明しておきましょう。

自社養成パイロットとは、ひと言で言うとANAやJALなどの大手航空会社を始めとするエアラインが、一般の大学生をパイロットの候補生として採用して、本来は多額の費用がかかるパイロットの訓練を会社のお金をかけてさせてもらえるというシステムです。通常であれば1500万円から2000万円かかる訓練費用を会社が出してくれて、さらにお給料までもらえるんだから受験生にとってはぶっちぎりでお得なシステムです!

しかし、だからこそ人気が殺到してその合格倍率は100倍を超えたりします。『我こそは』と思う人、『受かったらラッキー』くらいで受ける人、たくさんの人が受験します。

大手航空会社は基本的にこの採用を行なっていますが、タイミングによっては他の中小クラスの航空会社も自社養成パイロットの採用を行うことがあるので、アンテナを貼っておいてちょこちょこエアラインの採用情報を見るなりするのが賢明です。僕もできるだけこのnoteでそういう情報は発信していきたいと思います。

また一般の大学生と言いましたが、これも会社によって、また時代によってまちまちなところがあります。現在は大学や大学院の新卒、準新卒の人を対象にしているところが多いですが、会社によっては高卒でもOKとかがあります。

僕がこの自社養成の訓練をしていた時は入社から副操縦士昇格まで5年くらいかかりました。

自社養成パイロットに合格後、エアラインに入社したあとまずは一年前後、会社の地上研修をします。その後訓練に入った後は日本で事業用操縦士の学科試験をとって、海外の訓練所に行って実機を使った飛行訓練を行い、実技試験に合格して日本に帰国。ここまでで3-4年くらいでしょうか。その後はB777など大型ジェット機のフライトシミュレーターによるトレーニングを行い、その飛行機の型式の限定を取得。さらに路線での副操縦士業務のOJTを行い、最後の審査を受けて晴れて副操縦士としてデビューできるという流れです。長い長い道のりですね。

今は大手航空会社ではエアラインのパイロットに特化したMPL(Multi-crew Pilot Licence):准定期運送用操縦士 という資格を使って副操縦士としてフライトをするようになってきたので、訓練期間は大幅に短縮されて、2-3年で副操縦士へ昇格できるようになっています。下積みの長かった僕からするとちょっと羨ましいですね!

引用:ANA MPL訓練

しかし訓練の難易度としては変わりません。訓練もきついし、審査もきつい。途中でパイロットとしての適性なしと判断されると他の職種へ配置転換されてしまう『フェイル』というシステムがあり、これが航空大を除いた他の道と比べて厳しいところでもあります。

各社受験資格

ここでは直近で自社養成をやっていたエアライン、また現在募集中のエアラインの受験資格を見てみましょう!
これらは2023年7月現在のDataです。現在は募集していないものもありますが、いつ開始となるかわからないので定期的に採用ホームページをチェックするようにしてください。

また会社によって、また年度によって細かい応募条件は変わるので、必ず自分で最新の情報を確認するようにしてください。
参考までに去年度の採用ページのリンクを貼っておきます。また以下に出てくる画像は全てこれらHPから引用しています。

ANA採用ページ
JAL採用ページ
ANA wings採用ページ
Skymark採用ページ
J-AIR採用ページ
エアドゥ採用ページ

では各社の受験資格を見ていきましょう。

ANA

ANA応募資格

ANAの方はだいぶ簡素になっていますね。
新卒と準新卒で4年制の大学、大学院または高等専門学校専攻科を卒業・卒業見込みの人が対象で、文系理系も問わないと書いてあるだけですね。

しかしFAQにおいて事業用操縦士のライセンスを所持している人は応募できないと書いてあります。これは後に出てくるJALも同様のようです。

次にJALの方はどうでしょうか?

JAL

JAL応募資格

JALの条件も似たようなもので大学、大学院、高専専攻科の新卒と準新卒を対象としていて、さらに身体条件として視力の基準が明記されていますね。特記としては
・各眼の矯正視力(眼鏡・コンタクトレンズ着用可)が1.0以上であること(裸眼視力の条件なし)
・各眼の屈折度が-6.0~+2.0ジオプトリー内であること(オルソケラトロジーを6カ月以内に受けていないこと)

という条件があることでしょうか。
今度別のnoteで紹介したいと思いますが、パイロットは航空身体検査というものを毎年受けてそれに合格しないとフライトを続けることができないので、入社試験において航空身体検査を受けないといけないし、応募の基準も厳しくしているということですね。またJALは既卒での自社養成の応募も過去に行なっています。応募資格は以下のようになっていますね。

JAL既卒応募資格

これを見ると大学、大学院、高専の卒業資格を持つ人を対象にして、30歳程度までと書いていますね!これはとても大きなチャンスだと思います。

次は大手以外のエアラインを見ていきましょう。

ANA WINGS

ANA WINGSというのはANAの子会社で、今回僕もリサーチしてみて初めて自社養成をやっていることを知りました。
機材はボーイング737-800とボンバルディアDHC8-Q400という機材を保有していて、日本国内で多くの空港に飛行機を飛ばしています。

ANA WINGS路線図
B737-800:引用Boing
DHC8-Q400:引用元

ではANA WINGSの応募資格を見てみましょう。

ANA WINGS応募資格

ANA WINGSも卒業、修了している、もしくは見込みの方(社会人含む)という書き方をしてありますね。つまりは既卒でもOKということです。
僕が受験していた頃は自社養成といえば新卒のみの採用で、受験資格を得るために大学院に進むという人もいたくらいなんですよ。

Skymark

Skymark応募資格

Skymarkは4年制大学または大学院の新卒を対象としていますね。以前は既卒も対象になっていたので、今後変わる可能性はあるでしょう。
またこちらも身体条件が定められていて、特記としては
・各眼の裸眼視力または矯正視力(眼鏡・コンタクトレンズ着用可)が0.7以上、両眼で1.0以上であること。
・各眼の屈折度が±4.75ジオプトリ―内であること。(オルソケラトラジーを6ヶ月以内に受けていないこと)

また英語の能力の目安として
・TOEIC 700点以上
・IELTS 5.5以上
・TOEFL iBT 75以上
という基準が設けられています。

J-AIR

J-AIR応募資格

うーん、J-AIRも既卒で30歳程度の方まで対象になっていますね。これは心躍る人が多いんじゃないでしょうか。
他の会社と同じように眼の基準があるのと、英語と無線資格についても書いています。

入社の要件として、2024年3月末までに、「豪州入国にかかる英語要件充足のためのIELTSスコア取得」「航空無線通信士の資格取得」
とありますね。IELTSとはTOEICなどと同じような国際的な英語能力試験で、TOEICとはまた問題の傾向が違うので勉強が必要になります。

Peach

Peachは自社養成とはちょっと違って、訓練費用は一部を会社が負担してくれるパイロットチャレンジ制度という建付になっているようです。

Peachチャレンジ制度

約1460万円(2022年度実績)の支払いは自費で行う代わりに、会社は約550万円を支給してくれるみたいですね。
とはいえ約1000万円の持ち出しですか。。上の4社の方が魅了的には映りますね。では応募資格を見てみましょう。

peach応募資格

(1)4年制大学に2年以上在学している方。
(2)専門学校、短期大学、高等専門学校、4年制大学を卒業、または大学院を修了した方。
となっていて、(1)の条件については航空大学校の受験資格に似ている形になりますね。

また各社と同様に視力、語学力の要求があります。

AIRDO(*2023/11追記)

エアドゥが初めての自社養成の募集を発表しました!
ANAのFCATや訓練所を使って訓練するようです。

引用:AIRDO自社養成特設サイト
引用:AIRDO自社養成特設サイト

まだ応募条件は公開されていませんが、訓練にかかる費用は候補生とエアドゥそれぞれにおいて負担予定。またクラウドファンディングで訓練費用の支援募集を実施する予定みたいですね!もうFCATのエントリーは始まっているので、受験を希望する人はしっかりと準備して臨みましょう!

まとめると

①学歴・年齢:大学や大学院の新卒と準新卒、会社によっては既卒で30歳程度まで、また高専卒もOK
②身体条件:矯正後の視力で各眼0.7以上 or 1.0以上 両眼で1.0 屈折度の制限がある(会社によって幅あり)
③会社によっては事業用操縦士などパイロットの資格を持っていないこと
④会社によっては英語能力の制限

ということになりそうですね。③の「何でパイロットの資格を持ってたら受けられないの?」という疑問が出てきそうですね。
この理由は諸説ありますが、僕が思うには自社養成の訓練では航空局に出した訓練計画をもとに訓練を行います。ここで国の訓練要領基準みたいなのが厳しく定められていて、『無資格者の場合のカリキュラム』みたいな感じになっているんですよ。

だからすでにライセンスを持っている人に対してはみんなと同じ訓練をすることができません。そのため受験資格を失ってしまうということだと思います。

では次に試験の内容に行ってみましょう!

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