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極貧詩 328             旅立ち⑬

貧乏の星のもとに生まれた三羽烏
俺、シゲちゃん、ヤッちゃん
生まれてから今の今までついて回った貧困

小学生時代「貧乏」を意識し始めたのは2,3年生の頃か
3人がお互いの服装、顔つき、言動が似ていることを察知
以来自然にひかれあい思春期の今も同じ行動をとっている

ヤッちゃんの心情吐露の後今度はシゲちゃんが話し出す
ヤッちゃんの話に心を打たれ下を向いていた顔を上げる

「ヤッちゃん、イッちゃん、俺は2人に感謝してるんだ」
「2人がいなかったら俺はいじけた貧乏人のままだった」
「だけど、いつも元気な2人にずっと励まされていたんだ」
「ヤッちゃんは一番家が遠くても学校全然休まなかったよな」
「小学校にも中学校にも1時間くれえ走ってきてたもんな」
「イッちゃんは小5くれえから突然頑張り始めたもんな」
「新聞配達も家の手伝いもちゃんとやってたよな」
「俺ん家男の子4人兄弟だったんべ」
「俺の下の弟が口がきけない障害があったの知ってるよな」
「周りの連中に” おし、おし ”ってばかにされてた」
「でもイッちゃんもヤッちゃんもそんなこと絶対言わなかった」
「2人ともそんなこと全然気にしないで仲良く遊んでくれたよな」
「俺はそれだけでも本当にうれしかった」
「弟のうれしそうな顔を見るのがすごくうれしかった」
「父ちゃんも母ちゃんも弟を特別な学校にやるのに大変だったみてえだ」
「だから一年中山仕事、土方仕事、農家の手伝いで駆けずり回ってたよ」
「父ちゃん母ちゃんの苦労は身に浸みてわかってるんだ」
「4つ上のあんちゃんも、神奈川県の工場で働いてるよ」
「俺も中学出たらすぐ働くべえって前から思ってたんだ」
「そうすりゃあ父ちゃん母ちゃんが少しでも楽になるだんべって思ってな」
「やっと俺の番が回ってきたつう感じだよ」
「東京の工場の社長さんもすごくいい人だし、俺がんばるよ」
「ちゃんと勉強もして弟たちの手本にならなきゃって思ってるよ」
「今までヤッちゃん、イッちゃんと一緒にいられてすごく良かった」
「本当に何をやってても楽しかったなあ」
「ヤッちゃんはいつも駆けっこやマラソンじゃあ一番だったもんな」
「イッちゃんは急に勉強し出してすごかったよな」
「高校に一番で入ったなんつうなあすげえ話だよ」
「俺も2人を見習って何かで一番になれるように頑張るよ」
「正月とかお盆にゃあ帰ってくるようにするからまた会うべえな」
「ヤッちゃん、イッちゃん本当にありがとな」
「絶対また会うべえな」

シゲちゃんは万感胸に迫るといった様子で上を向いて目を瞑っている
いつも一緒に中学校に登校していた時はこんなに饒舌ではなかった
シゲちゃんの今までの思いを一気に吐き出した思いがジンジン伝わってくる
シゲちゃん話してくれてありがとう、東京で一生懸命がんばってくれよな


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