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特集 心理学の未来

特集を起案したとき、「研究」という文脈で「心理学の未来」を構想していた。科学か物語か、質か量か、あるいは、それらの混合という方向か。振り返ってみると、そういった「研究」の未来を考えるために、本特集を構想していたように思う。

しかし、結果として集まったのは、そういった「研究」という文脈を超えて、そもそもの心理学の未来を構想しようとする論考であった。「研究」という枠組みにおさまらない、社会の中での「心理学の未来」を論じたものである。ゆえに、当初書く予定だった特集の前書きをそのまま載せることはここではしない。当初から書いてはいたが、本特集に適う、短い趣旨を載せる。それぞれの論考では多様なテーマが論じられており、一見するとバラバラに見えるが、研究実践の目指す先、研究者の目指す先がより自由で、可能性にひらかれるべきだという点においては通底している。

しかし、異なっている部分もある。それについて詳細に解説することはしない。各自で読んで考えるきっかけにしてほしい。そこから受け取るものはそれぞれ違うかもしれない。でも、新しい何かが始まるのであれば、それで良い。心理学の未来は、まだ(常に)始まったばかりである。

特集の趣旨

心理学は科学なのか、文学なのか。量か質か。行動か意味か。基礎か応用か。そういう同次元にある対立を超えた先に、新しい心理学、本当の意味での心理学を打ち立てたい。現在の次元を見つめ直し、これからの心理学を考えるためには、その萌芽となる論考を幅広くそろえ、「(これまでとは違う)新しい心理学とはなにか」を考えるきっかけを作らなければならない。

本特集では、独立して「新しい心理学」を作ってきた人から、「心理学の新しいかたち」をこれから構想する人まで、幅広い人たちに寄稿していただいた。どの論考からも「心理学の未来」に向けて、受け取るものがあるであろう。

本特集が心理学を改めて考えるきっかけになれば幸いである。

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